『元彼の遺言状』第10話完全版
「十ヶ浜強盗殺人事件」の裁判員裁判が始まろうとしていた。
篠田敬太郎(大泉洋)こと田中守の無実を証明して絶対に裁判に勝つ、と意気込む剣持麗子(綾瀬はるか)。しかし、弁護側の大切な証人となるはずだった診療所の医師・高瀬(東根作寿英)が死体となって発見されたこともあり、状況は不利だった。
<ドラマ『元彼の遺言状』これまでのあらすじ完全版>
対するのは、公判部のエースだという主任検察官の三瀬義孝(八嶋智人)。三瀬たちは、証拠一覧に書ききれないほどの証拠品をそろえていた。
証言台に立った篠田は、無実を主張。一方、検察側は、凶器の包丁や、現金を抜き取られた被害者の財布など、篠田の指紋が検出された証拠品を提示する。
すると麗子は、物証の提示中にも関わらず席を立って意見を述べ、裁判官から注意を受けてしまう。
森川紗英(関水渚)とともに傍聴席で見守っていた麗子の元上司・津々井君彦(浅野和之)も、「裁判員の心証は最悪だ」と呆れていた。
証人尋問では、事件が起きたリストランテ「プロメッサ」のオーナー・藤巻純(遠山俊也)や出入りの酒店店主・瀬戸(金井勇太)が、被害者の実業家・小笠原仁美(田山涼成)と口論していた事件当日の篠田の様子などを証言した。
麗子は、「口論していたのは、被害者がタラバガニにマヨネーズを使ったことが許せなかったから」と反論。さらに、篠田が小笠原から借りたという金も、タクシー代830円だったと主張する。
事件前日、港に到着した篠田は、財布を落としてタクシーに乗れず困っていた人に金を貸した。が、それは篠田の全財産だった。篠田は、仕方なくそのままタクシーに乗り、プロメッサに到着後、小笠原から料金の830円を借りたというのだ。
そんな中、プロメッサ従業員の滝沢美月(成海璃子)が証言台に立つ。そこで美月は、篠田がすべての料理を出し終わった午後10時過ぎ、ワインを飲んでいたのは見たとしながらも、彼が酔い覚ましに外に出たところは見ていないと証言する。
それに対して麗子は、美月が事件前日に篠田からタクシー代金を借りた人物であることを明らかにし、「プロメッサで再会した彼に、なぜ金を返さなかったのか」と問いかけた。すると美月は、「返そうとしたが、受け取ってもらえなかった」と答えた。
麗子は、質問を変え、プロメッサが営業していることを伝えるために上げられる旗について切り出す。
この旗は、営業開始の午前11時に上げられ、営業終了の午後22時30分に下げられていたが、その上げ下げは、発案者だった老婦人ではなく、店に入りたてだった美月の役目だった。ただ、事件当日はパーティの受付業務をしていたため、旗を下げていないという美月。しかし篠田は、外で眠ってしまい、寒さで目を覚ましたときには旗が降りていたと証言していた。
さらに麗子は、篠田の「事件後、タクシーに乗って港に行き、連絡船に忍び込んで逃げた」という証言を美月にぶつける。金を持っていなかったため連絡船に忍び込むしかなかった篠田だが、なぜかポケットにちょうど港までのタクシー代830円が入っていたというのだ。
麗子は、美月が事件の夜も旗を降ろすために外に出て、ベンチで眠ってしまっている篠田のポケットに受け取ってもらえなかったタクシー代830円を入れ、ストールをかけたのではないかと問いかけた。
「違います」。美月はそう答えるが…。
そこから麗子は、篠田のことを話し始める。
ミステリー作家志望だがそれを発表する機会すら与えられず、軽井沢の別荘で管理人をしていたときも、弁護士事務所で助手をしているときも一切報酬を受け取っていないのは、彼が6年間、透明人間になっていたからだ、という麗子。
裁判長(正名僕蔵)は、無関係な話を続ける麗子に、「これ以上続けると退廷させる」と注意。すると何人かの裁判員が、麗子の話を聞きたいと言い出す。
それを受け、麗子は「この裁判では誰かが嘘をついている」と言い、裁判とは真実を述べる場所であり、この場所にいるすべての人間は真実と向き合わなければならないと訴えた。
そして麗子は、改めて美月に問いかける。すると美月は、外に出て旗を降ろし、ベンチで寝ていた篠田にストールをかけたのは自分だと認めた。
別の日、麗子は、警視庁捜査一課の刑事・橘五郎(勝村政信)と松田(古谷呂敏)の協力を得て、再びプロメッサに当事者たちを集めた。「名探偵が事件の真相を解明するとき、関係者全員を集めるのがミステリーのセオリーだ」という篠田の言葉に、反発する藤巻たち。
そこで麗子は、高瀬の死が自殺であると告げると、真犯人はいないと続けた。被害者の小笠原は、当日プロメッサにいた全員の目の前で殺され、篠田は全員の意思で罪をなすりつけられたという。
すべては、この町の住人たちにとって大切な人物・高瀬を守るためだった。
麗子の追及に耐えきれず、「もうやめてくれ」と言って重い口を開いたのは旅館の主・亀田新一(勝矢)。事件の夜、小笠原は突然、今月中に借金を返済するよう、住人たちに命じた。それは、リゾートホテルの建設を進めるためだった。
そんな小笠原の態度に怒り、ナイフを手にしてにじり寄る亀田。そのとき、小笠原の背後にいた高瀬が、彼を包丁で刺したのだ。ちょうどそこに、寒さで目を覚ました篠田が店内に戻ってきて、何も気づかないままにソファで再び眠りについた。
亀田や藤巻らは、「警察を呼んでほしい」と言う高瀬の言葉を遮り、このまま帰るよう懇願。そして住人たちは、身寄りがないと言っていた篠田に罪を着せたのだった。
高瀬は必要な人間で、篠田は必要ない人間だともとれる亀田たちの言い分に激怒した麗子は、「必要ない人間なんかいない。篠田は私にとって必要な人間です」と言い放つ。
そして、篠田の6年間を奪った住人たちの罪の軽さを嘆き、あとは橘たちに任せてプロメッサを後にした。
ほどなく、篠田に無罪判決が下った。傍聴人席には、麗子の元彼・森川栄治(生田斗真)の兄である富治(生田斗真/2役)の姿もあった。
麗子は、晴れて自由の身になった篠田に、「これからどうするのか」と尋ねる。続けて、「ここにいたければ朝・昼・晩きっちり料理を作ること」と告げる麗子。
そこに、津々井がやってきた。津々井は、篠田の件が片付いたらまた自分の下で働く、という麗子と交わした約束を反故にし、紗英と一緒に食事に出かけてしまう。
篠田と一緒に外に出た麗子は、「このままだと事務所は潰れる」と言い出す。必要なのは事件じゃなくビッグな案件だという麗子。そんな麗子に、「なぜ金のことばかり言うのか。金で買えないものもある」などと返す篠田。2人の言い合いは続き…。
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