特撮映画に登場する巨大怪獣・ゴジラが誕生したのは1954年のこと。日本生まれのゴジラの存在感は薄れることなく、今でも新作が作られるなど、時代を超えて、世界のファンを魅了しています。

その生誕70年を記念して、国内外の現代アーティストが、「ゴジラとは、何か。」をテーマに作った作品を集めた『ゴジラ生誕70周年記念 ゴジラ・THE・アート展』が東京・六本木の森アーツセンターギャラリーで開催中(~6月29日)。筆者も、自分なりのゴジラを見つけに、足を運んでみました。

会場を入ると、入り口からゴジラワールド全開です。「GODZILLA THE ART」というタイトルの描かれた壁にはヒビが入り、岩のような大きな灰色の塊が散乱しています。ゴジラの威力、恐るべし!

横尾忠則は40年前の作品をゴジラが街を壊すごとく、パネルの配置を崩して再構成

“ゴジラが破壊”した入り口の壁(展示風景)

白地に赤のタイトル看板も、それを支える鉄骨の柱もぐにゃりと折れ曲がり、大きく割れた壁の向こうには何やら絵が…。展覧会はこうしてゴジラの破壊力を体感しながら始まります。

ぐにゃりと折れ曲がった看板からゴジラの威力が伝わります(展示風景)

その入り口の正面に鎮座するのは、現代アーティスト横尾忠則さんの「PARADISE」。これは1985年に発表された60cm角のセラミックを16枚組み合わせた作品をもとにしたもの。

「PARADISE」横尾忠則 TM & © TOHO CO., LTD.© Tadanori Yokoo

横尾さんらしくポップな黄色と黒のカラリングで描かれているゴジラが中心にいるオリジナル版をもとに、横尾さんがこの展覧会のために考えたのが、ゴジラが街を壊すごとく、パネルの配置を崩して再構成すること。破壊をアートに仕立てる、というさすがの発想です。

ゴジラはどこに?と探すのも楽しい(展示風景)

少し進むと、画家の福田美蘭さんによる近日公開の架空の映画ポスターが目に入ってきます。

今回、会場で福田さんに話を聞くことができました。「1954年当時、まだ見ぬ映画のイマジネーションを想起する手段はポスターでした。今は電子看板が流行っていますが、当時のポスターは日の光の下で見るしかなく、音もなく、一枚一枚貼ってかないといけない、そのレトロなものに工夫があったのです」と福田さん。

続けて「それを再現するのは絵画でしかできないな、と思い、絵画を作り、その絵をさらに紙媒体に展開しました。自分としては、これを六本木の街中に提示したかったのですが、実現できなかったので、これから貼ります、というイメージにしました」と語りました。

「『ゴジラ』ポスター」(部分)福田美蘭 TM & © TOHO CO., LTD.

さらに「自分は1954年の初期のゴジラにこだわっていたのですが、この制作を通じて、ゴジラはその時代ごとの姿があって、なくならないで継続するものだ、ということに気づいたことが成果でした」とゴジラは時代を映す鏡、との認識を新たにしたといいます。

「ゴジラは時代を映す鏡」と話す福田美蘭さん

ゴジラ映画に欠かせないのが建物を破壊するシーン。スウェーデンのアーティスト・TokyoBuildさんと東宝映像美術がコラボレーションした街のミニチュアの展示コーナーでは、多くの来場者が夢中で写真撮影。スクリーンで観ているゴジラの世界の一員になったような気分に浸れる空間です。

なんという緻密さ!ゴジラ映画に欠かせない建物のミニチュア(展示風景)