変わらない組織体制が生んだ悲劇 約束のゆくえ
『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』(2010年)で、室井は警察庁長官官房審議官という警察組織の要職に就きます。それでもなお、青島との約束の前に立ちはだかる組織の壁は、まだまだ高くそびえます。
新湾岸署への引っ越し作業真っただ中の混乱に乗じて、拳銃3丁が盗まれる事件が発生。犯人は、過去に青島が捜査に関わった服役中の受刑者9人を解放するように求めます。警察上層部は、この事態を政治的に利用しようと考え、解放に応じるフリをして受刑者たちを射殺しようとする、前代未聞の計画を進めようとします。
室井は、上層部が推し進める非道な計画をなんとしてでも止めようと、ついに捜査方針を決める警察庁幹部たちの会議室へと足を踏み入れます。そして室井は、受刑者の1人で、事件を影で操る日向真奈美(小泉今日子)の護送と説得という任務を青島に託しました。
立場が変わり、以前のように直接やりとりすることが容易ではなくなった2人。それでも、互いがそれぞれの場所で奮闘していることを信じて信念を貫く姿からは、2人の強く結ばれた絆が感じられます。
そして、シリーズの集大成として2年後に公開された『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』(2012年)。本庁と所轄の枠を取っ払ったクリアな警察を目指してきた2人が、再び“現場”で手を取り合います。
湾岸署管内で起きた殺人事件で使われた拳銃が、以前警察が押収したものだと判明。警察内部の人間の犯行だと世間に知られることを恐れた上層部は、その事実を所轄に隠蔽します。さらに、事実が隠しきれないとわかると、今度は青島にぬれぎぬを着せて辞職を勧告。青島は、警察手帳を取り上げられるという窮地に追い込まれてしまいます。
何が起きているのか分からずぼう然とする青島。しかし、署長となった真下と雪乃の息子が誘拐されたこと、そして、室井までもが辞職を迫られていることを知ります。青島は、捜査本部長として湾岸署にやって来た室井に「室井さん、俺はあんたを信じる。あんたも俺を信じてくれ」と言い残し、再び事件解決のため捜査へと駆け出します。
そんな青島の姿に覚悟を決めた室井は、全捜査員に被疑者が捜査一課の人間であることを告げ、本庁と湾岸署員が垣根を越えて協力する捜査態勢をすぐさま作り上げました。
青島と室井は電話をつないで常に情報を共有。さまざまな捜査員から集められる情報の助けもあり、被疑者の潜伏先を突き止め、無事に身柄を確保しました。
一連の事件は、過去の少女誘拐殺人事件の遺族や捜査関係者が、保身や不適切な指示で捜査を阻んだ警察組織に一石を投じるために起こしたものでした。
青島と室井が約束を交わしてから15年。それぞれの立場で、約束の実現へ向けて邁進してきたものの、警察という巨大組織全体に2人の思いを浸透させるには、まだまだ時間を要することを痛感させられます。
それでも、理想を共有する仲間を徐々に増やしながら、それぞれの道を地道に、時に共に歩み、前へ進んでいくと感じるラストでした。
しかし…
FINALから12年後、室井慎次の現在を描いた2部作『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』(2024年)で、室井が警察を辞めていることが判明。事件の加害者家族・被害者家族である日向杏(福本莉子)、森貴仁(タカ/齋藤潤)、柳町凛久(リク/前山くうが・前山こうが)と地元・秋田で暮らしていました。
ある日、リクの父親が引き取りを求めて室井たちが暮らす家を訪れ、リクは父親のもとへ戻されますが、暴力を受け、室井の家へと逃げ帰ってきます。しかし、追いかけてきた父親が凶行に及び、騒動の最中に室井の愛犬が逃走。父親の確保後、愛犬を捜索するため、持病を抱えながら猛吹雪の雪山へと入った室井はそのまま命を落とすという衝撃の結末を迎えました。
室井がいない警察組織で、青島が今思うことは?2人が約束を交わしてから29年、その信念のゆくえに注目です。
