「カルダー氏の作品は静かだがパワフル」
モビールは「動き」と「動機」という二重の意味を持つフランス語が語源。美術家で友人のマルセル・デュシャンさんがカルダーさんの作品を表現するために付けた名称で、動力は一切使わず、あくまで自然に動くアートを指します。
佐久間アナが「壁に映し出されている影とセットでアートになってますね」と感動したのが、天井から吊られたモビールの赤いパーツがゆらゆらすると、白い壁にその影がゆらゆらと映る光景。とても軽やかです。
一方で、カルダーさんは、公の場に設置する“動かない”大きな野外彫刻も多く手がけました。彫刻とアートは一部の限られた人に所有されるためのものでなく、すべての人のため、コミュニティのため、という信念からです。
ロウワーさんの「カルダー氏の作品は静かだがパワフルだ」という言葉に大きくうなずく立派な作品ばかりです。
また、この展覧会では、彫刻以外のカルダーさんの作品にも注目です。学生時代にニューヨークの動物園を訪れ描いた動物のスケッチは、日本の墨絵からヒントを得たもの。動物の背中の丸みが、彼が後に作ることになるモビールの針金のたゆみに通じているものがあるそうです。
「My Shop」という油彩画はカルダーさんのアトリエの様子を描いていて、画中に登場する作品で今回展示されているものもあるので、チェックしてみるのもいいでしょう。
このように、この展覧会では、実にバラエティに富んだカルダーさんの作品に触れることができます。ちなみに筆者はピート・モンドリアンさんから影響を受けた色使いの作品に心ひかれました。
佐久間アナは「一つ一つの作品もすてきなのですが、作品同士がお互いに影響しあっていて、展覧会そのものがアート作品のような、全体で楽しめる展覧会でした。モビールというユニークな作品の特性がなせる技ですね」と印象を語っていました。
ロウワーさんは「この展覧会は一周したら最初に戻れるようになっていて、無限にまわってもらえる。何周もして、新たな発見をしてほしい」と話していました。
“無限大”仲間として、Tokyo Art Vibes∞も、ループ鑑賞したくなりました。
text by=Eiko Katsukawa
All works by Alexander Calder C 2024 Calder Foundation, New York / Artists Rights Society(ARS), New York