おいしさ・安さ・ボリュームの三拍子がそろった気軽に行けるグルメスポット・町中華には、それぞれの店舗に、思いとストーリーがありました。
5月31日(火)放送の『所JAPAN』(カンテレ・フジテレビ系)では、埼玉県にある町中華を紹介する「WORLD 埼玉 CUP 町中華2022」を勝手に開催。
番組では、料理人を選手にみたて、3チーム(町中華)を紹介しました。
<埼玉県のご当地麺ナンバーワンを勝手に決定!「麺-1グランプリ2022」開催>
スタジオには、所ジョージさん、佐々木希さん、カズレーザー(メイプル超合金)さん、田中直樹(ココリコ)さん、ビビる大木さん、若槻千夏さんが登場しました。
埼玉県は、中華麺の出荷額が年間353億円と日本一(経済産業省 2019年工業統計表)。町中華のスポットとして、日本屈指の熱さを誇る県です。
県内にある中華料理店は、900軒以上もあり、ガイドブックも発売されているほど。
豆腐のファンタジスタ「豆腐ラーメン」
さいたま市岩槻区で、創業53年の歴史を持つ「レストラン大手門」。
こちらで人気なのは、豆腐と麺が絶妙な町中華「豆腐ラーメン」。
「豆腐ラーメン」は、創業当時、まかないで出していたものでしたが、メニューにしたところ、お客さんから大好評。「第4回 埼玉B級ご当地グルメ王」では、優勝を果たしました。
女将の江原さんは、「(全体の売り上げで)豆腐ラーメン9割です」と明かしました。
そんな創業当時からある「豆腐ラーメン」を守り抜いてきたのが、中華一筋47年の佐渡久子さん。佐渡さんは、時代や客層に合わせて、料理の改良を重ねてきました。
「レストラン大手門」の戦術
①絶妙な固さにこだわった特注豆腐
主役の絹ごし豆腐について、佐渡さんは「崩れすぎてもダメですし、固すぎても(ダメ)。年配のお客さんが多いので、ツルっと食べれるように、レンゲで口に入るような形で。何度も何度もお豆腐屋さんに無理を言って、今の豆腐になった」と語りました。
②手作りのネギ油で香りを演出
香りづけに使うネギ油も手作りで、一から仕込んでいます。
③背油を使った旨味たっぷりのスープ
鶏ガラのスープについては、「私が引き継いで、背脂を入れて旨味を出すとか、私が変えました。鶏と豚のガラと、香味野菜、ニンジン、リンゴ(を入れている)」と説明。
佐渡さんは、「キチッとしたことをやろうと。毎日私たちは、同じことの繰り返しだけど、食べるお客さんは全員違うじゃないですか。“このくらいで”っていう仕事は、しちゃいけない。ちゃんとしないと。毎日の積み重ねですよ」と、思いを語りました。
親子でつなぐ華麗なセットプレー「焼き飯チャーハン」
入間郡三芳町にある創業47年を誇る「河童軒」。父・栄一さんと長男の慎太郎さんを中心に、3世代家族で営んでいます。
このお店で人気なのが、パラパラで香ばしさのある「焼き飯チャーハン」。
河童軒の戦術
①炒めたお米を冷蔵庫で一晩寝かす
具材(豚ひき肉、干し椎茸、ハム)と炒めたご飯2升を、冷蔵庫で一晩寝かせます。1杯のチャーハンを作るために、2日かけるこだわり。
②ヘラを使ってお米を焦がす
高温の中華ナベにチャーハンをヘラで押しつけて、あえて焦がしをつけ、香りを立たせます。
「河童軒」は、栄一さんの母である美智子さんが、1人でラーメン店として始めたのがきっかけ。今でも創業当時からの「醤油ラーメン」を作るのは、美智子さんの仕事です。
河童軒を継ぐことを決意した栄一さんは、「ラーメン店なのにチャーハンがない。これは、チャーハンを作らなきゃと研究した」と、寝る間も惜しんで味を追求したそう。
また、焦げについて「間違えて焦がしてしまった。研究しているうちに、(チャーハンが)焦げちゃったんです。食べたら…すごくおいしくて」と、開発秘話を明かしました。
それから、およそ30年経った今では、親子で作り上げた「醤油ラーメン」と「焼き飯チャーハン」のセットを、多くの常連客が頼むようになったといいます。
美智子さんは、「このままずっと、孫の代でもお店をやってもらいたいです」とほほ笑み、慎太郎さんは「わかりました。頑張ります」と応えました。
テグタンスープをヒントにしたやみつきの赤ラーメン「テフタンメン」
朝霞市にある創業54年を迎える「あづま家」。店主の齋藤美子さんが、きりもりしているお店です。
お客さんの8割が頼むのが、野菜の旨味とピリ辛スープが麺に絡み、一度食べればやみつきになってしまう人続出の「テフタンメン」。
あづま家の戦術
①溶き卵で辛みをマイルドに!
スープに絡みのある秘伝のタレをいれ、最後に溶き卵で味をマイルドにします。
②毎朝取るだし汁をスープに使用
スープはつぎたしではなく、毎朝とっています。鶏ガラとトンコツでだし汁をとります。美子さんは、「ダシがちゃんと取れないと、不機嫌になっちゃう」とニッコリ。
「テフタンメン」は、亡くなったご主人の栄司さんと一緒に作ったそうで、「変わったメニューが欲しかったのよ」と振り返ります。
6年前に亡くなった栄司さんと、1968年に創業した「あづま家」。オリジナルの看板メニューがなく、ずっと模索していましたが、2人の共通のある好物からヒントを得ました。
それは、韓国料理の「テグタンスープ」。美子さんは「(テグタンスープが)大好きで、年中2人で食べに行っていたのよ。『このスープに麵を入れたら、どんな味になるだろう』というのが最初」と明かしました。
ちなみに、こちらのラーメンは「テグ」ではなく「テフ」ですが…。美子さんによると「お父さんが『ウチは“テフ“にしよう」って。深い意味はないのよ(笑)」。
そんな、夫婦で長年守ってきた看板メニューの「テフタンメン」。さぞかし仲良し夫婦かと思いきや、「昔は『あづま家』といえば、夫婦ゲンカ」だったといいます。
栄司さんについて、美子さんは「すごく几帳面な人。神経質で。料理ができても、中に入っている野菜が1つでも、上向いていたり、下向いていたりすると、きちんと直す人」と語りました。
美子さんは、栄司さんの言いつけをいまだに守っているそうで「(おしぼりは)洗って干して。天日に干すんだよ。それは、亡くなった夫が『業者(のおしぼり)はイヤだ』って。それだけは、やっぱり守らないと」と。
「テフタンメン」のほかにも、「チャーハン」をはじめ、「レバニラ炒め」、「鶏の唐揚げ」など、栄司さんと考案した料理は、すべて美子さんが、今も1人で作っています。
美子さんは、「『こういう店があるといいね』ってみんな言う。チェーン店とか、そういうお店ばかりなので」と、店への思いを語りました。
そして、「(旦那さんとの)2人の結晶だよね。『テフタンメン』は、夫婦2人で一生懸命頑張ってできた料理だから。『たまには手伝いに出て来い』っていつも言ってるんですけど、来ないんですよ」と、栄司さんに思いをはせました。