――田中さんとは役柄についてお話などしましたか?
撮影に入ってすぐのころ、どこまで山崎シゲルの喜怒哀楽を表現したらいいのかわからなかったので、僕のほうからいくつか質問をさせていただきました。「そのままでいいよ」などシーンにそった助言をその都度していただいたという感じです。
古屋呂敏“普通”の中にシュールを盛り込む難しさに苦戦
――感情表現の加減が難しかったということですが、演じるうえで意識したのはどのようなことでしたか?
この作品の一番の魅力は独特のシュールさで、あの空気を意図して作ろうとすると逆に寒くなってしまうと思ったので、余計なことは何も考えず、純粋な気持ちでぶつかることを大事にしました。
というのも、山崎シゲルっていたって普通なんですよ。“普通”を演じるってお芝居の中で最も難しいジャンルだと思うので、普通でいる中にシュールさを表現することに苦戦してしまって。
コントだったらフラグを立てて、振りがあって落とすというセオリーがあると思うんですけど、山崎シゲルの場合は突発的な笑いがあれば、考えさせられる笑いも登場するので、その一つ一つに想定外に頭を使いました。

――山崎シゲルと古屋さん自身の共通点はありますか?
ゼロですね、まったくありません(笑)。でも、そこがよかったのかも。共通点のない彼だからこそ、振りきって演じられたと思うのですごく新鮮だった。通常、「こういう意図があるからこのセリフにつながっている」という流れがありますが、山崎シゲルの場合は枠にとらわれない生き方をしている。僕はどちらかというと、枠組みの中でルールなどを気にしながら生きてきたので、演じながら彼との大きな違いに気づかされました。
――山崎シゲルのような生き方に憧れを抱くことはありますか?
人たらしの部分は羨ましいと感じますし、感情の赴くままに行動する素直さ、ピュアさは素敵だと思います。

――山崎シゲルではなく、部長の立場だったとしたら部下の突飛な言動を許せますか?
うーん…。理解はできませんね。僕もどちらかというと、部長のように争いごとは苦手なタイプなので、途中から笑ってしまいそうです(笑)。
狙っているのか、狙っていないのかわかりませんが、山崎シゲル同様、世の中には横柄な態度をとったり、ちょっと失礼な言動があったりしても決してイヤな感じにはならない特異な人がいるじゃないですか。ああいう才能は僕にはないと感じました。
――この作品をどんなふうに楽しんでほしいですか?
何も考えずに山崎シゲルと部長のやりとりを見ていただきたいですね。「今日はちょっとイヤなことがあったなぁ」とか、「最近、ついてないなぁ」という日に見ることで、心が少し軽くなるかもしれません。
撮影:島田香
第1話YouTube無料視聴:https://youtube.com/shorts/sEc554W3N18