赤ちゃん連れ旅行者に対する心遣いを欠かさない伝統ある温泉旅館、「紋屋旅舘」。新たなプラン「子育てrelax」誕生の裏側
私ども紋屋旅舘は、館山駅前で大正8年に創業以来、100年を越えて宿屋を営んでまいりました。南房総白浜へ進出した頃は団体旅館として隆盛しておりましたが、時代が変わり、だんだんと個人客が中心となって参りました。そんな中、ある日お部屋にご挨拶に伺った女将が戻ってくると、「赤ちゃん連れのお客様は大変だわ!」と声を上げました。その一言から、私どもの新たな歯車が動き始めました。これは紋屋旅舘における赤ちゃん連れのお客様に対する新プラン「子育てrelax」成立までのストーリーです。
お客様の声が創り上げた、赤ちゃん向け特別宿泊プラン
赤ちゃん連れのお客様は、一泊なのに海外旅行へでも行くのかと思えるような大きなカバンに、様々な赤ちゃん用グッズを携えお越しになります。旅先でのご心配やご不安を何とかして差し上げなければと、女将は思い立ちました。そこで赤ちゃん連れのお客様がお越しになると、ご不便な点やご要望をいろいろお聞きしました。他方、たまたま館主の知人が子育てサイトを運営していたので、お願いして赤ちゃん連れ旅行についてのご意見をサイト上のメーリングリストで募っていただきました。
こうして集めたご意見・ご要望をもとに作り上げた赤ちゃん旅行用宿泊プランは大変な反響を呼びました。いわば、女将がSEEDSを見つけ、インタビューやメーリングリストでNEEDSを抽出し、商品化してWANTSとなったのです。育児雑誌でのご紹介はもちろんのこと、新聞やTVの取材までありました。同じ社宅の方から勧められたとか、公園で会うママ友から紹介されたとか、中には、紋屋の館内で数十年ぶりに互いに赤ちゃん連れでお友達同士が遭遇、という出来事も何度かありました。今から二十数年前のお話です。
ビニール袋一つで紙おむつ処理への心配をなくす。紋屋旅舘の配慮
赤ちゃん連れのお客様用の宿泊プランというと、まず思い浮かぶのは粉ミルクや紙おむつだろうと思います。事実、それらが使い放題という赤ちゃんプランを販売しているお宿も最近では見かけますが、我が宿の赤ちゃんプランは、二十数年前から今に至るまで両方ともプランに付いていません。その代わりチェックイン時にビニール袋を一枚、一言添えて差し上げます。そうすると大抵のお客様は「ありがとうございます」と頭を下げられます。その一言とは、「こちらは使用済みの紙おむつを入れるビニール袋です。お部屋の隅にでも残していただければ、こちらで処分いたします」なのです。
粉ミルクや紙おむつは旅行の途中で使用するので、元々持参されています。メーカーやブランドはお母様が選ばれたものが最適でしょう。もしかしたら意に沿わない品を差し上げても、「まっ、いいか」程度かも知れません。しかしながら、お客様のご不便ご心配を汲んで差し上げると、たとえビニール袋一枚であっても感謝されるのです。
日本料理一筋のプロが作る、赤ちゃんも喜ぶ特製離乳食
赤ちゃんプランでは、離乳食を調理部に作成してもらうまでが大変でした。女将が調理部に相談に行くと調理長は、「調理師に離乳食を作らせるなんて何を考えているんだ!」「離乳食なんて作ったことも習ったこともない!」というような反応だったそうです。日本料理一筋で来た調理長からすれば、当然だったでしょう。(ちなみに先日、彼は勤続30年超で全国商工会連合会から表彰されました)
旅行先でご両親はその宿の料理を楽しめるけれど、一緒に来た赤ちゃんは両親が持参した携帯用の離乳食を食べるというのは忍びないと女将は思っていました。そんなある日、子育てサイトを運営する知人から保育園の食事メニューをもらいました。それを見ると、調理師が普段作っているような品があり、そのメニューをもって女将は調理部に再度説得しに行ったのです。そのメニューにある離乳食は、出来ない訳ではない料理なので、調理長は渋々ではありましたが承諾し、離乳食の提供が可能となりました。和食のプロがしっかり出汁を取って作った離乳食ですから、普段よりも多く食べたという声が続出。中には「出汁を売って下さい」とまでおっしゃるお客様も現れたのです。
赤ちゃん連れのお客様の心を癒す、紋屋旅館の産後ケア
そんな様々なエピソードを経て、旅行デビュープランやファーストバースデープラン、三世代旅行プラン、ちょっとリッチなグルメプランなど赤ちゃんプランもいろいろ増えていきました。ご来泊のお客様の60%以上が赤ちゃん連れのお客様となったころ、年に数組ですが、気になるお客様をお見掛けするようになりました。
そのお客様方は、お子様に対してご滞在中ずっと表情がなかったり、些細なことでご主人に対して怒りずっと泣き叫んでいたり、「それは考えすぎでしょう」と思わず申し上げたくなるようなお叱りをいただいたり、おそらく普段とは違う心の状態だったのではないでしょうか。
赤ちゃんプランでお越しのお客様の大多数は、ご宿泊を楽しんでいただきお帰りいただいております。しかしながら、一部には心の鎧が脱げず心が固まったままの方もいらっしゃる。もちろん、私どもは何もすることは出来ませんので、ただただお見守りするばかりでした。「産後うつ」という言葉が頭をよぎった時、ネットで検索して行き着いたサイトで、産後うつは何度かの山があることを知りました。
