前回とは違う希望や未来があるからこそ「なんてやるせないんだろう」
――大介さんは高校を卒業し、社会人となりましたが、変化は感じましたか?
環境は変わっても「変わらないな」と感じました。自我が芽生えて…とありましたが、もちろん、さらに成長していく過程ではあると思うんですけど、高校生でも社会人でも、家族が大好きで大きな夢があって、大介くんは大介くんでした。すごくいい意味で「なんて変わらないんだろう」と思いました。
食べる姿も変わらないですよね。ご飯をボウルに入れてスプーンで豪快に食べる…そのひと口が大きい!そういう正直なところも含めて、本当に変わらない方だという印象でした。
――大介さん家族には、前向きな変化もありました。
そうですね。でも、前を向いているからこその“やるせなさ”も感じました。特にコロナ禍というのが大きくて、コロナさえなければ、インフルエンザの時期以外は、月に一度の面会ができるのに…という。
大介くんが「何がコロナじゃ」と言っていましたが、父ちゃんの記憶が失われていくなかで、焦りもあるでしょうし、そのやるせなさは前回以上に感じ、「しょうがない」とは言い切れないほどでした。
大介くんは社会人として5年間の修行を始めたところですが、修行を進めるためにも時間が早く過ぎてほしいという思いと、父ちゃんの進行を考えるとゆっくり進んでほしいっていう思いと両方あって。
前回とは違った希望や未来があるからこそ、「ああ、なんてやるせないんだろう」という気持ちになりました。
――今回、特に印象的だった場面といえば?
卒業式も、初めての就職の日も全部ですね。(家を出るときに、そこにはいない父に対して)「父ちゃん、行ってくるね」って言うところは、何度見てもグッときました。
離れて暮らしていても、一つ屋根の下にいられなくても、本当に“家族”っていう思いが強いんだというのを、その一言、一つの行動ですごく感じました。
大介くんはもちろん、お母さんが同じように「お父さん行ってくるよ」と言うのもそうですよね。きっと息子の卒業式をお父さんと一緒に見たかっただろうな、とも思いました。
――前回、今回とナレーションを担当し、ご自身にとってどんな作品ですか?
本当に“語り”で寄り添っていけるならば、寄り添っていきたいって思います。大介くんの家族に限らずこういったことを抱えているご家族は、本当にたくさんあると思いますので、そういった方々への思いも込めて、寄り添っていけるならありがたいです。
それと、今日読んでいて自分でビックリしたのは、止まらずに読めたこと。「私、止まらずに読めるんだ」と驚きました。「いける」じゃないですけど、「大丈夫」という感じがしたんです。なんだか「止まっちゃダメ」じゃないですけど、そんな気持ちがして。
このまま大介くんの家族と同じ流れで私も言葉を発しなければ、と思い。たまにイントネーションを間違えて止まることはありましたが、こんなに言葉を噛むこともなく同じ流れで語れたのは初めてでした。
去年に続いて語りをやらせていただき、その後の時の流れをリアルに感じられたからこそ、そういう時間になったんじゃないかなって。
大介くんの家族が途切れていないのと同じように、私も途切れたくない。読み始める前もそういう気持ちでしたが、読み始めたらさらにそんなことを感じました。