テレビマンに仕事の極意を聞く新連載「テレビマンって実は」。
フジテレビアニメ開発部の森彬俊(もり・あきとし/2009年入社)プロデューサー(以下、P)をむかえる連載第2弾では、改めて森Pがアニメプロデューサーになった経緯と、仕事の醍醐味について聞いた。
隣の部署だった『ノイタミナ』のチームリーダーに、企画書を出し続けた
――森さんはフジテレビ入社11年目ですが、そもそも、なぜフジテレビを志望したのですか?
森:学生時代、自主映画サークルで映画を作っていて、映像を作る仕事に就きたいと思っていたんです。当時、フジテレビは映画のビジネスを他社に先駆けてやっていたので、そういったところも魅力的に感じました。でも入社後に配属されたのは、制作部門ではなく、番組のDVD化などのパッケージ化を担当する部署でした。
その部署の隣が、『ノイタミナ』のアニメチームだったんです。彼らの仕事のやり方は、自主映画上がりの僕にとって親和性が高かった。しかもアニメが大好きでしたから、まずは、アニメのチームリーダーに週1で企画書を出すところから始めたんです。「こいつは使えるな」と思って引っ張ってもらえたら、という狙いだったんですが、その前に、組織変更で部署が統合されまして。そこからトントン拍子にアニメを担当することになりました。
――2018年には『+Ultra』を立ち上げました。『ノイタミナ』も『+Ultra』もエッジが効いていて“オシャレなアニメ枠”といったイメージがありますが、どんなことを意識しましたか?
森:オシャレかどうかは、視聴者の方々が受け止めて決めることだと思っています。むしろ僕が意識したのは、アニプレックスや東宝のようなパッケージメーカーや配給会社と違い、我々はやっぱり放送局なので、そこを最大の利点として、まず放送でいかにバズるか、ということ。
放送でお客様に見てもらう、そしてリアクションをいただくという視点を持っているだけで、自ずと企画の選び方が変わってきます。それが結果的に、「ちょっと他と違った作品やってるよね」と受け止めていただく作品のラインナップにつながっているんだと思っています。
作品を作った時点ではそれがベストだと思っているので、後悔はあまりない
――その裏にはどんなご苦労がありましたか?
森:苦労したことはたくさんありますが、「あの時こうすればよかった」という後悔はあまりないんです。作品がヒットした、しなかったという理由を分析して、次回作につなげることはしますが、作品を作った時点ではそれがベストだと思ってやっていますので。もし結果がついてこなかったとしても、それも必要なプロセスだと思うんです。
アニメの面白いところは、プロデューサーをやっている僕一人の作品ではない。委員会に参加していただいた出資者のものでもあるし、クリエイターのものでもあるんです。大勢の参加者で共通のビジョンを持った上で進んでいくものなので、僕があとから後悔するような気持ちでプロデュースしているのは、作品に対して失礼な気がすると言いますか。だから、後悔したりすることは、仕事の上ではあまりないかもしれないです。
――アニメのプロデューサーに一番必要な資質とは、何でしょうか?
森:バランス感覚じゃないでしょうか。松崎(容子アニメ開発部部長)も言っていましたが、アニメオタクなだけではできないし、逆にビジネスに特化してコンテンツを“一商品”として冷静に捉えすぎてもダメだと思うんですよ。熱意はあるけれども、引いた目でも見られる。この作品を世の中に投じた時にどういうリアクションが起きるかという視点を、きちんと持っていることが必要になってくると思います。
――森さんのターニングポイントになった作品といえば?
森:『PSYCHO-PASS サイコパス』(2012〜/劇場版は2015、2019公開)という作品は、アニメのコアなファンの方々に支持していただいたのですが、その時に改めて、作品を作って、放送して、お客様からリアクションをいただくことの大切さを痛感しました。そこまでできて、初めて「100%」なんですよね。しかも作品がヒットすると、作品に心血を注いで寝る間も惜しんで作ってくださっているクリエイターの方々の苦労が報われることにもつながる。「ヒットする」ことがいかに大切か、思い知りました。
――では今後の展望も教えて下さい。
森:アニメが好きなので、こういう人と一緒に仕事をしてみたい、オリジナルを作ってみたいという欲求は当然ありますが、そういうことが実現する以上に最大限に喜びを感じるのは、クリエイターの方が成功していくことなんです。企画をご一緒したクリエイターの方々が、世間的に認められて、どんどんステップアップする姿を見たいし、僕はそこに喜びを感じるタイプなんだということもわかってきた。だから、今後もそこを目標に仕事をやっていくんだろうと思います。
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