実は、産後うつが最も大きい数値となるのは7~9か月なのだそうです。調べてみると、女優の竹内結子さんの悲劇も第二子出産後8か月目に起こっていました。心の病気はなかなか周りには理解されなかったり、自分でも気が付かなかったりして、知らず知らずのうちに大きなストレスをためていることがあるのです。TVドラマの「コウノドリ」で産後うつのエピソードが放映されたときには、いたたまれず夫婦して涙していました。
そんなお客様に対しては、旅の宿は無力です。いや、それ以前に心を病んだ方は旅行には出掛けないかもしれません。せめてそうなる前に、子育てから少しでもrelaxしていただけないか、旅の宿がそのお力になれないか.....。
そんなことを考えていたある日、産後ケアホテルの存在を知りました。日本ではそれほど一般的ではないものの、韓国ではポピュラーな施設だそうです。確かに出産後、実家でサポートを受けながらしばらく静養できれば育児も頑張れるでしょう。それが叶わないご家庭事情であれば、産後ケアホテルはとても助かる存在ですが、夜間に赤ちゃんを預かるなど、温泉旅館の対応できる範疇ではありません。ほとんど病院に近い施設です。
ただ温泉旅館が出産直後の産後ケアは出来なくとも、家庭に戻られた後の3~4か月目や7~9か月目の産後うつ防止のケアは、もしかしたら旅の宿がお力添えできるのではないか。そう感じました。それは、初めての育児に気持ちがふさぎ込んでいた奥様から、『1泊の旅行でとても癒され、明日への子育てに勇気をもらい、背中を押してくださったように感じました。夢のような一日でした。ほんとうにありがとうございました』と感謝のメッセージをいただき、その意を強く持ったのです。
お母さまのためのオーダーメイドプラン「子育てrelax」
そこで既知を得たベビーシッターさんにお願いして、シッターさんのお客様に私どもの考えているプランについてのアンケートに答えていただきました。またお母さまが育児相談できる専門家を探してもらいながら、直接お目にかかってお話を聞いたり、私どもの施設を見ていただいたりして、コミュニケーションを深めました。
うつ状態の時には、うまくいかないことが気になったり、自分のせいだとネガティブに考えてしまいがちです。産後うつ・育児ストレスをケアするプラン「子育てrelax」では、専門家とのカウンセリングはオプションとしましたが、誰かに気持ちを聞いてもらうだけで、少し楽になります。同じようにみんなが悩んでいることがわかったり、子どもの反応を見ながら自分のペースでやっていけばいいと気づけたりすると、気持ちが軽くなり少し見え方が変わるはずです。
他方、ある企業の方にお願いして子育て中や産後仕事に復帰したばかりの方に聞いていただいたところ、専門家によるカウンセリングについては歓迎論も不要論もありました。お置かれている状況やご自身の精神状態によって、要望事項に個人差が多いこともわかりました。
カウンセリングが必要でない方は、プロのベビーシッターにお子様を預けて、日ごろの睡眠不足解消のためにひたすら眠るのも良いでしょうし、恋人時代を思い出してご主人と二人っきりでおしゃれなランチに出かけるのも良いでしょう。それぞれのお母さまが子育てからひと時離れて、それぞれのお考えでご自身を見つめなおすことができれば、親子ともども笑って過ごせる生活が取り戻せるのではないか。
そんなお手伝いができる宿でありたいと思っております。
【会社概要】
企業名 :株式会社紋屋旅舘
宿 名 : 季粋の宿 紋屋
所在地 : 千葉県南房総市白浜町白浜232
代表者 : 代表取締役社長 高尾貴行 ( 憲資 )
創 業 : 1919年5月
TEL : 0470-38-3151
URL : https://www.monya.co.jp
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ
葬儀業界に特化したブランドマーケティング会社が、なぜ「黄色い旗」を振るのか?
2025年01月31日 |
11:50
社内イベント「AI Summer Fes」開催!生成AIで業務効率化や新しいはたらき方にチャレンジ
2025年01月31日 |
11:00
「忙しい毎日に、心のつながりを」デベロッパーとスタートアップ企業が挑んだ、家族の絆を深めるスマートホーム開発の裏側。
2025年01月30日 |
14:00
【新しい発想】「寄り添いなさい、耳を傾けなさい。」助産師として、こうありたいを追求したら、「会社にいる助産師」の発想へ。子育てしやすく、働きやすい会社へ助産師がお手伝いします。
2025年01月30日 |
11:17
“働き方”で業界をリードするIT企業が社員に手厚い研修と充実の支援体制。個々に裁量権が与えられ、新しい業務にもチャレンジできる理想的な働き方で、日々成長を実感する若手社員の実像に密着
2025年01月30日 |
09:30
「現場監督が天職です」。出産を経て、育児をしながら「現場」に貢献する道を切り拓く女性社員の挑戦
2025年01月28日 |
10:00