スペイン内戦時に無差別爆撃を受けた街・ゲルニカに生きる人々を描いた舞台「ゲルニカ」の公開フォトコールと初日前会見が9月3日(木)に行われ、会見には主演の上白石萌歌と、中山優馬、勝地涼、早霧せいな、キムラ緑子が登壇した。

左から)早霧せいな、中山優馬、キムラ緑子、上白石萌歌、勝地涼

上白石が演じるのは、ゲルニカの元領主の娘として、何不自由なく生きてきたサラ。恵まれた生活を送る彼女をよそに、世間では旧体制派と新体制派が激突。ドイツやソビエトなどの軍隊も加わり、スペイン内戦が本格化していた。

サラの婚礼直前には、幼馴染の婚約者(松島庄汰)が「戦いに参加したい」と、突然出て行ってしまう。この国で今、何が起きているのか──。街の食堂に出入りするようになったサラは、町の人々や兵士たち、海外特派員と触れ合い、各地で激戦が行われていることを知る。

さらに、イグナシオ(中山優馬)という兵士と出会い、いつしか恋に落ちるサラだが、彼の実情はドイツ軍のスパイで、ゲルニカを爆撃するための工作を密かに進めていた。そんな折、サラの妊娠が判明。人々の思いが交錯する中、戦いは激しさを増し、空爆がゲルニカの街を襲う。

フォトコールで上演されたのは、物語が動き始める1幕の後半部分。人民戦線の兵士たちが集まる食堂を訪れたサラの世間知らずっぷりに、彼らはうんざりした様子を見せる。

家に帰れば、サラを叱るため、本人ではなく女中を鞭で叩く、サラの母・マリア(キムラ緑子)の姿が。直接叱ってもらうことすらできないことに対する違和感を募らせたサラは、その感情をマリアにぶつけ、家を飛び出した。

恵まれた環境で育てられ、甘やかな世界を夢見ていたサラ。純粋無垢な“お嬢様”が、一連の出来事を受け、自分自身の世間とのズレ、そして檻に囚われたような閉塞感を感じ始める複雑な心情の変化を、上白石が豊かに表現している。

会見で、自身の演技について「僕の演じるシーンは1人のことが多いので、自分の中での戦いです」と明かした中山。その言葉通り、まるで“一人芝居”かのように、舞台上で長台詞を口にしながら、堂々たる立ち回りで観客を引き込んだ。

クリフとレイチェルという、海外特派員のコンビを演じた勝地と早霧。自分の意見をまっすぐぶつけるレイチェルと、どこか飄々(ひょうひょう)とした態度を取りながらも、核心をついた言葉を投げるクリフ。

本音でぶつかり合う2人の関係性を、早霧は「クリフとレイチェル、2人の間に信頼があるからこそだと思う」と分析する。そして「(勝地)涼くんと稽古を重ねて、クリフとレイチェル以上の絆を築きたい」とやる気を見せた。2人の絆が深まるごとに、キャラクターの関係性にどう影響していくのかに期待したい。

そして、キャストがステージに並び、燃え上がるゲルニカの様子を歌にのせて説明する歌唱シーンは圧巻。ぜひ注目してほしい。

舞台は9月4日(金)の東京公演初日を皮切りに、京都、新潟、豊橋、北九州にて、合計約2ヵ月に渡り上演される。詳細は公式サイトで確認を。