長期的な避妊や、月経困難症に効果的なミレーナ。気になるけれどよく知らない…という人のために、ミレーナの仕組みや期待できる効果を詳しく解説。気になる費用や副作用、付け方・外し方についても解説します。
ミレーナとはどのようなもの?

ミレーナとは、正式名称を“黄体ホルモン放出型子宮内システム(LNG-IUS)”という、子宮内に挿入する医療器具。T字型の柔らかなプラスチック製で、大きさは32mm程度です。
表面にコーティングされたレボノルゲストレルという黄体ホルモンが、子宮内で継続的に放出されることで、子宮内膜が薄い状態を維持。生理時の経血量を減らしたり、受精卵の着床を防いだりする仕組みです。
挿入後は最長5年と、長期間効果が持続する点が大きな特長といえます。
“生理痛の軽減・過多月経の改善”と“避妊”の効果が期待できる

ミレーナに期待できる効果は、大きく分けて2つ。
具体的にどのようなケースで使われるのかチェックしてみましょう。
月経困難症・過多月経の改善
妊娠していない状態では、分厚くなった子宮内膜が剥がれて生理が起こるのが通常。しかしミレーナを挿入すると子宮内膜が薄くなるため、重い生理痛や月経量の軽減に効果的だといわれています。
2014年からは、月経困難症や過多月経の診断を受けた場合、定められた条件を満たせば保険が適用されるようになりました。なお、避妊だけの目的では保険が適用されないため注意が必要です。
避妊効果
ミレーナにより子宮内膜を薄くし、受精卵の着床を予防。また、精子が子宮内に進入しないように子宮の入り口の粘液を変性させることでも、避妊効果が期待できます。
避妊には低用量ピルの服用も効果的ですが、ピルとの主な違いは“体全体でなく子宮のみに作用する”点や、“血栓リスクのある人(喫煙者、肥満者など)も適応しやすい”点。局所的に作用するため、他の身体の部分への影響が少なく済みます。
さらに一度挿入すると最長5年は交換不要で、毎日のピル服用が苦手な人にも向いているでしょう。長期的な避妊効果が得られることから、次の妊娠まで間隔を空けたい場合や、今後の妊娠を望まない場合にも使用される傾向があります。
ただし排卵が完全に止まらない場合もあるため、妊娠を望まない場合は他の避妊具も使うようにしてください。
事前に確認して ミレーナにはデメリットも

メリットの多いミレーナですが、装着に際してはデメリットがあることも。あらかじめよく理解したうえで医師と相談しましょう。
痛みや出血が起こる場合がある
ミレーナの装着後に副作用が起こることもあります。
例えば、装着直後や使用開始初期には腹痛を感じる人も。軽度〜中等度の鈍痛であることがほとんどで、通常は数日〜数週間で治まります。
激しい痛みや高熱を伴う場合は、非常に稀ではあるものの、子宮の壁に入り込んでしまう子宮穿孔や感染症の疑いも考えられます。すぐに医療機関を受診してください。
また、装着後1ヵ月〜数ヵ月は不正出血が見られたり、おりものの量や質感が変化したりすることがあります。問題のないケースがほとんどですが、持続的に多くの出血が起こる、おりものから強い臭いがする、といった場合は医師に相談しましょう。
ミレーナが適さないケースもある
ミレーナは使用に適さない人もいます。以下の項目に当てはまる場合は適応外となりやすいため、チェックしておきましょう。
・妊娠中、または妊娠の可能性がある人
・妊活中の人
・PMS症状も改善したい方
そのほか月経時以外に不正出血がある人や子宮内膜炎や卵管炎のある人など、既往歴などにより適さない場合もあります。詳しくは医師と相談しましょう。
ミレーナの費用の目安

ミレーナの施術にかかる費用はクリニックにより異なりますが、保険が適用される場合、自己負担は1万円程度。自費の場合は挿入で5~7万ほど、抜去で1万円前後がおおよその目安です。
鎮痛剤や麻酔を使用する場合は追加費用が発生します。
さらに、定期検診の費用が1回あたり2~3千円かかります。
経過観察の間隔は個々の状況によりますので、医師に確認をしましょう。
施術の基本的な流れ
ミレーナの装着や、装着後の施術の流れについて説明します。
①診察

まずは医師が診察を行い、ミレーナが適応するか判断。出産経験の有無や既往歴を確認した後、内診・超音波検査を行い、子宮や卵巣に問題がないか確認します。
②施術

月経の終わりかけのタイミングで、ミレーナを子宮の入り口から挿入します。施術は数分で終わることがほとんど。
装着しやすさには個人差があり、少し時間がかかる場合や、子宮頸管を拡張する前処置が必要になることもあります。
③定期検診

装着から1、3、6、12ヵ月後といったペースで定期検診を受け、異常がないか確認します。その後は約半年ごとに検査を行い、継続して使用する場合は装着から約5年で交換が必要です。
④抜去・交換
ミレーナの使用を停止したい場合や、出血量が増えてきた場合は、5年以内に抜去もしくは交換します。器具で抜去糸をつかみ、ゆっくりと引っ張り出して抜去する流れです。
ミレーナに関する気になる質問

ミレーナに関するよくある質問と回答を紹介。あわせて参考にしてください。
ミレーナの装着中でも妊娠することがある?
ミレーナの場合、使用開始後1年以内に妊娠する確率は約0.2%と低いですが、完全に排卵が止まっていない場合は妊娠する可能性もあります。
妊娠を望まない人は、他の避妊具も併用したほうがよいでしょう。
ミレーナの装着で太る or 痩せるという噂は本当?
理論上、ミレーナの装着によって太ったり痩せたりすることはありません。
ただし、生理痛が軽減するため体調がよくなり、生理中の食欲が以前より増すことはあるかもしれません。
ミレーナ挿入時は痛い?
経腟分娩の経験有無などによって、痛みの感じにくさに差が生まれます。
しかし、お産の経験がなくてもスムーズに装着できることもあるため、個人差が大きいといえるでしょう。
ただし、性交経験がない人は、子宮の入り口を見やすくするための腟鏡(クスコ)を用いる際に痛みを感じる可能性はあります。
月経前症候群(PMS)の緩和に効果はある?
PMSの症状は軽減できない可能性が高いです。
PMSの症状が重い人には違う治療の方が向いている場合もあるため、一度クリニックを受診しましょう。
この記事の監修者
Inaba Clinic|稲葉 可奈子 院長
産婦人科専門医・医学博士 Inaba Clinic 院長。京都大学医学部卒業、東京大学大学院にて医学博士号を取得、双子含む4児の母。
産婦人科診療の傍ら、子宮頸がん予防や女性のヘルスケアなど正確な医療情報を発信。メディア出演、講演多数。
小中学生からかかりつけにできる婦人科を作るため、2024年7月渋谷にInaba Clinicを開院。