「自分の人生にこんな幸せが」オーディションで勝ち取った役
――本作の演出家、トム・モリスさんに憧れていたそうですが、出演が決まった際はどんな気持ちでしたか?
トムさんの舞台に出演するのは、私にとって夢のまた夢でした。大学生の頃に、ナショナル・シアター・ライブ(映画館での舞台上映)でトムさん演出の『ウォー・ホース 〜戦火の馬〜』を観て、「舞台ってこんなに変幻自在で自由なんだ」と衝撃を受けたんです。
それ以来「いつか自分もトムさんの舞台に立ってみたい」と憧れていて、まさか現実になるとは思いもしませんでした。
キャスティングはオーディションだったのですが、オーディションを受けられるだけでも光栄で。出演が決まったときは、自分の人生にこんな幸せが訪れるのかという喜びと、新しい扉が開いて次のステージに踏み出すような希望を感じました。
――稽古でトムさんの演出を受けて、いかがですか?
毎日いろいろな発見があって楽しいです。トムさんがイギリス公演の演出をされたときに、実際のジョーさんやサイモンさんに会って取材をされたということもあり、私たちも実話の背景を知りながら演じられるのが、とても面白いです。トムさんが取材で感じたことを直接聞くことができたので、物語への理解度が圧倒的に深まっている感覚があります。
また、トムさんは「稽古は実験の場だから、失敗して良い。たくさんの失敗のなかから出来上がっていく」ということを常におっしゃっています。そのおかげで、いろいろな角度から物語や役を捉えたりと、さまざまな挑戦をさせていただいています。
――ジョーは険しい雪山で、まさに生と死の淵に立ちます。壮絶な実話がもとになった本作に、どんな印象を持ちましたか?
すべてにおいて想像を超える物語だと思いました。自然の厳しさや壮大さ、それに対する人間の本能…マクロな視点とミクロな視点を一緒に掘り下げていくような、大きな物語だなと感じました。
危険を承知で山に登るというのは、きっと抗えない本能からくる情熱なのかもしれません。私は登山経験があまりないですし、死と隣り合わせになった経験もないですが、程度は違ってもその本能に共感できる部分がある気がしました。
――セーラは唯一、原作にはないキャラクターです。どのように演じたいですか?
登場人物のなかで唯一、登山のことを何も知らないどころか、登山に反感を持っています。なぜ危険を冒してまで山に登るのかという疑問や、登山に対する理解など、観客の皆さんもセーラを通してわかっていく部分があると思うので、しっかりリードしていきたいです。
また、セーラはトリッキーなキャラクターなので、その個性も表現したいなと思います。特にジョーと2人のシーンは、姉弟間ならではの皮肉や意地悪な部分も現れますが、それは根底に弟への愛情があるから。そういう、一言では語り尽くせない複雑さも表現できたらと思います。