子どものいない人が”透明”にされない社会へ。エンディングノートや遺言・医療同意等を学び合いながら仲間と将来不安に向きあう一般社団法人WINKの取り組み
一般社団法人WINK(以下、WINK)代表理事の朝生です。
「WINK」は「Wellbeing Institute for No Kids」の略称です。
近年、社会の多様性が進む中で、子どもを持たない選択をする人々や、さまざまな事情で子どもを持たない人々が増えています。しかしながら、そうした人々に対する社会的認知や理解が十分に進んでいるとは言い難く、時には偏見や孤独を感じることも少なくありません。また、従来の福祉やライフプランにおいても、子どもを持つことが前提となっているケースが多く、「子どもを持たない人生」に対する支援の枠組みが不足しているのが現状です。
こうした背景を踏まえ、WINKは「子どもを持たない選択をした人々、または意図せずして子どもを持たない人生を歩んでいる人々のウェルビーイングを向上させること」を目的として設立されました。
ここでは、WINKのこれまでの歩みや、背景にある思いについて紹介させてください。
■「子どものいない人生」も多様性のひとつ。ダイバーシティに感じた違和感から生まれたWINK
WINKは2021年に設立しましたが、前身である「子どものいない人生を考える会」は、2014年にFacebookページとして立ち上げました。そのきっかけとなったのは、私が参加したあるイベントです。
そのイベントは、「ダイバーシティ」をテーマにしたシンポジウムだったのですが、出てくる話は「子育てをしながら、いかに女性が活躍できるか」というお話一辺倒。最後に編集長の方が「子どもを持つ女性の活躍を応援します」と宣言。「あれ、子どものいない私は、ここにいてはいけないのか?」という疑問を感じたのがきっかけでした。
ダイバーシティとは「多様性」。そこには、子どものいる人もいない人も含まれるはずなのに、このシンポジウムでは、子どもがいない人は、まるで“透明な存在”のようだな、と違和感を覚えました。
そこで、子どものいない人の気持ちや立場を発信していきたいと思い、2014年にFacebook上に「子どものいない人生を考える会」を立ち上げたのです。
不定期なポストによるゆるい運営だったのに、ありがたいことに、予想以上にたくさんの方に読んでいただくことになりました。現在、Facebookページは1800以上のフォロワーに支援いただいております。
<「子どものいない人生を考える会(現(一社)WINK Facebookページ>
■不妊治療と仕事の両立の壁、そして降格…
挫折を乗り越えて~WINK代表・朝生容子の歩んだ道
私は、若い頃の想定とは異なり、子どもに恵まれませんでした。
不妊治療にも取り組みましたが、当時は営業マネジャー。仕事との両立に苦労しました。営業を続けるのが難しいと、異動を上司に相談するも、返ってきたのは「マネジャー降格」と言う答えでした。治療でパフォーマンスが落ちるだろうというのが理由でした。「理不尽だ」と思ったものの、当時はその言葉を飲みこまざるをえませんでした。
そうしてまで取り組んだ不妊治療も実らず、子どものいない人生を歩むことになりました。しばらくは、仕事も不妊治療も挫折したという思いがぬぐえず、メンタル不調になりかけました。その挫折感から、同じような体験をした人を支援することをしたいと、キャリアコンサルタントとして独立をしたのです。
私自身は、幸いにも子どもがいないことについて、直接的にいやな思いをした経験はそれほどありません。しかし、キャリアコンサルタントとして活動する中で、子どもがいないことで抱く挫折感や、他者から理不尽なことをされるなど、つらい思いをしている人が思った以上にいることがわかりました。また、降格時の上長の対応から、不妊治療で割り切れぬ思いをしている人が世の中には少なからずいる現実も見えてきました。
そうした思いを共有し、人生に前向きに向きあえる場を作りたいと思い、子どものいない人同士のオフ会やセミナー開催などを始めたところ、講師として出会ったのが、現在のWINKの理事の山下マリ(行政書士)と辻本由香(ファイナンシャルプランナー)です。
