「いつか来るかもしれない」と、常に我々の中にある震災への恐れ。抱える不安感を軽減させるためには“正しい知識と備え”を得ることが重要だ。
昨年末に発売されてから増刷を重ね続け、ベストセラーとなっている書籍「レスキューナースが教える プチプラ防災」では、災害を知り尽くした国際災害レスキューナースの辻直美さんが、シンプルな自衛術とともに、普段の生活を楽しみながらできる“プチプラ防災術”を解説している。
「新型コロナウイルスの感染拡大による混乱も災害と捉えている」と語る辻さんに、「いざという時、その備えで大丈夫なのか?」というポイントを 、防災のプロとしての目線で教えてもらった。
突然の事態に備える備蓄の適量とは
――災害時に起こる不安からの「買い占め問題」についてどう思いますか?
今回の新型コロナウイルスの混乱でも「買い占め問題」が置きました。買い占めは不安からの行動です。家の中にはすでに「食物」はあるので落ち着きましょう。冷静でいられるように、常に生活の中で適切な備蓄量をキープしておくことをおすすめします。
私の場合は災害に関わらず常に10日分をキープするために、5日分くらいのストックが減ったら買い足していく。適切量の把握におすすめなのは「ローリングストック」です。
例えば、米10キロ、うどん20食、パスタ(100g10束)、ラーメン10食が、家族が3人6日分食べていける量になります。延べでどのくらいの量を保持しているかを把握していないから、恐怖心から慌てて買いだめをしてしまうのかなと思います。
常に家の中にあるものを把握する、今必要なものが何なのか分かると無駄な外出が減り感染リスクが下がる。野菜も冷凍しておけば楽で日もちもしますし、繊維がつぶれるので火を通す時間も短くなり時短にもなります。毎日買い物に行かなくても良いということに気付く機会でもありますよね。
今まで当たり前だったことは実は奇跡の連続でありがたいことだったんです。それを家族や周りの方々と考え直す良い機会なのかなとも思います。
大地震が発生しても、家中のモノが散乱しないコツ
――百聞は一見に如かず、まずはこちらの画像をご覧いただきたい。こちらは震度6を記録した2018年の大阪北部地震直後の辻さんの自宅のキッチンと同じマンションの隣の住人のキッチンの比較写真だ。
辻家のキッチンは調味料が4本しか倒れなかったが、隣家はキッチンだけでなく物が散乱。玄関からは入れなくなってしまったので窓ガラスを割って入り、倒れてきたモノに埋もれていたおばあさんを助けに向かったという。
震災への備えがあるとないではこんなに違う。一目で分かるショッキングな写真は、我々に備えの大切さを伝えてくれる。
とはいえ、大きな家具転倒防止器具を設置するのは見た目に美しくなくストレスが溜まるし、お気に入りの物を飾らない生活は楽しくない。しかし、「防災と生活を楽しむは両立できる」と辻さんは言う。そこでおすすめなのが、生活を変えずに取り入れる “ プチプラ防災”だ。
100均グッズで実践!プチプラ防災をやってみた
――いつ来るか分からない災害に備えて、目に見えるかたちで家を防災仕様にしていることは、逆に心にストレスを与える場合もあるのではないでしょうか。
防災術に傾きすぎると生活しづらくなります。防災仕様の家というと、みなさん自衛隊の基地みたいなのをイメージされるらしいんですが、私の家はそうではありません(笑)。
動線を考える、そして生活に潤いを入れるのがポイントです。それがないと苦になって元に戻ってしまう。見た目を大きく変えずに「気が付いたら防災できていた」くらいが理想です。
――書籍を参考にフジテレビュー!!記者が自宅に“プチプラ防災”を施し、そのビフォーアフターを辻さんに見てもらい、コメントをもらった。
本棚にすべり止めシート
背の高い本棚に収納されている本が落ちてくると凶器になり得る。すべり止めシートを本の下に敷くとびくともせず、安心感が生まれた。ダークな色の本棚に合わせて違和感ないようにすべり止めシートも黒を選択。
「特にサイズは測らずに敷いてしまって大丈夫です。大まかに敷いて手前をちょっと折り返して高くするとより滑り落ちないし、カットしなくても良いので楽です」(辻さん)
転倒防止棒の代わりに箱
本棚の転倒防止については気にしつつも、この高さの家具転倒防止棒を棚と天井に施すのはちょっと…と思っていた。しかし、家にある箱と本などを隙間に詰めることで転倒防止棒の代わりになるという。天井までのスペースがかなり空いているので段ボールを積み重ね、微妙な隙間は本を挟んで調整した。
