伊藤沙莉さんが、映画『爆弾』での“演技合戦”について明かしました。
映画『爆弾』は、『このミステリーがすごい! 2023年版』(宝島社)『ミステリが読みたい 2023年版』(ハヤカワミステリマガジン2023年1月号)で堂々の1位を獲得した同名ベストセラー小説の映像化。
爆発を予知する謎の中年男と爆弾の在りかを探す警察が繰り広げる、先読み不能の謎解きゲームと、東京中を駆けめぐる爆弾探しがリアルタイムで進行。ミステリーと超ド級のアクションが織り成すエンターテイメント作品です。
「霊感が働く」と称して都内に仕掛けられた爆弾の存在を予告する謎の男・スズキタゴサクを佐藤二朗さん、タゴサクと真っ向から対峙する交渉人・類家を山田裕貴さんが演じ、伊藤沙莉さん、染谷将太さん、坂東龍汰さん、寛一郎さん、渡部篤郎さんといった、実力派キャストたちが集結します。
めざましmediaでは、爆弾捜索に奔走する交番勤務の巡査・倖田を演じる伊藤さんにインタビュー。作品の見どころや倖田を演じた思い、巡査長・矢吹を演じる坂東龍汰さんとのバディ関係について、そして撮影の舞台裏を聞きました。
伊藤沙莉「‟なんとなくの正解と正義“で生きている世の中で」
――まずは、原作を読んだ感想を教えてください。
会話劇が本当に面白い作品だと思いました。セリフの面白さもそうですが、何回もドキッとさせられる瞬間がありました。「自分が“悪”だと思っていることが、実は自分の中にもあるのではないか」と、問いかけられている気がしました。そこに対する好奇心と面白さでどんどん読み進みました。
――特に心に残った部分はありますか?
タゴサクからの刑事たちへの問いかけは、皆が見て見ぬふりしているところを掴んでくる感じがして、芯をついていると思いました。取り調べ中に、「爆弾ボタン」の話をするところがすごく好きです。類家に向かって「あなたは押しますか?」とたずねる場面で、類家がタゴサクから食らっている言葉ですが、私たちにも「自分だったらどうするのか?」と、自分の正義を問いかけてくる言葉でもあったので、心を掴まれました。
――坂東龍汰さん演じる矢吹とは、爆弾捜索に奔走するバディで、2人のテンポの良い掛け合いも見どころのひとつです。倖田と矢吹の関係性をどう捉えていましたか?
原作を読んだ時からすごく好きな2人でしたし、倖田を演じると決まった際には「早く演じたい!」と思っていました。掛け合いがとてもコミカルで、やりあうというよりも、お互いを知り尽くしている、すごくいい関係性だなと感じています。
――坂東さんとは、演技プランを話し合ったりもしましたか?
どうやったらお互いにやりやすいのか、「ここは動き的にこうしたほうがいいんじゃない?」とか、親身になって一生懸命考えてくれるので、私の疑問は坂東くんが解消してくれた部分もあります。本当に救われたので、矢吹が坂東くんでよかったと思いました。でも、坂東くんと考えたアドリブがことごとくカットされているので、「ふざけすぎたな」という反省点もあります(笑)。
――矢吹は刑事になることに野心を持つ熱い人物ですが、どんな印象を持ちましたか?
矢吹は本当にまっすぐで熱い男なので、応援したくなる人。でも、冷静さに欠けるところがあるので、倖田がサポートしている部分は大いにあると思います。倖田にとっては、やっぱり寄り添ってあげたくなる人なのだろうなと。
昇進して刑事になることに命をかけていることもあり、すごく目がキラキラしているんでしょうね(笑)。だから、暑苦しいけれど、倖田からはキュートに見えているのだと思います。
――倖田自身も矢吹に負けず、熱い人物に見えます。
もちろん熱さもあり、正義感も強いのですが、矢吹と組むことで「冷静でいなきゃ」と、なんとか自分をコントロールしているのかなと。ただ、その熱さをメインに演じたかというと、実はそこまでではなくて。倖田は「私たち一生こんなことさせられてんのかな」なんて、ぼやく時もあります。情熱や正義から発生した熱さはあっても、熱くなりすぎて“戻ってこられない人”ではない。とはいえ、冷静さに欠けた瞬間は「人間味があって面白い」と思って演じていました。
いつ自分の正義がひっくり返るか分からない、純粋で真っ直ぐだからこそ間違った方向に行ってしまいかねない、そんな危うさは誰にでもあると思います。それがありえない世界じゃないということを描くこの作品は、とても面白い問いかけをしてくるなと思います。ヒーローものって悪人がいるけれど、突き詰めると、どちらが本当の正義なのかはわからない。実は、‟なんとなくの正解と正義“で生きている世の中で、誰も正解を持っていないのではないか、そういう怖さを感じました。
演じた倖田とバディを組む矢吹の関係性、物語に潜む「正義」の考え方を語ってくれた伊藤さん。インタビュー後半では、圧巻の演技合戦について聞きました。