そして、それぞれの専門性を活かしてまとまった活動にしようと、2021年に立ちあげたのが一般社団法人WINKです。(辻本由香は2024年度をもって理事退任。以後はアドバイザーとして関与)
<左:理事の山下、右:代表理事の朝生>
■「子どもがいない老後が不安」…知識だけでは解決しない。
当事者のつながりから未来を考えるWINKの取り組み「WINKo Lab.」
WINKは、これまで多くの人が相談してきてくださった「子どもがいないと老後が不安だ」という気持ちに焦点をあてて、活動を始めました。
活動の前提としているのは、「私たち自身に課題を解決する力がある」「すべてを自己責任にせず社会の課題にも目を向ける」ことです。
当初は、将来不安への対策に必要な知識を身につける場として、「後見制度」や「お金」「健康」などのセミナーを理事メンバーが講師として登壇する形で開催。「エンディングノート」や「遺言書」の重要性も訴えてきました。
活動する中で新たに見えてきたのは、「エンディングノート」や「遺言書」を作り上げること自体が、困難であるという現実です。完成に必要なものは何か?それは「共に取り組む仲間の存在」です。励まし合ったり、情報交換したりする仲間がいたら、もっと完成度も高まるのではないか…。そう考え、「WINKo Lab.」というコミュニティを始めたのが2023年です。
月に1回、オンラインで集まり、WINKオリジナルの子どものいない人向けの「エンディングノート」作成に取り組んでいます。メンバーが共に学び、刺激し合っていく場としたいという思いを込めて「ラボ」と名付けました。
<WINKo Lab.定例会はオンライン開催。世界各地から参加いただいています>
<WINKオリジナルのエンディングノート>
WINKo Lab.はメンバー制ですが、オープンな形で子どものいない人同士がつながる場も設けています。
気楽に語り合う場として、音声メディアClubhouseで、毎週(火)(金)の22:30から30分、気楽におしゃべりする「子どものいない人生を語る部屋」を開催。常連さんから、一見さんまで、さながら「スナック」の様相を呈しています。
法人化前からのテーマを絞った学びの場も継続しています。「医療同意」やマネープランについてのセミナーや、自分の価値観や優先順位を考えるための「マンダラ・エンディングノート・ワークショップ」も定期的に開催。一方的な知識付与ではなく、参加者同士の対話を行うことで、これからの人生を歩むうえでの自分の「軸」が見えてきます。
<2019年「医療同意」についてのセミナー 左:朝生、右:山下>
■「子どものいない人の肩身の狭さ」を社会に発信!
子どもの有無で分断しない社会を目指すWINKの取り組み
一方、私たちは「子どものいない人の幸せ実現」のために、一貫して当事者を取り巻く環境に着目し、問題提起してきました。
2020年に、代表の朝生容子は他団体との協業で、「職場における子どものいない人の肩身の狭さ」についての調査・発表。新聞や「弁護士ドットコム」などのWEBメディアにも取り上げられました。
この調査は、その後、2024年の「子持ち様」騒動の際にも「ABEMA TV」で取り上げられ、朝生はコメンテーターとして出演しました。
●独身・子なしは自己責任?「業務をカバーした分の対価がほしい」“分断”を生まないためには
また同年6月には、日経新聞「私見・卓見」欄に、「子育て社員への支援も評価せよ」を寄稿しました。
●日経新聞「私見・卓見」掲載~「子育て社員への支援も評価せよ」
また、英国発祥の国際的取り組みである「World Childless Week in Japan」を、本家と連携しつつ日本オリジナルイベントとして2021年からオンラインで開催しています。
WINKの日頃のセミナーは、今後の人生のお役に立つ知識を学ぶものが中心ですが、
World Childless Weekは、もう少し大きな視座に立ち、「子どものいない」立場から社会を考える場としています。
4年目となる2024年は、話題となった書籍、「#生涯子供なし なぜ日本は世界一、子供を持たない人が多いのか」を取り上げ、海外との比較や地方に生きる女性など、多様な観点から参加者と対話を行いました。おかげさまで、グロスベースで過去最大の240人の方に参加いただきました。
