前田愛が12年前の自分にかけたい言葉とは?

――勘三郎さん十三回忌追善の一年を通して、勘太郎さんと長三郎さんは、どんな変化を見せましたか?

大変に成長しました。身長も含め、もうあっという間に抜かされてしまって。勘太郎に私が抜かされたのは、去年の夏なんですけれど、どんどん大きくなってくから、何か注意していても、こうやって(上を見上げて)。

「あのね!」って注意するときも、なんともこう、しっくりこないなと思いながら、こちらも話し方を変えていかなきゃいけないのかなとか。何かそういうことも母親として感じます。

今までは、聞かせるという感じでしたけど、これからは、きちんと話し合う。お互いにコミュニケーションをとり合うみたいな。

その点は、すごく成長を感じますし、勘太郎は、いろいろ教えてくれるようになって。それも面白いなと。学校で勉強したこともそうですし、芝居のこともそうですし、自分が得た知識を「これは、こうなんだよ」と話してくれるんです。

勘太郎は、歴史が好きなこともあって、主人やおじじ(七之助さん)が話してくれることを楽しく聞いています。そういうことをよく覚えていて、すごく楽しそうでいいなと。

長三郎は、もう元気です(笑)。元気が一番。本当に元気でいてくれるし、元気をみんなに分けてくれるから、一緒にいるとすごく楽しいです。1日に一回は、必ず大笑いさせてくれるかな。

前田愛

最近では、芝居から帰ってきて、部屋で爆音で音楽を流しながらずっと歌っているんです。それも、おんなじループ。狐の歌(『The Fox』…きつねダンスの曲)が流行ったじゃないですか。今またもう1回?っていう。すごいノリノリで、頭をガンガン振りながら歌ってる…変わってるなって(笑)。

それで私が、こっそり動画を回したんです。みんなに見せたいと思って。そしたら、途中で気がついて、その気がついたときの顔も面白くて。「恥ずかしい」って言うけど、やめないんですよね。普通やめません?それも面白いから、ずっと回し続けました。本当に元気をくれます。

――十三回忌追善の一年、勘九郎さんの様子はいかがでしたか?

大変そうでした。大変だろうなと思いました。自分のことだけでも、本当に大変なお役をさせていただいていたのに、子どもたちのことも見て、周りを見て。だけど、そんな素振りはなく、日々過ごしていましたので、「私は一番の応援団でいよう」という気持ちで見ていました。

自分で考えて進んでいってるのがいいな、かっこいいなと思っていましたので、子どもたちのことで、必要以上に彼が困らないようにというのは、日々の生活、芝居のうえでも意識していました。

――愛さん自身に、この12年で変化はありましたか?

一生懸命やるということしか考えていなかったかな。目の前で、私がやらなきゃいけないことをやるだけという。ただ、それだけを考えていたら、12年経っていたという感じです。

12年前、哲之(長三郎さん)を妊娠していたときは、本当に大変な時期でもあって。歌舞伎座のこけら落とし、七緒八(勘太郎さん)がお祭りで出させていただく…。帰ってくると、疲れて寝ちゃっていたのを覚えています。

年数だけ考えると、びっくりしてしまうんですけど。いつでも真剣に、前向きに、いろいろありますけど笑っていこう…そんなふうに思います。

(12年前の自分に声をかけるとしたら?)12年前って、長三郎がお腹にいたので。「つらい時期だと思うけど、生まれてくる男の子は、面白いよ(笑)。それから、今育てている男の子も、もうずっと天使だよ。やさしいよ」って、言うかな。

義父・勘三郎さんは「いつまでも一緒にいたくなってしまう人」

――改めて、愛さんにとって勘三郎さんはどんな存在でしたか?

やさしい言葉しかかけてもらいませんでしたし、本当にやさしくしていただきました。

いつも「愛ちゃん、愛ちゃん」と言って、かわいがってくださいましたし、病気になられる前も、小さい七緒八を預けさせてもらったり。母と3人でお出かけしてくださって、たくさん助けていただきました。

新しい着物を着たら、「それは今まで見たことない色だね、似合うね」と言ってくれたり…本当に、いつまでも一緒にいたくなってしまう人。お話もすごく楽しくて、ずっと聞いてたくなっちゃうんです。

前田愛

いつだったか、どういう流れでその話になったのか覚えていないんですけど、お父さまが「間がいいから、この子(勘太郎さん)踊れるよ」って言われたことがあって。

まだ勘太郎がすごく小さいときで、立って何かをしていただけだったと思います。「そうなんですか。うれしいです」なんて話をしたんですけど。

本人にも言ってないし、これまで私だけのものにしてきた言葉ですが、今思えば「頑張れ」と言っていただいているような、支えになっているようなところがあります。

常に緊張感を持って接しなければと思っていた私を、いつも笑顔で迎え入れ、ほぐしてくださる、やさしい、やさしい義父でした(と、涙ぐむ)。

聞き手:後藤博(番組プロデューサー)

公式HP:https://www.fujitv.co.jp/nakamuraya/index.html

TVerおよびFODで、2025年1月4日(土)まで見逃し配信