<コラム>『嘘解きレトリック』第7話
今回の事件というのが…。
三十三番街で起きた強盗殺人と、その裏にある“幽霊屋敷”が交錯する、複雑怪奇なミステリー!ってんで、そこだけ切り取ってみれば、90年代のドラマを謳歌してきた僕にとっては、まさに『金田一少年の事件簿』(日本テレビ)的な世界観!ああいう“館(やかた)”っぽいのが出てくれば、なんでも金田一感あるよね?(安直か)加えて、あの犯人の動機の怖ろしさといい、隠し扉とかミイラとか肖像画とか、もうなんだか、それらがすべて、金田一少年ぽいっちゃ、ぽい…よね??(誰に!?)
前々回の“人形屋敷”の回は、金田一少年のおじいちゃん…金田一耕助…うん、つまり、横溝正史的世界観!!だったのに、今回は、金田一少年的世界観!!新旧のクラシックミステリーの名作オマージュが、なんと、この同じドラマの中で展開できるという『噓解きレトリック』の柔軟性。
って、中盤、それに気づいたとき、僕、ちょっと勝手に興奮気味だったんだけど、終盤にさしかかるにつれ、よくよく考えたら今回の話、『噓解きレトリック』でなくてもよくね?って(おい!)このまま、ほかの別のミステリードラマに移管しても、なんら問題なくね?って。
それって、それだけミステリーの骨格がしっかりしているってことでもあるんだけど、一方で、それとは別にオリジナリティってもんが薄くなるから、最悪『噓解きレトリック』でなくてもよくね??って、なってたんですよ。
だって、『噓解きレトリック』ってのは、“ウソを聞き分けられる能力”でもって、事件を解決していくことがミソなわけですよね。それこそが、重要なミソなわけですよね?で、そこで今回を振り返ってみると、その、ウソを聞き分けた…ってのが、ショールを病院に忘れてきちゃったヨシ江(磯山さやか)が「ほかにもっと気に入ってるものがあるから、ええよ…」って、みんなに気を遣った“ウソ”と、その病院で遭遇したリリー(村川絵梨)が「恋人ごっこも飽きちまったよ。私が、あんたなんか本気にするはずないじゃないか…」っていう、強がりの“ウソ”のみ。なんという地味…じゃない、今回の“幽霊屋敷”事件に、ほぼほぼ関係ない!!!
いや、だけどだけど、だけどもそれこそが、今回のミソだったんですよね(どないやねん!)。そう、このドラマは、事件解決に関わらなくても、その“ウソ”を聞き分ける能力を持ったことによる苦悩こそがベースで、そんな“ウソ”を起点にした、人々の悲喜こもごもを多面的に描く。事件解決のミステリーでもあれば、ヒューマンミステリーでもある。そして何より、そんな特殊能力を身につけた少女と、それを支える青年の成長物語なのです。
こんなに、骨格のしっかりしたミステリーを前面では描いておきながら、実は、このドラマがホントに描きたいのは、そんな人間たちの心の機微だったっていう?っていう??(知らんがな)なんという、おしゃれドラマ!!