一筋縄ではいかない組織改革 すれ違う役割と思い
それから約9ヵ月後の『歳末特別警戒スペシャル』(1997年12月放送)ーー。「青島を半年後に湾岸署に戻す」と、刑事局長と約束を取り付けていた室井ですが、ある日偶然に、杉並北署管内で警備にあたる青島を目撃し、各所に連絡。異動の辞令は出ていたものの、青島に伝達がうまくいっていなかったことが判明し、晴れて青島は湾岸署に帰ってきます。
ただ、湾岸署の各課長は、正義を全(まっと)うするあまりに命令を聞かない青島の性格を恐れて、配属先を押し付け合い。
一方の室井は、警察庁警備局警備第一課長という事件捜査を離れた立場で奮闘。半年前のことを振り返りながら「捜査しでな~(捜査したいな)」とベンチに足を広げて座り、くだけた口調で話す室井。弱音を漏らすなど、無防備な姿をさらけ出す様子は、青島にだからこそ見せる貴重な一面です。
青島は、たらい回しの末、無事に刑事課に戻ることができましたが、10ヵ月後『秋の犯罪撲滅スペシャル』(1998年10月放送)で再会した室井は、監察官という、警察内部の不正・不祥事を調べるポストに就いていました。
そんな折、護送中に被疑者が逃亡し、すみれがそれを手助けしたのではという疑いがかけられ、室井は青島にすみれを24時間監視するよう指示。
青島は「組織の壁を越え、捜査員全員が正しいと信じたことをできる警察に変える」という約束をかなえるためだと信じ、監視することですみれの疑いを晴らそうと受け入れますが、逃走した被疑者がすみれに接触を試みていることを知り、そのことを室井に隠します。しかし、湾岸署の署長室に盗聴器がしかけられており、室井は事実を把握。
“盗聴をされた=信じてもらえなかった”、“報告を怠った=裏切られた”
青島と室井の思いはすれ違い、信頼がゆらいだまま事件は収束を迎えました。
約束から6年 少しずつ伝播する青島と室井の思い
『踊る大捜査線 THE MOVIE 湾岸署史上最悪の3日間!』(1998年)で室井は参事官となり、出世の階段を上っていきます。しかし、上層部に近づくほどに、捜査の指揮権は現場ではなく会議室にいる「もっと上の官僚」が握っていることを痛感し、信念を曲げずに約束を実現することの果てしなさに気づき苦悩します。
室井の本音を聞いた青島は「待ってますよ俺。頑張りましょうよ、俺たちの思い実現するまで」と鼓舞し、互いの思いが変わっていないことを再確認します。
ある日、青島は、事件の容疑者を突き止め、現場にいち早く到着した切迫した状況のなか、本部にいる室井へ「室井さん、命令してくれ。俺はあんたの命令を聞く」「事件は会議室で起きてるんじゃない、現場で起きてるんだ!」と指示を求めます。室井は、本庁の捜査員が来るまで待機するよう求める官僚たちの指示を振り切り、青島に確保を命じ、自ら現場へ向かいました。
約束の実現に向かって歩み出したように見えた2人でしたが、『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(2003年)では再び高い壁に阻まれます。捜査本部長として指揮をとることになった沖田仁美(真矢ミキ)は、所轄に雑用を押しつけて捜査に参加させないという、青島と室井の理想とはほど遠いやり方を貫きます。
これに反発した湾岸署の面々はコントロール不能となり、さらに被疑者確保の際にすみれが銃弾に倒れても、沖田は「使えなくなったら補充して」と、所轄を完全に捨て駒のように扱います。この状況を見かねた上層部により、本部長交代の判断が下されます。
沖田に代わり捜査の指揮をとることになった室井は、開口一番「捜査を立て直す」と宣言。「捜査員にかかわらず(情報を教えてほしい)。役職や階級も忘れてくれ」と話す室井に、最初は遠慮がちだった湾岸署員も意見を交わして、被疑者確保へ動き出しました。
青島と室井が目指してきた捜査の在り方が多くの人に伝わった瞬間に、胸が熱くなった人も多いのでは。