■子どもがいない人が安心して過ごせる社会の実現へ!
今後は行政や企業との連携を推進
WINKo Lab.は、トライアルで始めた2022年には、当初の定員を超える12名が集まり、次年度は5名の方に参加いただきました。40代~60代の、性別問わず、各地から様々な方があつまりました。中には外国からの参加者もいらっしゃいます。
皆さんが共通して口にされるのは、やはり後半生への不安です。近年、「孤独死」などが報道が増えていることもその不安に拍車をかけています。親の介護経験を通じて、「自分にとって介護してくれる子どもの存在がいない」ことも大きな不安要因です。
実際、高齢者福祉は各自治体ごとに取り組みに濃淡があります。また、都市圏以外の地域では特に、「子どもがいない人」自体が、ある種、異質な存在として肩身の狭さを感じる雰囲気があり、孤独感を募らせる原因ともなっています。
WINKo Lab.の集まりでは、理事たちのレクチャーや、メンバーの体験談を通じて、知見を深めています。たとえば、既に墓じまいを行ったメンバーが、自治体からの補助金を利用した体験談が話されたことをきっかけに、自治体の墓じまいへの支援制度について調べることになりました。メンバー同士の集合知が生まれてきているのです。
さらに、オフ会や旅行も実施。各自が作った「バケットリスト(今後の人生に実現したいことリスト)」の中に「宿坊に泊まる」とあったことから、それに賛同したメンバーが協力し合って企画されました。
今後は、このネットワークを全国に広げていきたいと考えています。
ウェルビーイング実現には、当事者個人の努力だけでは限界があります。地域ごとのつながりや、行政サービスや企業との連携が欠かせないからです。
また、活動をしている中で、見えてきたことがあります。
今は子どもがいても、親子関係が希薄だったり、子どもが海外など遠方に住んでいてすぐに駆けつけてきてもらえる状況でなかったり‥と、子どもに頼ることを前提にしない方も多くなってきています。
高齢者福祉という点では、子どものいない人たちが先に心配を始めているというだけで、実は誰もが抱えている現代社会の問題が内包されているといえるのではないでしょうか。
わたしたちは、子どもの有無にかかわらず、WINKの活動が「誰もが安心して幸せな老後を過ごせる社会づくり」につながることと信じています。
<WINKo Lab.メンバー オフ会の様子>
■一般社団法人WINK(旧:子どものいない人生を考える会)
ホームページ:https://wink.jp.net/wp/
Facebookページ:https://www.facebook.com/blwoc
学びコミュニティ「WINKo Lab.」:https://wink.jp.net/wp/winko-lab/
(毎年、4月に募集)
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ

派遣スタッフ・クライアント・社員の三者に価値を届けるDXを―パーソルテンプスタッフが掲げる戦略とその現在地
2025年02月21日 |
11:00

【創業200周年】江戸~令和へ日本の化粧品市場を第一線で走り続けてきた伊勢半…どんな時代も人々の「美しくありたい」に応えようとひたむきに歩んだ軌跡
2025年02月21日 |
10:12

【一度離れたからこそわかるカーブスコーチの魅力】出戻り転職を経てカーブスは“誰かの幸せをつくっている”と再認識。人のために働くことで自分の人生も豊かに
2025年02月20日 |
11:00

~愛犬との絆を深めて飼育放棄ゼロを目指す~「オリジナル家紋柄」と「職人の手仕事」にこだわり、愛犬との暮らしを楽しく快適にする「Johnny and Luke」のブランド誕生ストーリー
2025年02月18日 |
15:00

パーソルテンプスタッフの営業プロセスにテクノロジー活用を
2025年02月14日 |
11:00

異例の女性代表誕生「美しすぎる革命家」の壮絶な過去と挑戦ーー世界に出る理由、初公開の裏側に迫る
2025年02月12日 |
10:00