伝統工芸のモダニズム。秋田銀線細工×ファッションで伝統工芸に新しいもう一つの火を灯したい「TOUROU」誕生秘話。
秋田銀線細工という伝統工芸品をご存知でしょうか。秋田市の無形文化財にも指定されている工芸技術の「秋田銀線細工」は、わずか0.2mmほどの銀線で作り出される繊細な伝統的工芸品である。江戸時代から続く歴史ある伝統工芸技術でありながら、現在、その職人の数は減少の一途を辿っています。
2022年12月にスタートしたTOUROU(トーロウ)は、秋田銀線細工を残していきたいと秋田出身の女性が立ち上げたプロジェクトブランド。伝統的な技法を大切にしながら、伝統と現代の融合を目指し、新たな魅力を引き出した秋田銀線細工のジュエリーコレクションを展開しています。
<秋田市の無形文化財にも指定されている工芸技術の「秋田銀線細工」で製作されたジュエリーコレクションを展開するブランドTOUROU-トーロウ>
このストーリーでは、TOUROU代表 小川晴香にブランド誕生秘話と立ち上げた思いを聞いています。
コロナ禍で知った地元秋田の伝統工芸の危機と、ブランド立ち上げへの思い
TOUROUブランドを立ち上げたきっかけは、コロナ禍の時に見かけた秋田銀線細工職人が減っているというメディア記事でした。私は、秋田で生まれ育ち、大学進学と同時に秋田を離れました。秋田銀線細工は、小さい頃から知っていましたが、そこまで身近ではなく、良くも悪くも地元の工芸品、というだけの認識でした。ですが、秋田銀線細工職人の数が減っているという記事を見かけた時、自分が思っていた以上にショックを受けました。想像以上にショックを受けた理由は、秋田銀線細工は素晴らしい職人技でできていると知っていたからだと思います。こんなに美しい日本の技術をなくしちゃいけない、直感的にそう思いました。
<TOUROU 代表 / デザイナーの小川晴香>
私は、普段はフリーランスで企業やブランドのイメージビジュアル制作/広報/PRなどを手がけています。そのため、初めはただ単純に秋田銀線細工業界全体のPR活動をしたらどうかと考えました。ですが、当時はPRや宣伝をしたとしても気軽に買えるオンラインストアなどがほとんど見当たりませんでした。また、工芸品としてPRするのはきっとすでに自治体などで行なっているだろうと思いました。
秋田銀線細工は、銀線を使用して様々な製品を作っている伝統工芸品で、主な製品はブローチやネックレス、リングなどの装飾品です。私の得意分野はファッションやライフスタイル関連の仕事だったので、ジュエリー商材なら、ファッションとして世の中に広げていくのはどうだろうか、そしてそれなら私のこれまでの経験を活かせるかもしれないと考えました。工芸品としてはもちろんだけれど、純粋にファッションとしても日頃からつけられるものを制作し、その商品を通して秋田銀線細工や秋田のことを知ってもらえないかと考えました。
百貨店の工芸品コーナーだけに置かれるものではなく、ジュエリーコーナーにも置いてもらえたり、ファッション雑誌に掲載されるような製品。日本の素晴らしい技術を使った工芸品でありながら、身近に置いておけるような現代の生活にも合うブランド自体を立ち上げられたら、もう一つの新しい銀線細工の世界ができるのではないかと思いました。
<TOUROUの秋田銀線細工ジュエリーコレクション>
そしてこのことを思い立った時、実はとてもワクワクしました。30代になった頃からずっと、地元に何か役に立つことをしたいと思っていました。ですが、私が地元に貢献できることって何かあるのだろうか、と心のどこかでずっと探している感覚がありました。今までの経験を活かして地元の工芸品を盛り上げていくことができるのなら、こんなにやりがいのあることはないかもしれないと感じたのです。
秋田銀線細工職人さんとの出会いと、ジュエリーブランドTOUROUの立ち上げ
全て自己負担でブランドを立ち上げる決意をしました。今思うとすごい決断だなという感じですが、その時は「やりたい!」という気持ちが先行して、ワクワクした気持ちが強く、何の疑問も持たずに突っ走っていた感じがあります。そして、いよいよ職人さんを説得する段階に入りました。工房を調べて片っ端から直接連絡を取っていきました。これがとても難航しました。その理由は明白でした。なぜなら、突然すぎる連絡の上に、私の肩書きは一見すると相当怪しいと思うからです。「秋田出身で現在は関東に住んでいてフリーランスで仕事をしています」この肩書きって地元の職人さんからしたら、「一体何者なんだ」って感じです。笑
そんな中、秋田県横手市に工房を構える秋田銀線細工職人 佐藤さん(房工房)に出会いました。佐藤さんの作品は秋田銀線細工の中でもとにかく細かく美しい。私は佐藤さんの作る秋田銀線細工に一気に魅了され、すぐに佐藤さんへ相談しました。佐藤さんは興味を示してくれ、「面白そうだからやってみましょう」と快く引き受けてくれました。ここから職人佐藤さんとの二人三脚が始まりました。
<秋田銀線細工職人佐藤さんの作業風景。わずか0.2mmほどの銀線で模様を作っていく、とても細かい作業。>
<銀線で作られた模様を組み合わせて一つの作品を作っていく。ほとんどの工程が手作業で行われる緻密で繊細な職人技。>
