その帰り道。極楽寺の駅に、1人で降り立つ和平。千明の姿を探すが、通り過ぎる乗客の中に彼女は見当たらない。
駅の外に出た和平は、次の電車、さらに次の電車まで、立ったまま千明を待ち続けていた。
同じく極楽寺の駅に、今度は千明が降りてきたが、和平の姿は見当たらない。改札まで来て、いつものように定期券を探し出す。
そこに「吉野さーん」との声。しかし、その声の主は和平ではなく、急患の往診帰りの医師・成瀬千次(三浦友和)だった。
気分が沈む千明(小泉今日子)は和平(中井貴一)に八つ当たりのように甘える
千明の表情を見た成瀬は「あなたが今会いたいのは、僕じゃあない」とひと言。その場で和平へ電話する成瀬は、すでに自宅でジャージに着替えていた和平に、すぐに駅に来るように発破をかける。
慌てて和平が駆けつけると、成瀬は帰っていき、千明と和平だけが駅前に残された。
沈んだ表情だった千明は、和平がジャージ姿でいることに絡みだす。自分が会って話したいと思っているときに、なんでジャージ姿なのか。めちゃくちゃなことを言っていることはわかっていても、天邪鬼な甘えたい気持ちが止まらない。
八つ当たりをしてくる千明に、和平も反論。けれどそれは、いつもの口論とは様子が違う。和平も会いたいと思って、電車を降りてから3本も待っていたが、腹痛で諦めていたのだ。
その言葉に千明の怒りも消えて、また沈んだ表情に戻った彼女はつぶく。
「歳とるのって、そんなに悪いことなんですかね」
やるせなさを込めてそう言う千明を、突然和平が抱きしめる。優しく背中をさする和平の胸で、千明は涙を流した。

バーにやって来た和平は、千明から祥子の話を聞く。そして、「それはキツいですね…」とつぶくしかない。
自分のことなら我慢すればいいけれど、慰めて励ますこと以外できないのは、自分のことよりキツい。和平の共感の言葉に、千明も少し落ち着いたようだ。