俳優・アーティストとして唯一無二の輝きを放つ崎山つばさが14ヵ月ぶりにリリースする「latte」は、初のミニアルバム形態。過去に発表した「Salvia」や「桜時雨」「幻想人」など、ファンにとってはおなじみの曲に加え、新曲3曲を含めた全6曲を収録している。

アルバムに込めた思いや制作秘話、そして、念願だったという場所でのMV撮影や久しぶりのライブなど、アーティスト・崎山の“今”を語ってもらった。

ついにFの壁を突破!しかし、その壁の奥にはまた新たな壁が…

――久しぶりの音源リリースですが、どんなアルバムに仕上がりましたか?

タイトルである「latte」のように、ダークで苦々しい部分と、甘いミルクのようなやさしい雰囲気の曲が詰まっていて、このアルバムを聴くことが皆さんにとってコーヒータイムのような、リラックスできる時間になればいいなという思いで制作しました。

――「latte」というタイトルとコンセプトはどのように決まったのでしょうか?

まず曲をいくつかいただいて、その前奏を聴いた時に「こういう曲にしたい」とか「この曲はもうちょっと柔らかくしたい」など、自分の中で思い描いたものがあったんです。気がついたらいろんなジャンルの曲が集まっていて、その曲たちが合わさることでアルバムとして完成する=ラテみたいだなと思い、タイトルが決まりました。ほぼ直感でしたね。

――リード曲「叫べ」はかなり激しいナンバーですね。

僕の中に怒りの感情というのは基本的にあまりないんですけど、現代社会にはびこる問題やストレスなどの攻撃的な部分を提示しつつ、かつ、背中を押せるような曲になったらいいなと、思い浮かんだ言葉をバーッと書き連ねてできた曲なんです。途中、ちょっと激し過ぎるんじゃないかという不安もありましたが、出来上がったものを改めて聴いてみたら、すごく新鮮なテイストになりました。

――普段の崎山さんからは攻撃的な部分がまったく感じられないのですが…?

そういうところも開拓していきたい!という思いがどこかにあったんでしょうね(笑)。

――新たな事務所に所属したことで環境も変わり、新天地での変化を望んでたと?

それもあったかもしれません。

――サビの「叫べ!叫べ!」というフレーズがかなり印象的ですが、どういう思いで書いたのですか?

皆さんに共感してもらえるかどうかわからないですけど、日々のストレスや鬱憤(うっぷん)などを晴らし、すっきりしてもらいたいなと思いますし、カラオケなど自由に行けるようになったら、大声で叫びながら歌ってほしいですね。

――そして、MVでは初めてアコースティックギターの演奏を披露していますね。以前、お話をうかがった時に、ギターを練習しているということでしたが

昨年の自粛期間もずっとギターに触れていて、今でも時間があると極力触れるよう意識しているんです。ようやくF(コード)の壁を突破したんですよ。

高い壁でした(苦笑)。小中学生の時もギターを始めようとしてFでつまずいてしまったので、そこを突破できたことは大きかったです。でも、実はFよりBのほうがキツイんですよ。壁の奥には、またさらなる壁がありました。でも、その壁を突破することが逆に楽しかったりするんですけどね。

念願だった上色見熊野座神社でのMV撮影で「生命を実感」

――アルバムのジャケットのほか、「叫べ」のMVを撮った熊本は崎山さんご自身のリクエストだったとか?

僕は神社好きで普段からいろいろ訪ねているんですが、いつか行ってみたいと考えていたのが熊本の上色見熊野座(かみしきみくまのいます)神社で。実際に行けるかどうかわからなかったんですけど、スタッフさんに提案してみたところOKが出て、撮影できることになりました。

――実際行ってみていかがでしたか?

僕はテーマパークへ行くよりも神社のほうが好きなので、テンションが上がりましたね。「ついに来たんだ」という感動でいっぱいでした。阿蘇の山の方なので空気もきれいだし、奥まで続く階段の両サイドには石灯篭が並んでいて、非現実的。マイカメラで写真を撮りまくりました。それはずっと見たかった景色で、視覚はもちろん、五感すべてでキャッチしました。

MVは朝6、7時ぐらいに撮影したので、朝陽が昇る光景を眺めながら、生命や血が流れていることを実感しました。

――上色見熊野座神社には、パワースポットがあるそうですね?

鳥居からさらに登ったところに穿戸岩(うげといわ)という岩があります。険しい山道なので、本殿でお参りをして帰る人が多いのですが、行ったからには絶対に岩まで行きたかったので、木の枝を杖代わりにして登りきりました。岩の中央には大きな穴が空いていて、霊気みたいなものを感じました。

仕事で来たとはいえ、来られてよかったと心から思えたし、来るべくしてたどり着いた場所だったのかなと。そんな不思議な気持ちになりました。

――神社だけでなく、熊本の街を堪能する時間はありましたか?