私の思い描くデザイン案を職人の佐藤さんに伝え、制作していただきました。ですが、今までにないような新しいものを作りたかったので試行錯誤の日々が続きました。そうして、構想から約2年の歳月を経てブランドはようやくスタートしました。私の思いを汲み取ってくれて、たくさんのアドバイスをいただきながら、寄り添って一つ一つ丁寧に制作してくれた佐藤さんには感謝しかありません。
TOUORUに込めた思いとブランドの展開
TOUROU(トーロウ)の名前の由来は、古くより日本に火を灯してきた ’灯籠 (トウロウ)’ からきています。日本のものづくりに受け継がれてきた伝統を守り、「もう一つの新しい火を灯したい」そんな思いが込められています。伝統的なデザインや技術は活かしつつ、現代のファッションに合うものや身に着けやすいアイテムを展開しています。また、残していきたい日本の美しいものや自然をモチーフにしています。
<三日月の1日前に現れる二日月をイメージしてデザインされたネックレス / crescent moon - necklace ¥55,000>
<伝統的な唐草模様を贅沢に施したリング。日常でも付けやすい細みのタイプと、伝統的な唐草模様を存分に楽しめる存在感のあるリング / 右から standard - ring ¥35,200、thin - ring ¥33,000>
<日本の美しいものである扇をデザイン/ sense - ring ¥58,300>
<秋田のお米「秋田こまち」の丸いふっくらとしたお米をイメージ / rice - ring
¥52,800、rice - pierce ¥44,000>
<日常につけやすいイヤーカフやフープピアス / terra - ear cuff
¥16,500、standard - foop pierce ¥38,500>
また、全国どこからでも購入できるようオンラインストアも立ち上げました。まだ伝統工芸に興味のないお客様層にも届くように、一見すると、伝統工芸とは思えないようなファッション感のあるビジュアル制作をしたり、メディアやSNSの発信などにも力を入れました。
<TOUTOUイメージビジュアルより>
<TOUTOUイメージビジュアルより>
職人の労働環境や自然を守り、未来に続いていく工芸品になるように
秋田銀線細工は、とても繊細で緻密な職人技を要する工芸品です。職人として一人前になるまでに10年以上かかると言われています。秋田銀線細工を残していきたいという思いで立ち上げたブランドなので、職人さんを守るということも大事なことだと思っています。そのため、TOUROUは、オーダーを受けてから制作に入る「完全受注生産」です。必要以上の生産はせず、職人さんに無理をさせないような生産スタイルにしています。廃棄を出さないという意味でも、手作業で丁寧に1つ1つ作られた工芸品をしっかり守っていきたいと思っています。お客様にはオーダーから2〜3ヶ月の間、待っていただくことになります。今の時代の流れなのか、しっかりと理解をしてくださる方も多く、今まで生産期間に関するクレームはいただいたことがありません。
ものづくりをする上で、日本の美しい自然に負荷をかけたくないという考えから、環境問題にも配慮していきたいと考えています。受注生産による余分な廃棄物の削減、製品パッケージや配送の梱包材などもできるだけ簡易的にしています。また、消耗品ではなく、一生大切にできるようなものを皆様へ届けたいと思っています。ずっと大切にしていただく取り組みとして、お客様のご要望などに合わせての簡単なカスタマイズや修理、お磨きの受け付け、購入後にピアスをブローチへなどアイテムのカスタムチェンジも可能です。
そして、ブランドを通してより多くの人に秋田銀線細工を知ってもらったり、面白い取り組みをしているな、と思ってもらえたら、後継者に手を挙げてくれる人が出てきてくれるかもしれないと思っています。まだまだブランドが軌道に乗っているわけではないので、今はそれを一つの目標にして頑張っています。
これからの展望
TOUROUをスタートして、秋田銀線細工は全国区ではあまり知られていないという現実を目の当たりにしました。特に、若い世代や伝統工芸に興味のない人たちにはほとんど知られていませんでした。もしかしたら全国には地元では広く知られているけれど、全国的にはあまり知られていないような素晴らしい伝統工芸品があるのかもしれないと感じています。
秋田銀線細工を広めるミッションは継続しつつ、TOUROUを通じて日本の美しいものを守る活動ができたら良いなと思っています。まだまだスタートしたばかりのTOUROU、これからトライアンドエラーの精神で様々なことにチャレンジしていきながら、日本の美しいものづくりを守っていくお手伝いができるよう頑張っていきたいです。
TOUROU (トーロウ)
公式HP:https://tourou-japan.com/
公式オンラインストア: https://tourou-japan.com/collections/allhttps://tourou-japan.com/
公式instagram : tourou_japan (https://www.instagram.com/tourou_japan)
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