安田章大(SUPER EIGHT)さんが、唐十郎作品の面白さ、そして演劇という答えのない世界に挑む醍醐味を語りました。

アングラ演劇の旗手・唐十郎さん(2024年没)の初期作品『アリババ』『愛の乞食』。唐さんが旗揚げした劇団「状況劇場」によりそれぞれ1966年と1970年に初めて上演され、現実と幻想、現在と過去が溶け合う壮大な物語で、人々を魅了してきました。

安田さんは『少女都市からの呼び声』(2023年)で初めて唐作品に挑戦し、2025年6月に行われた新宿梁山泊主催のテント公演『愛の乞食』『アリババ』にも主演。その2作品が8月31日から上演され、再び安田さんが主演を務めます。

今回、Bunkamura企画・製作、世田谷パブリックシアターで上演される本公演は、初の試みとなる全編“関西弁”。関西出身の安田さんならではの感性を通じて、唐さんの独特な世界観を新たな視点で届けます。

めざましmediaは安田さんにインタビュー。本作への意気込みやテント芝居の魅力、唐作品に初めて触れるファンへ伝えたいことなどを聞きました。

唐十郎には“言葉の音符”、安田章大には“関西弁という音符”

――安田さんは唐作品の大ファンですが、今回の出演はどのように決まったのでしょう?

2年前の『少女都市からの呼び声』の稽古中、(本作でも演出を務める)演出の金守珍(きむ・すじん)さんが「『アリババ』という戯曲があるんだよ。『愛の乞食』というのもあってね」と教えてくださったのが、きっかけです。読んでみたら素晴らしくて「これはやらなきゃ!」と思って。ぜひ上演したいと、金さんとBunkamuraさんを僕が口説きました。

――ということは、安田さんがきっかけで企画が立ち上がった?

そうですね、人生の先輩たちが、僕の声を受け入れてくださったんです。

『アリババ』と『愛の乞食』は唐さんが20代の頃に書いた、力強くエネルギッシュな作品です。1960年代は世の中が血気盛んで、唐さん自身も多感な時期だったと思います。その当時の作品を、金さん主宰の新宿梁山泊の公演とはまた違うアプローチでできないかご相談して、関西弁で描くという初挑戦に至りました。

――なぜ「関西弁で」という発想が生まれたのでしょう? 

僕、セリフを1回全部関西弁で読むことで、感情の整理をつけているんです。標準語だと感情が少し平坦に聞こえる気がして…。また、唐さんは線も何も入っていない紙に、自分のリズムでバーッと言葉を書き出すのですが、それを「言葉の音符」とおっしゃっていました。僕にも関西弁という“音符”があります。

そんなことを金さんに話したら、金さんがBunkamuraさんとの話し合いのなかで「思い切って関西弁で上演してみたらどうだろう」と提案してくださいました。

初の試みですし、賛否両論あると思います。でも、唐さんは過去に「演劇は賛否両論がなかったらダメだと思う」と話していて。僕、唐さんの言葉をボイスメモに録って、家にいる時や移動中に聞いているんですけれど、聞けば聞くほど「唐さんは今回の挑戦、喜んでくださるんじゃないかな」と思います。