熊本駅のすぐ近くに「湯ラックス」という天然温泉があって、そこも行ってみたい場所だったので「湯ラックス」込みで最高の旅となりました。

食事は馬刺しはもちろん、馬の焼肉を初めて食べました。絶品です。ホルモンはラムみたいな独特の風味があるんですけど、クセになりそうなぐらいおいしくて、パクパク食べちゃいました。低カロリーで高タンパクなので、絶好の筋肉メシだと思います。 

――今回はロケ地に上色見熊野座神社をセレクトしましたが、今後行ってみたい神社はありますか?

いっぱいあります!「天孫降臨」という神話がある宮崎県の高千穂神社も行ってみたいし、長野県の戸隠神社や新潟県の白山比咩神社にも行ってみたい。挙げだしたらきりがないです(笑)。

三合会局といって、伊勢神宮〜白山比咩神社〜箱根神社の順番に行くと奇跡が起きると言われている回り方があって、それをいつか実現したいと思っています。

父が書いた「story」という曲には母への想いが

――他の新曲についても聞かせてください。

変なこだわりみたいになっちゃっていますが(笑)、アルバムには父が作った曲を必ず収録しています。「story」は70、80年代の恋愛模様をテーマにしたもので、もともと父が書いた歌詞があったんですけど、昔の雰囲気も残しつつ、自分なりに現代風にアレンジしました。「サイドシートに残るムラサキの香り」というフレーズがあって、この「ムラサキ」というのは資生堂の香水の名称だそうで、時代を感じられていいなと思い、父の歌詞をそのまま残しました。

――歌詞を書くにあたって、お父様と話し合いましたか?

父の曲の歌詞を僕が手がける作業が初めてだったので、曲を書いた背景にはどういうことがあったのか、特にこだわったのはどんな部分だったのかなど質問攻めにしました。

――その中で新たな発見は?

「向日葵のような」というフレーズがあって、どうやら向日葵というのは母のことらしいんですよ。それを聞いてちょっと気恥ずかしくなりましたけど(笑)、そんなふうに母親のことを想っていたんだと考えたら、感慨深いものがありましたね。

――実は崎山家の“story”でもあったということですね?

その向日葵を僕は時計に例えて表現したので、父の意図とは変わってしまったかもしれませんが、曲を聴いた父がどう反応するのか楽しみです。

――そしてもう1曲の新曲「春始笑」ですが、何と読むのでしょうか?

「はる、はじめて、さく」と読みます。これは過去にリリースした「キンモクセイ」や「ふるさと」「frost flower」などを提供してくださった音楽ユニット・vagueのYuさんによる曲なんですけど、僕はYuさんの曲の1ファンでもあって、毎回本当に素敵な曲を書いてくださるんです。

でも、Yuさんの曲にまだ自分の言葉をのせた経験がなく、いつか実現させたいと思っていたところYuさんが快諾してくださって、歌詞を書くことになりました。提供してもらった4曲はどれも素敵で、1曲だけ選ぶなんてできないとすごく迷ったんですが、その中からピアノの音に惹かれたのがこの「春始笑」でした。リリースが春なので季節を感じられるものにしたくて、さらに社会情勢も鑑みて、「大切な人に会いたいけど会えない」ということをテーマに歌詞を書き上げました。

――そして、アルバムの楽曲を引っ提げてのライブが行われるのですよね?

ライブは2019年の2nd以来なので、約1年半ぶりになります。会場がBillboad Live東京というのは、いまだにドッキリなんじゃないかと思っています(笑)。写真で見た時に「うわっ、大人」と感じたので、会場の雰囲気に合った大人っぽいライブになればいいなと。

――コロナ禍での音楽活動について考えることはありましたか?

「春始笑」の歌詞にも書いたんですが、それまで当たり前だったことが当たり前じゃなくなり、愚痴をこぼしたり、イヤになったりしてしまうことも皆、たくさんあったと思うんです。でも、リリースイベントやライブで目にした景色は僕自身ずっと覚えているし、それが光となってくれた瞬間もあった。今度のライブもいつかは過去になってしまいますが、それもいい過去になってくれたらいいなって。未来の一つ一つのことが、一人一人にとって光となるような音楽活動をしていきたいと改めて思いました。

――アルバムのタイトルは「latte」ですが、崎山さんを飲みものに例えると…?

それはもうカレーしかないでしょう(笑)。飲みものとしてカレーはすごくいい効果を発揮しますし、ちょうど僕がプロデュースした崎山ツバサの「純喫茶ビーフカレー」というものを通販でも販売しておりますので、食べてもよし、飲んでもよし、ぜひご活用ください(笑)。

――ファンの皆さんへメッセージをお願いします。

日々、生活している中で苦い思いをしたり、イヤなことが起きたりすることもあるかと思いますが、少しでもやさしい時間になることを願って、このアルバムを制作しました。ぜひ、多くの方に味わっていただけたらと思います。

そして、ゴールデンウイークのライブも、素敵なコーヒータイムのようにゆったりとした心落ち着く空間にしたいと思っておりますので、楽しみにいらしてください。

「崎山つばさ Billboad Live~latte~」

4月29日(木・祝)Billboad Live大阪

5月2日(日・祝)Billboad Live東京

5月14日(金)Billboad Live横浜(*追加公演)

崎山つばさOFFICIAL SITE

撮影:河井彩美