山岳遭難の発生件数が、長野県に次いで、全国で2番目に多い東京都。
低い山が多く、初心者でも楽しめる奥多摩には、早朝から多くの登山客が訪れます。
木々が葉を落とす紅葉の時期は、眺望がいいことでも知られていますが、この時期ならではの危険もあるといいます。
遭難した女性(60代):
登頂してから下山の時に、たぶんもうそこで迷ってたんだと思います。
『めざまし8』の取材に、山の危険性を知ってもらいたいと、遭難の詳細を語ってくれたのは、11月16日、奥多摩の山中で救助された60代の女性です。たった一人で5日間遭難し、九死に一生を得ました。
絶望と希望のはざまで生き延びた5日間。
実は、その女性を探し続けた山岳救助隊の捜索活動に、『めざまし8』のカメラが密着していました。
過酷を極めた救助とは…。緊迫の現場を取材しました。
警視庁山岳救助隊に密着
青梅警察署山岳救助隊 奥西俊郎隊員:
東京の山というだけで、イコール低山という意識がありますので、簡単に(山に)入れるというイメージを持ってる方はいらっしゃると思います。
こう警鐘を鳴らすのは、山岳救助隊になって10年の奥西俊郎隊員(49)。
以前は、地震などの被災地へと赴く「災害派遣隊」の一員として活動していました。
そんなベテラン隊員たちでも経験したことのないような遭難が、取材中に起きました。
11月12日。
埼玉県から訪れた女性は登山歴1年。標高1224mの本仁田山を登頂しました。
しかし、下山のとき、落ち葉で登山道を見失い、遭難してしまいます。
遭難した女性(60代):
お尻で滑り降りようと思ったらバランス崩して、2~3mのところから滑落して、あっという間に地面にたたきつけられて…。
女性は膝や手首を強打。後に、肋骨を骨折していたことも分かりました。
さらに、道中スマートフォンを落とし、連絡手段も失うことに。
途方に暮れる中、あたりは暗くなり…。
遭難した女性:
もう帰れないって…。夜になって活動は絶対しないと思ってましたので、危険なので。覚悟決めて岩場のところで、そこで一日…。
この日、付近の最低気温は8.3℃…。寒さで眠れぬ夜を過ごしたといいます。
遭難2日目「もしかしたら山で死ぬのかなって…」
家族の通報により、捜索に入った山岳救助隊。
隊員「とりあえず屏風岩側の捜索お願いします」
隊員「万が一バリエーション(上級者の登山道)に入り込んだら、もう多分道は見失いやすいですよね」
隊員「この岩場は登り返せないかな」
様々な可能性を考え、女性のいる場所を推測しながら捜索します。
隊員「断崖ですね、本当に。暗くなって道に迷えば、ここから落ちちゃいますよね。間違えば。1回呼んでみますか?〇〇さーーーん! 」
遭難した女性:
斜面にいたときに、下のほうから呼ぶ声がしたので、すごい声を出したんですけど、届かなくって…。
救助隊の呼びかけが聞こえ、声を出したものの…届かず。
その後女性は、必死に登山ルートを探しましたが…あたりが暗くなったところでたどり着いたのは、沢でした。
なんとか水を飲むことができ、暖をとるため、周囲に散らばる落ち葉をかき集め、眠りについたといいます。
遭難した女性:
私、もしかしたら山で死ぬのかなと思いました。
遭難3日目 危険と隣り合わせの捜索
心配する家族が埼玉県から訪れていました。
遭難した女性の家族「母のことをよろしくお願いします」
奥西隊員「できることは全力でやりますので。その辺はご安心ください」
家族の願いも背負い、捜索に向かう山岳救助隊。この日からは、より険しい現場の捜索も始めました。
隊員「下りられるんですけど、どこも角度がよくない」
隊員「落!落!落!」
人を寄せ付けないほどの傾斜がある場所。突然、隊員の側に落石が…。危険と隣あわせの捜索です。
この日からは、警視庁航空隊によるヘリコプターでの捜索も始まりました。
遭難した女性:
昼にヘリを見たんですね。すごく遠かったんですけど、着てたジャンパーを振って、救助が来ていただけるなって自分勝手に安心してましたね。
女性は見晴らしがよく、助かる確率が上がるとされる山頂へと向かいます。
しかし、この日も発見されることはありませんでした。
遭難4日目「本当に限界だった」
雲に覆われた天気となった4日目。
隊員「72時間という生存率のタイムリミットでいくと、きょう何とか見つけだせればいいかなと思います」
隊員「〇〇さ~ん!!」
滑落した可能性も考慮し、滑りやすく危険な沢沿いも捜索していきます。
しかし…。
奥西俊郎隊員:
危険な箇所。ここは断崖絶壁なので、尾根を間違えて来たら落ちる可能性があるんじゃないかと思って、ロープ2本分下りてはみたんですけど、手掛かりはなく、発見には至らずという形ですね。
一方、追い詰められた女性は水が欲しくなり、2日目にいた沢を目指しましたが、たどり着けなかったといいます。
遭難した女性:
暗くなってきたので、(山頂に)登り返すんですけど、それがきつくて。
足で踏ん張っても足が流されて、木の枝の短いのを杭の代わりにして、杭を打ち込んで上がるっていう感じで。本当に限界だった。
ここまでに女性が口にしたのは、一口ようかんなど、わずかな食料のみ。
遭難5日目「本当に生きてて良かった」
限界が近い中、泥だらけになりながら、必死に山頂の登山道付近へと戻った女性。
この時、5日目の朝を迎えていました。
すると…。
遭難した女性:
横になってまして、なんかコツコツって音が聞こえたんですね。
女性がいらっしゃった。その女性が警察に電話して。
連絡を受けた東京消防庁のヘリが現場へ。山中から発煙筒の煙が上がっていました。
そこに山岳救助隊も到着。女性と共に救助を待っていました。
消防隊員「バイタル異常なしですね。外傷が右のわき腹と右の臀部なんですけど」
土色に染まったズボンが5日間の壮絶さを物語っています。
隊員「ハーネスを付けますので、ちょっと起こしてもらっていいですか?ヘリ入ってきますよ!」
遭難から5日…ついに救助された女性。
遭難した女性:
本当に助かったんだなって。本当に生きてて良かったなって思いました。本当に感謝しかないですね。
当たり前の日常が幸せですね。
自分だけは遭難しないなんて、甘くみてた。侮ってましたね。
奥西俊郎隊員:
もうやっぱり元気な姿で家族のもとに帰られたってことは純粋によかったなと思います。こうやって遭難起きた時に一人の力じゃどうしようもない。救助隊の仲間もそうだし、奥多摩消防の力が一つになって協力し合ってできることで、一つの命を助けることができるので、今後もこういった事案はあると思うんですけど、同じような気持ちでこれからも対処していきたいと思います。
後日、山岳救助隊の元へ、あの救助された女性がお礼にきました。
救助された女性「本当にお世話になりました」
奥西隊員「本当よかったですね。本当によかった、もうそれだけです」
救助された女性「本当に救助していただいて、自分の口からお礼を言えることを本当に感謝しています。ありがとうございました」
(『めざまし8』2024年12月26日放送より)
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