斎藤工「今後作ってみたい気持ちは大いにあります」ドキュメンタリー監督に意欲
ーームヒカ大統領と斎藤さんの共通点は?
もう本当に爪の垢を飲みたいぐらいなんですけど、働くことに関して「働くことと生活することは別だ」というふうに時間の分け方をされていたんですよね。
そのお金で物を買うことも「働いた時間で買ってるのと同じだ」っておっしゃっていて、働くことを優先し過ぎて“気がつくと人生が終盤”ということをいかに避けるかっていうことはムヒカさんがずっと唱えていることだなと思いました。
それにハッとしたのもありますし、私事だとライフワークである「シネマバード」というのは本当に”ライスワーク”じゃなくて”ライフワーク”なんですね。そのライフワークをするためにはライスワークが必要だなと思っているんですけど、でも食べるための仕事、自分の人生を懸けてすべきこと、っていうその2つが繋がってくることを目指している、というところは、ムヒカさんの言葉を聞いて、なおのこと「ああ、これで間違っていないのかな」という風には思っております。
それぐらい、もちろんタイムカードがある仕事ではないんですけれど、“ここからが仕事、ここからがオフ”というよりは、すべてに興味と力を注げるような生き方をしていきたいなと、ムヒカさんの言葉を受けて、なお強く思いました。
ーー誰にでも真似できることでしょうか?
そうですね。ムヒカさんが言っていることはごく当たり前のことなんですけど、誰しもができないことでも同時にあるのかなとは思います。
二者択一の時に「恨む」とかっていうネガティブなものって選びやすいと思うんですよ。「怒り」とか、反射的に生まれる人間の感情って、どちらかというとネガティブな、様々ある中でネガティブなものが目立つと思うんですけど、ムヒカ元大統領は全てそういった選択肢があるときに“愛がある選択”をしてきた。
それが“自分のためというよりは誰かのため”というような愛を選んできた人だと思うんです。
だから、すごく小さなことでも何か自分の日常の中で予想しなかったことって毎日起きると思うんですけど、その時にどの感情を優先するかっていう時に「憎しみ」っていう分かりやすく手に取りやすい感情じゃなくて、それを1回我慢してその奥にある“真心”を選ぶっていうことは、僕自身この作品に出合って、していかなきゃいけないと思いましたし、多くの方がその大小はあると思うんですけど、「何を選ぶか」っていうことを意識するべきだなと個人的に思いました。
ーーこの映画を監督・斎藤工目線で観た感想は?
やはり最初の田部井監督の取材から、だんだん田部井さんの一人称のドキュメンタリー、ムヒカ元大統領が被写体ではあるんですけど、そのムヒカさんに出会った田部井さんという1人の日本人がどう変化していくかっていう、多分、一生に一度の作品なんじゃないかなと思いました。
なので、客観と主観のバランス、多分ですけどお会いしたときに、言語や年齢、性別、全ての垣根を越えた“種”を、最初に監督がムヒカ元大統領にお会いした時に、大きな何か見えない種を貰われたのかなと。
その種が育っていく様をこの作品に込めてくださっているので、観ている人間の中にも、もしかしたらその種を貰えたんじゃないかなという風に思いました。
それはもう監督として素晴らしいクリエイティビティだなと思います。
そこを目指してもしかしたら映画監督は映画を作っているんじゃないかなという、すごく難しいことでもあるんですけど、監督のすごく純然たる思いのまま作品に込めているから、それこそがムヒカ元大統領が田部井さんに伝えたかったことなんじゃないかなと思います。
ーー斎藤監督としてドキュメンタリー分野に進出というか、そういうことは考えられたりするんですか?
今年の冬公開の児童養護施設のドキュメンタリーがあったり、それは企画・プロデュースなんですけど、やはり我々は普段フィクションの世界にいたりするので、圧倒的に敵わないのが“実際にあるドラマ”なんですよね。
実際起きていることには敵わないですよね。
ただ、そこにカメラが入ることで日常を切り取りたいのに非日常になってしまう、という部分がドキュメンタリーの1つの特性だと思うんです。
それが良いか悪いかじゃないですけど、だから“もう1つのフィクション”っていうジャンルがドキュメンタリーだと思うですね。
色んな映画があると思いますし、予算合戦とか国によってのカラーの違いだったり、ジャンルの強みの違いもあると思うんですけど、やっぱドキュメンタリーは世界共通だと思います。
ただ、現代のエンタメの受け方として、ランキングの上位の作品を見る、失敗したくないからそういう優先順位で、エンタメに対する時間配分というのは僕自身もどこかあるんですよね。
だからドキュメンタリーも、見られないドキュメンタリーっていうものもたくさん存在している。これからもそう、悲しいかな。
そういう現実はあると思うんですが、ただ、この作品に宿った、その瞬間にしかない奇跡を、偶発性も含めた「あ、この瞬間が撮れてしまった」っていう、それはまた「エンタメ」っていうジャンルを超えた「宿る瞬間」みたいなものがドキュメンタリーは生まれやすいのかなと思うので、出口をあまりこう強く定め過ぎずにドキュメンタリーというジャンルは身近にあると思いますし、身近であればあるほど強いテーマになると思いますので、日頃からそこは意識していますし、今後作ってみたい気持ちは大いにあります。
夜景をバックに映画『ムヒカ 世界でいちばん貧しい⼤統領から⽇本⼈へ』を無料上映
『ムヒカ 世界でいちばん貧しい⼤統領から⽇本⼈へ』特別上映会 PARK CINEMA FESTIVAL in お台場海浜公園
開催日:2024年8月15日(木)
来場者:500人
開催地:お台場海浜公園
料金:無料/自由席
出演者
スペシャルゲスト 斎藤工
企画・プロデュース 濱潤
監督 田部井⼀真
司会 西山喜久恵(フジテレビアナウンサー)
実施内容:映画上映、トークショー 他
主催:フジテレビジョン
共催:東京都港湾局、⼀般社団法⼈東京臨海副都心まちづくり協議会、東京臨海副都心グループ
後援:FNSフジネットワーク各社
協賛:カイタックファミリー、MS&AD
上映映画『ムヒカ 世界でいちばん貧しい⼤統領から⽇本⼈へ』
配給:KADOKAWA
劇場公開日:2020年10月2日
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