サカナクションを身近で支えてきたレーベルの宣伝担当者は、バンドの強みと山口一郎さんという才能をどう感じているのでしょうか?

多彩な要素を融合させた独自のサウンドで、日本の音楽シーンに新たな潮流を生み出してきたサカナクション。楽曲制作からライブ演出、映像表現に至るまで常に先鋭的な挑戦を続けるだけでなく、フロントマンの山口さんによる積極的な発信活動もつねに話題を集めます。

最近では『怪獣』(2025年)のヒットに加え、約14年前の楽曲『夜の踊り子』(2012年)のショート動画がバズり、世界的なバイラルヒットを生み出して各チャートを席巻しています。

めざましmediaでは、ビクターエンタテインメントでA&R宣伝部長を務め、2009年から一貫してサカナクションのプロモーションを担当する、山上聡さんにインタビュー。

バンドの存続すら危ぶまれた時期を乗り越え、楽曲『怪獣』で再び脚光を浴びるまで。山口さんとの阿吽(あうん)の呼吸、「NF」という概念への共鳴――バンドの最も近くにいる伴走者が、サカナクションの本質と現在地を語りました。

サカナクションを支えるA&R・山上聡「余計なことをしゃべるのではないかとヒヤヒヤ」山口一郎の配信に思うこと

――『夜の踊り子』(2012年)が使用されたショート動画がバズり、世界的バイラルヒットにつながりました。そういった新しい音楽の聴かれ方が広がる中で、山上さんがA&Rの立場から山口さんにアドバイスをすることはありますか?

山口の場合は、自分がやりたいことをやっていくという感じなので、それをアシスト・サポートするのが自分の役割だと思っています。ただ、ギアを入れすぎているときや、表現の仕方について「こういう伝え方のほうが確実に届くのではないか」「誰かを傷つけることにならないか」といった話はよくします。積極的に攻めていく分、後から反省も出てくる。そこをうまく整えていくのが難しいと感じています。

――山口さんは、バンド活動と並行してXやInstagramといったSNSをはじめ、YouTubeチャンネル『山口一郎』での定期的な配信など、積極的な発信を行っています。山上さんは配信の場にも立ち会うのでしょうか?

山口のひとりしゃべりの配信は、本当に自由にやっていて、ほぼ誰も立ち会っていないんです。ただ、パフォーマンスや特別なコンテンツ、たとえば音源を流しながら本人が歌唱して解説するといった技術的なことが必要な場面では、8割方は立ち会っています。

立ち会えないときは、スタッフに見てもらい、何かあればリモートで対応しています。夜から始める山口のひとりしゃべりの配信は、正直なところリアルタイムではほぼ見ていません。余計なことをしゃべるのではないかとヒヤヒヤして、気持ちが休まらないから(笑)。翌日に知人や関係者から「こんなこと喋っていましたよ」と聞くのが、今やルーティンになっています。

スタッフには予告なしで自由気ままにYouTube配信をしているので、山口本人から夜に電話がかかってくるときも緊急連絡かと思いすぐに受けてしまいます。一郎君の声のトーンで「しまった!生配信トーク電話だった!(笑)」と気づいたときは後の祭り(笑)。息子に勉強を教えている最中にかかってきたこともありましたね。

サカナクションを支えるビクターエンタテインメントのA&R宣伝部長・山上聡

――『夜の踊り子』のミームとなったダンスを『MUSIC AWARDS JAPAN 2026』の舞台裏でM!LKと踊ったショート動画も話題となりました。山上さんは、ああいった絡みのディレクションもするのでしょうか。

あれ以前に、M!LKが『夜の踊り子』ダンスの動画を撮ってくれたら、山口が「滅!」(M!LKの楽曲『好きすぎて滅!』)をする、という流れがあったんです。「どこかでちゃんとコミュニケーションが取れたらいいね」と山口と話していたら、ちょうどM!LKのほうから、『MUSIC AWARDS JAPAN 2026』で声をかけてくれて、コラボ動画撮影につながりました。彼らは同じレコード会社の所属でもあるので、山口もコラボについて話しやすかったんでしょうね。

「こういうふうにコミュニケーションを取ったほうがいい」という話はよくしますが、山口の感覚は研ぎ澄まされているので、基本的にはほぼお任せしているのが実情です。