──第3話は、南方がフィーチャーされる回でした。台本を読んだ際の感想を聞かせてください。
南方は基本的に飄々としていて、感情的になることは少ない印象でした。でも、3話で大学の友人で税理士の上村(松岡広大)が犯罪の片棒を担いでいる可能性を知り、感情が強く出るシーンがあって。
警察としては冷静さを保たなければいけないけど、知り合いだからこそ熱くなってしまう部分もあり、ちょっと空回りしながら、怒りや落胆、悲しみが前面に出てくる。それは南方の人間らしさを感じるシーンだったので、彼をさらに魅力的に感じてもらえたらいいなと思いましたし、演じるのが楽しみでした。
上村をどなたが演じてくださるのかも気になっていましたね。それが、今回初めてお会いする松岡さんになって。でも、最初にお会いしたときから気さくな方で、同い年ということもあってすぐに意気投合しました。
共通の知り合いがいるからだと思いますが、僕のことを知っていてくれたんです。しかも、僕のお芝居に対して好意的に思っていてくださったみたいで。それがすごくうれしかったです。
一ノ瀬颯 松岡広大との初共演でグッと距離が近づき「ステキな仲間ができました」
──松岡さんとのお芝居はいかがでしたか?
松岡さんは、体の中からあふれ出てくるものがあって、全身で表現できる方。遠くから撮影していても伝えたいことがわかる、ステキなお芝居をされる方だなと思いました。
ご一緒した撮影初日、松岡さんは先に帰られたのですが、連絡先を書いて置いておいてくれて。そこから次の撮影までに連絡を取り合って、仲良くなって、松岡さんのクランクアップ後には2人で食事にも行ったんです(笑)。短期間の撮影でしたけど、本当にステキな仲間ができましたし、3話に対する思い入れが高まりました。
──第3話では、奈美(沢口靖子)と行動することも多かったですが、沢口さんとの撮影で印象に残っていることはありますか?
3話だけに限らずですが、監督の意図を汲みつつ、映像にどう映るか、どんな立ち方・言い方をすれば効果的に見えるのか、ということをすごく意識されている方。最初から「こっちのほうがいいですか?」などと積極的に発言をされているところを見ると、ご自身の意思を強く持っているんだなと感じています。
これが、ずっと主演を張ってきた方の視点なんだと思いましたし、撮影される画角によって細かく表現を変えていらっしゃるところを見ると、すごいなと思います。
しかも、それが自分のことだけではないんです。DICTはメンバーも多く、動き回ることもありますが、「この人がこっちに行くためには、前のセリフの段階でこうしたほうがいいのかな」と、全体に気を配られていて。視野の広さを感じています。
3話では、奈美さんと2人で会話するシーンも多かったですね。1話、2話ではあまり見せられなかった南方と奈美の出来上がった関係性を表現するために、ということも考えてくださって。
例えば、最初は歩きながらしゃべり続ける画を思い浮かべていたシーンも、沢口さんの提案で少し立ち止まってしゃべるお芝居に変更されました。そのちょっとした動きの変化で、奥行きを感じるものになったなと思っています。
──今作には魅力的なキャラクターがたくさん登場しますが、一ノ瀬さんが気になるキャラクターはいますか?
全員魅力的ですが、奈美さんがやっぱり気になりますね。つい目で追ってしまいます。よく走っていらっしゃるし、思ったらすぐ行動するタイプで、事件に対しては常に前のめりの姿勢で、人を見る目もあり、みんながついていきたいと思える人です。
DICTメンバーや罪を犯してしまった人に対する言葉も気づかされるものがありますね。これから先、それぞれに成長したり、更生したりしていくなかで、きっと奈美さんの言葉は大きく影響していく気がしています。
言葉と言えば、奈美さんは犯人に対して同情しないところがいいな、と。刑事ドラマの主人公は、厳しいことを言いながらも犯人に寄り添うことも多いと思うのですが、奈美さんは、ダメなものはダメだと結構バッサリと斬り捨てるんです。だからこそ心に響くものがあると思いますし、綺麗ごとじゃない感じが好きですね。
──今作のテーマになっている情報犯罪に対して、一ノ瀬さんは対策をしていますか?
情報犯罪は本当に身近に転がっていて、誰もが巻き込まれる可能性があるんだな、とすごく感じています。最近では警察を騙(かた)る電話などもあり、冷静であれば引っかからなくても、当事者になると判断力が鈍ることもあるとニュースなどでも聞きました。
僕自身は、知らない番号からの電話はすぐには出ません。番号を調べるという対応を心がけています。
──最後にドラマ後半の見どころを聞かせてください。
よく掛川啓役の金田(哲)さんと、早見浩役の松角(洋平)さんと「今のところ、俺たちあまり役にたってないよね」と話しているのですが、DICTの男子メンバーはちょっとポンコツなんです(笑)。なので、カッコいいところを見せられたらいいなと思っています。
あとは、最初から追い続けている、なんだか得体のしれない“大きな敵”にどれだけ近づけるのか、DICTがどう対峙していくのかを見守っていただけたらと思います。
撮影:河井彩美

