『元彼の遺言状』第9話完全版
剣持麗子(綾瀬はるか)は、6年前に起きた「十ヶ浜強盗殺人事件」の容疑者となった篠田敬太郎(大泉洋)の無実を証明するために、事件現場のリストランテ「プロメッサ」を訪れる。
<ドラマ『元彼の遺言状』これまでのあらすじ完全版>
すると、メニューボードを出そうとしていたスタッフの滝沢美月(成海璃子)が篠田に気づき、驚いた顔を見せた。しかし篠田は、美月に見覚えがないという。
一方、警視庁捜査一課の刑事・橘五郎(勝村政信)は、篠田こと田中守の逮捕を受け、事件の夜、現場にいた医師の高瀬悟志(東根作寿英)や美月たち住民を公民館に集め、改めて事実確認を行う。
だが、「事件はもう終わったものだから話すことはない」というプロメッサのオーナー・藤巻純(遠山俊也)ら。そこに、麗子が篠田を連れて乗り込んでくる。篠田の顔を見て住人たちはざわついた。
事件は、被害者となった実業家の小笠原仁美(田山涼成)がプロメッサで開いたパーティーの夜に発生。篠田は、プロメッサでスタッフを募集しているという求人を見て、この店で働いていた。
小笠原は、包丁で背中を刺され死亡しており、凶器の包丁や中身を抜き取られた被害者の財布には篠田の指紋が残っていた。
さらに、篠田が被害者から金を借りていたことや、事件当日に激しい口論をしていたという目撃証言もあり、事件後に姿を消した篠田に容疑がかかったのだ。
パーティの準備で徹夜していたという篠田は、スタッフにも振る舞われた酒を飲み、酔い覚ましに店の外に出てベンチで眠ってしまったという。
その後、寒くなって店の中に戻ってまた眠ってしまった篠田。目を覚ますと店内には誰もおらず、小笠原が死んでいたという。しかし、当日、店の入り口で受付をしていた美月だけでなく、他の参加者たちも、篠田が外に出て行く姿を見ていなかった。
麗子たちは、パーティ参加者の1人でもあった亀田新一(勝矢)が営む旅館に宿泊する。すると案内された麗子の部屋では元上司・津々井君彦(浅野和之)が待っており、名物の浜焼きを肴に一杯やっていた。
津々井は、麗子に被害者・小笠原に関する調査資料を手渡す。小笠原は違法スレスレの高利貸しで財をなし、生まれ故郷であるこの町に戻ってきた後も金貸しをしていた。
だが、その実態は、土地を担保に金を貸し、言うことを聞かない住民には執拗に返済を迫るため、土地を奪われて町から追い出された住民もいた。そして、6年前のパーティに参加した住民の半数以上が小笠原から金を借りていたことも明らかになった。
あくる日、再びプロメッサを訪れた麗子たちは、美月に出会う。美月は、昨日の非礼を詫びると、6年前、篠田の世話になったと話す。
新人だった美月は、買い出しに出かけた際に財布を無くし、タクシーに乗れずに困っていた。そこに通りがかった篠田が、プロメッサまでの料金だという830円を立て替えてくれたのだという。しかし篠田は、その時のことを覚えていなかった。
プロメッサの表には旗が立っていた。港の漁師たちに開店を知らせる合図で、店の近くに住んでいる女性が、息子のために始めたものだという。
美月に頼んで店内に入らせてもらうと、次第に当時の記憶が繋がり始める篠田。そして、店の外にあるベンチで眠ってしまった後、目を覚ますとストールがかけられていたことを思い出す。
麗子たちが旅館に戻ると、今度は森川紗英(関水渚)が待ち構えていた。探偵事務所の大事なスタッフである篠田を心配してやってきたらしい。麗子たちは、津々井と紗英にもストールの件を報告した。篠田にストールをかけた人物が見つかれば、彼が外に出たことは証明されるのだ。
篠田は、この状況は、殺人容疑をかけられた主人公が死刑執行の前に自分の無実を証明してくれる女性を探すウィリアム・アイリッシュの「幻の女」だと興奮するが…。
