<デビュー作「草迷宮」の思い出>
当時の僕は、今よりずっと大人でしたね。この1本の映画に出た後は、何ごともなかったかのように普通の生活に戻るつもりでしたから。「お金の稼げない役者なんかやるより、一流企業で働いたほうがいい!」なんて、すごいことをいっぱい考えていました。
でも、学校生活を送っていると、胸のあたりに隙間風が吹いてくるんですよ。「なんだろう、これ」と思ったら、「あの“お祭り”に、もう1回参加したいな」という気持ちでした。自分のロジックとはまったく別の感情でした。それからは、用もないのに気がついたら稽古場にいましたね。
今から思えば、いい大人が集まって真剣にものを作っていることに、自分では気がつかないほどの刺激を感じていたんでしょうね。「何やってんの?この大人たち、バカじゃないの」と思っていたのに、それがだんだん愛おしくなってきて。こういう一生も悪くないなって、自分でレールを敷いた人生にケリをつけました。結果として、今のほうがよっぽど子供ですよ(笑)。
撮影:河井彩美
ヘアメイク:赤間賢次
スタイリング:勝見宜人(koa Hole inc.)
取材・文:狩野南
衣装協力:ジャケット、シャツ、パンツ(suzuki Takayuki/スズキ タカユキ)
寺山修司没後40年記念/紀伊國屋ホール開場60周年記念公演
三上博史 歌劇
―私さえも、私自身がつくり出した一片の物語の主人公にすぎない―
2024年1月9日(火)~14日(日)紀伊國屋ホール
*前売りチケット好評につき、アーカイブ配信決定。
最新情報は、公式サイトまで。