歌舞伎役者の松本幸四郎さん、俳優の山田純大さん、北村有起哉さんが『ボクらの時代』で鼎談。
2024年5月10日公開の映画『鬼平犯科帳 血闘』で共演し、父も偉大な俳優という共通点がある3人が、父と同じ仕事についたきっかけや苦労話を語りました。
松本幸四郎「“もうある名前”をつけられるプレッシャー」
2018年に父である白鸚さんから『松本幸四郎』を十代目として襲名した幸四郎さん。
山田さんから「幸四郎くんはずっと(名前が)つながっているわけでしょ?」と、歌舞伎界の世襲について聞かれると、幸四郎さんは「名前を継ぐということは、もうある名前、知られている名前をつけられる。
(父から)『来月からお前の名前は俺の名前で、俺は親父の名前だからね』って言われるから、何の話だってなりますよね(笑)
市川染五郎を襲名した後は『お父さんのイメージがあるから呼びにくいよね』って悪気があるわけじゃないけど、言われた。
14、15歳の頃だと『だって俺、勝手になったわけでもないし…』と、自分の名前さえ言えなくなるような気分になるときもあった。
こっちの受け取り方ですけど、もう『(父と)比べてください』みたいなことじゃないですか。半端なことはできないという意識が生まれるんだなと思います」と、歌舞伎界の襲名について悩んだ過去を明かしました。
そんな幸四郎さんに北村さんは「今の(息子の)染五郎くんもそういった問題と闘っているわけでしょうね」と聞かれると、幸四郎さんは「舞台上だと“師匠”と“弟子”で、家だと“お父さん”と“子供”って言うけど、僕は無理だと思っているので。切り替えられない。親は親だし、子供は子供。経験を話すという感じでそれを本人がどう受け取るかという感じです」と、息子・市川染五郎さんとの関係について明かしました。
山田純大「漢字が分からない…」海外育ちの苦労
一方、『遠山の金さん』で知られる杉良太郎さんを父に持つ、山田さん。
小学校卒業後、大学卒業までアメリカで過ごしたといい、そこで見たあるドラマがきっかけで役者を目指したといいます。
「『大地の子』というドラマがあってアメリカで見たんですけど、もう没頭しちゃって。『こんなすごいドラマが日本にあるんだ』と思って、そこから始まった」と、役者を志したきっかけを明かしました。
しかし帰国後、苦労したことがあったといい、「日本に帰ってきて、漢字や日本語の独特の言い回しが分からなかった。小学校の漢字で終わっているから。それが最初きつかったですね。特に時代劇の台本はものすごく難しかった。
(分からないでいると)『じゃあ英語で何か言え』と言われて…いや、そういう問題でもないでしょって(笑)分からなさすぎて爆発したこともありました」と、海外育ち故の苦労を明かしました。
北村有起哉、文化祭で芝居「俺、向いているかも」初映画では雑用も…
そして、文学座の名優、北村和夫さんを父に持つ北村有起哉さんは、自らの意思で役者になったことを明かしました。
「(父からは役者になれと)全く言われなかった。文化祭で演劇をやったんですけど、共学の高校で文化祭となると、ほとんどのクラスが演劇を出し物にする。男子だけで『ジャッキー・チェンやろうぜ』ってジャッキー・チェンの師匠を演じたときに、クラスの女の子4人に言い寄られた。
もう大事件で『有起哉がモテてる!』ってなって(笑)
そのときに『これ(役者が)向いているかもしれないぞ、俺』と思った。
別にモテたくてやった訳でもないし、人気商売なのも理解はしていたけど、やってみようかなと思ったところから専門学校や俳優養成所に行った」と、高校の文化祭がきっかけで役者を志したことを明かしました。
その後、巨匠・今村昌平監督の映画でデビューした北村さんでしたが、初めての現場では演技ではないことを経験したと言います。
「監督が『お前どうせバイトしかしていないだろ?先輩の芝居を見学しなさい』と言われて現場に入ったら、ただの人手不足だったみたいで何から何まで手伝わされた(笑)
先輩の芝居見るどころか、100メートルくらい離れたところで赤色灯持って『すみません、今、本番中なんで』と言ったり、録音部に虫かごと網を持たされて『あっちのセミがうるさいから、セミ捕まえてこい』って言われて。
森でセミが大合唱しているから網なんていらないの!つかみたい放題でセミを捕まえていたらトランシーバーで『ちゃんとやっているか!?本番いくぞ』って言われて(笑)これって、俺、はめられたかな…みたいな(笑)」と、当時を振り返りました。
しかし、その後、今村監督が亡くなった後、思いがけない事実がわかったといい、「今村監督の偲ぶ会で当時のスタッフと飲んでいたときに『実はあのときな、監督にまず言われたんだよ。今度、北村和夫の息子が来るからこき使って、鍛えてやってくれって』カメラや照明など各部署のチーフにそういう指令が下っていたみたいで。
今でも胸が熱くなるんだけど、そういう体験をしなかったら控え室であくびしながら『まだなの?俺の出番』みたいな横柄な態度をとっていたかもしれない…。こんなにいろんな人たちが、いろんなパートで汗水たらしてやっているんだというのをひどすぎるくらい体験した(笑)」と、映画作りの大変さを身をもって体験したことが、今にも活きていることを明かしました。
(『ボクらの時代』 2024年4月21日放送より)
公式HP:
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