──アフレコで意識したことがあれば聞かせてください。
潘:日本語でこの作品を見たときに、心地よくあればいいなと意識していました。モカという役柄も、日本でオンエアするにあたって、中国で描かれていたニュアンスとは変更して演じる部分もあったんです。そこは臨機応変にという感じでした。
花江:原音を参考にする部分もありましたが、基本的にはあまり気にせず。ディレクションとしても中国版に無理に合わせなくても「口さえ合っていればいい」ということだったので、面白くなることを意識してアフレコをしました。
例えば実写の吹き替えは、役者さんのお芝居と声が完全に口と顔に合っているので、そのイメージに近づけていくのですが、アニメはいろいろな捉え方がありますから。違ったアプローチをしてもいいのかな、と。
中国版で声を当てた方はアフレコしているとき、たぶん絵ができていない状態だったと思うんです。ですから、参考にはしつつ、すでに出来上がった絵を見て「こうしたい」「こっちのほうが面白いんじゃないか」と思うことは積極的に提案しました。

──アクションが派手なので、声も大きくなったのでは?
潘:そうですね。息ぐらいでいいと思われる部分も、ちょっと大げさに演じているので、かなりにぎやかになっていると思います(笑)。
中国版では、効果音も音楽も入っていない状態でのアフレコだったと思いますし、完成形で収録できるのは強みですよね。「これくらい効果音が鳴るなら、これだけ叫んでも負けない」と、調整ができますから。本当にありがたい環境だったなと思います。
花江夏樹が語る『この恋で鼻血を止めて』の面白さは「ヒーローたちも、ちゃんとお給料をもらって“ヒーロー”をやっている」
──印象に残っているディレクションはありますか?
潘:自分の中では最大の退屈さを出していたつもりだったのですが、テストをやった時点で、「もっと落ち込んでいていいです」と言われて。結構どん底の声を出していたので、不安もあったんです。
でも、かなりローな声でもOKを出していただいたので、「人生、ここまで落ち込んでもいいのか」と、発見だったというか、新鮮でした。

花江:ヤーセンは、ビジュアルもそうですが、ヒーローですし、カッコよくて頼りがいのある感じの印象を受けたので、どっしりと構えたお芝居をしていました。でも、「ちょっと未熟な部分がある」「一生懸命さを出してほしい」と言われて、今の形に変更したんです。
最初は未熟さもありますが、そこから成長していくので、その過程が感じていただけたらいいなと思っています。

──『この恋で鼻血を止めて』の魅力、見てほしいポイントを聞かせてください。
潘:ヒーローがいる世界ですし、敵に立ち向かっていく作品だと思っていたのですが、意外と自分自身と向き合わなきゃいけないストーリー展開が面白いなと思いました。
ぶっ飛んだ物語のなかで、「生きていると、こういうこともあるよな」と共感してもらえる部分もあるんじゃないかと思うので、そういった点を楽しんでもらえたらうれしいです。
花江:設定はちょっと変わっているのですが、誰もが経験したり、悩んだりすることがテーマになっています。完ぺきでないことを未熟だと思うのか、それもまた人としての美しさとか楽しさだと捉えるのか。
その考え方がどんどん変わっていくのが見ていて面白いと思いますし、正面から叩きつけるのではなくてギャグテイストにしているので、キャッチーで抵抗なく見ていただけるんじゃないかなと思います。
ヒーローたちも、ちゃんとお給料をもらって“ヒーロー”をやっている感じも面白いと思うので、最後まで楽しんでもらえたらうれしいです。

撮影:河井彩美
【潘めぐみ】
ヘアメイク:hijiri
スタイリスト:末吉久美子
【花江夏樹】
ヘアメイク:加藤ゆい(フリンジ)
スタイリスト:村田友哉(SMB International.)