麗子は、橘に当たり、警察の資料にもストールの写真が残っていることを知る。店内に落ちていたのだという。
その写真を見た美月は、桜林房江(にしだまちこ)のものではないかと言い出す。息子のためにプロメッサの旗を上げ始めた女性だった。
麗子と篠田は、さっそく房江を訪ねた。しかし房江は、物忘れが激しいらしく、有力な証言を得られるような状態ではなかった。
その夜、麗子と篠田は、津々井、紗英と一緒にカニ料理を満喫する。そこで紗英は、そもそもなぜ現場から逃げたのか、と篠田に尋ねた。
すると篠田は、誰もいなくなったプロメッサの店内で目を覚まし、血の付いた包丁を見つけて驚いていたところに電話があり、「逃げろ。このままだとあんたが犯人にされるぞ」と言われたからだと明かす。篠田が小笠原の死体を見つけたのはその直後のことだった。
そのとき、津々井がカニ用のハサミで手を切ってしまう。津々井を高瀬の診療所まで連れて行き、手当てを受けさせる麗子たち。そこで麗子は、小笠原のことを調べた、と切り出し、小笠原は殺されて当然だと思っている住人もいるのではなないか、と高瀬に問いかけた。
それに対して高瀬は、「この土地に悪人はいません。少なくとも今は」と返し…。
翌朝、麗子たちは、高瀬が紹介してくれた海鮮丼を食べにいく。するとそこには、もう地元民と打ち解けている紗英の姿があった。
麗子から、高瀬が何かを知っているのではないか、と聞かされた紗英は、津々井を連れ出して彼に会いに行く。津々井の娘だと偽り、昨夜からめまいがするといって診察を受ける紗英。
ほどなく、麗子のもとへ紗英から電話が入った。紗英いわく、患者のためならどこへでも足を運ぶような高瀬が犯人のはずはないという。
そのとき、紗英の声を後ろで、風見鶏が回る音が聞こえた。診療所の屋根に、風見鶏があったのだ。その音を聞いた篠田は、事件のとき電話で「逃げろ」と篠田に告げた男の声の後ろでも同じ音がしていたことを思い出す。
高瀬は、往診に行く際、亀田の車に乗せてもらっていた。事件があった夜、高瀬を診療所まで送ったのは酒が飲めないという亀田ではないかと疑う紗英。篠田に電話をかけたのは、高瀬か亀田のどちらかである可能性があった。
麗子と篠田は、亀田に会い、電話の件を切り出した。亀田は、高瀬を送っていったことは認めたものの、電話の件は篠田の作り話ではないかと言って取り合わなかった。
続けて高瀬に会いに行った麗子たちは、明後日、東京に戻ることを告げる。
そして「この土地に悪人はいません。少なくとも今は」という言葉の意味を尋ねた。すると高瀬は、小笠原がこの土地にリゾートホテルを建てようと計画し、大規模な立ち退きを進める予定だったことを明かす。「でも、彼が死んだことで計画はとん挫し、港町はいつもの日常に戻った。だからあんな言葉が出たのだと思います」。
そう返す高瀬に電話の件を告げ、「あの日何があったのかを話してほしい」と言って頭を下げる麗子。続けて「連絡を待っている」と言って高瀬に名刺を渡し、診療所を後にした。
麗子たちは東京に戻るため、バス停に向かっていた。高瀬からの連絡はなかった。ところがそこに、思わぬ知らせが入る。高瀬の遺体が発見されたというのだ。
麗子と篠田が現場の港へ向かうと、規制線が張られており、橘の姿があった。地元の漁師が、海に浮いている高瀬の遺体を発見したらしい。集まった野次馬の中には、藤巻や瀬戸、亀田のほか、美月の姿もあった。
事務所に戻った麗子は、篠田が作ったイタリア料理を頬張りながら十ヶ浜でのことを一つひとつ思い出していた。
篠田は、そんな麗子に、「あの夜から僕は透明人間になったが、麗子と(森川)栄治(生田斗真)だけが見つけてくれた」と言うと、「例え裁判に負けても後悔しない」と続けた。
すると麗子は、「この勝負、絶対に勝つわよ!」と告げ…。