「天井との隙間を埋めることで、棚が倒れてくる率が変わってきます。上に積み上げる箱も段ボールのままだと圧迫感があるので、100均などで売っているリメイクシートを貼るのもおすすめです」(辻さん)
家具転倒防止板は家具の間に挟むのはNG
上下2段に分かれている棚を揺らしてみたら、上の棚に危険性を感じたので、間に転倒防止板を挟んで前に倒れてこないよう少し後ろに倒して壁に寄りかからせるようにしてみた。
「間に挟むのは余計に安定しないので危険です。分かれている家具の場合は、間にはすべり止めシートを挟むか、DIYが得意であれば家具の背中側でアルミの細長い板を上下がずれないように貼ってビスで止めるなどしてください。両方施すとより強度が増します」(辻さん)
落ちてきにくい皿の重ね方
下から大中小と積み重ねて並べがちな皿だが、実は中大小の順で重ねると揺れが相殺されるという。実践して揺らしてみると、確かに一番上の小皿の揺れも小さく、しかも高さがコンパクトにまとまった。
「実は皿自体が割れることよりも、落ちて割れた皿を片付ける時に心が折れがちです。皿がすべり落ちないように下にすべり止めシートを敷くとより安全です。食器は使用する人ごとに分けて取っ手の付いた収納ケースに入れておくと、管理も取り出しも便利ですよ」(辻さん)
モノも心も備えよう「想定外という言葉はもう聞きたくない」
――災害に備えて防災グッズや防災リュックを買うことはしますが、「安心を買っている」というだけになってしまっている気もします。
「防災リュックの中身を1回でも出したことがありますか?」と聞くと8割の人が「NO」です。「1回出してしまったら詰められないから嫌だ」という方が多いですね。 例えば「災害用携帯トイレ」が入っているけれど、使ったことがないという方が多数です。
必要なモノをどこでいつ使うのかを知らない方が多い。この本には被災した際のタイムラインも記してありますし、生き延びるために何をどうするのか、そしてその後の復興までのことについても書きました。
他人の被災は自分の被災だと思って備えてほしいです、「想定外だった」という言葉はもう聞きたくないです。災害を共有してイメージしてみてください。全て想定内でいてほしい。
「災害専門の防災グッズをたくさん買っていれば安心」と言う方もとても多くて。自分の日常が一般の方にとって知らない役に立つ知識なのであればそれをお伝えしたいなと思い、この本を出版しました。
皆、災害時には「助けてもらえるもの」と思いがちですが、助かる努力を自分でしないと命は助からないんです。厳しい意見だとは言われますが、レスキューや自衛隊や消防も、緊急具合によって優先順位があります。助けを待っているうちに何も備えていない人は当然死ぬ確率が高くなります。
けれど、何かしらの備えをしている人は生き残る確率が高くなる。それに、「助かった」そこからがスタートです。そこから生きていかないといけない。生き延びるために何を準備しておくべきなのかと、モノだけではなく知識と経験を備えることが重要だという意識改革をしたかったんです。
―― 「時間に追われていない時にこそ見えてくるものがある」と辻さんが語るように、新型コロナウイルスの混乱の中、家にいる時間が多くなっているからこそ、いざという時の備えについて見直す時間を持てる機会なかもしれない。
「プチプラ防災セミナー」を開催している辻さんの最新情報は
一般社団法人育母塾まで
【入賞】あるある…「更年期川柳」に共感の声続々 症状をテーマに詠むことで更年期に向き合うヒントも
2024年11月21日 |
15:16
広がる高齢者の働き方に密着 家電販売員や保育補助など「若く見られるのも働いているおかげ」
2024年11月20日 |
16:24
【激白】TKO木下に警察官名乗る電話「石川県警に出頭願えますか?」巧妙な特殊詐欺の一部始終…「俺、巻き込まれてるんだ…」
2024年11月19日 |
16:47
「熟年離婚しようという夫婦だったんだけど…」安藤和津 孫二人を預かって感じた夫・奥田瑛二の「信じられない」成長ぶりを告白
2024年11月19日 |
05:00
きょうから一気に冷え込み「冬将軍」到来 寒さはどこまで?天達気象予報士が解説
2024年11月18日 |
14:16
【警戒】インフルエンザが“最も早い流行”…熱がでない“隠れインフル”に要注意!感染症3つ同時流行で“トリプルデミック”も
2024年11月15日 |
14:53