<岩田和行 コメント>

「恋の記憶、止まらないで」(2019)演出

数多くの作品の中から「恋の記憶、止まらないで」が選ばれたことを大変光栄に思います。この作品は、精神的にジワジワと追い詰められる怖さをいかに表現できるかをスタッフとともに追求しながら取り組みました。

特に劇中で流れる、40年ほど前の古い地方C Mは、滝が流れ落ちる森を舞台に選んだり、VHSテープの再生時に理想的なノイズが出るようにするなど、こだわりながら作りました。

デッキ2台をつなげ、映像トラッキングのつまみを微妙にずらしつつテープを何度もコピーし、再生時も微妙な調整を施すことで、一時停止した際の気味の悪い映像のブレを生み出すことができました。CGでは作り出せない、アナログならではの生々しい怖さがある作品になっていますので、その辺りにも注目してご覧いただけますと幸いです。

『奇妙』は自由度が高く、新たな挑戦をさせてもらえる幸せを感じる一方で、演出家の個性が反映される部分も多いためプレッシャーも感じながら毎回奮闘しています。オムニバスという枠組みの中で、さまざまなスタッフが互いに切磋琢磨する環境があり、それが『奇妙』ならではの醍醐味であり、数々の魅力的な作品を生み出し35年続いてきた秘訣でもあると感じています。

これからも、まずは40周年を目指し、視聴者のみなさまに楽しんでいただける作品をお届けできるよう挑戦し続けていきたいと思います。

歌手でもある斉藤由貴さんに主人公を繊細に演じていただいたことで、視聴者の方が感情移入しながらのめり込んで見られる作品になっていると思います。また、CMに登場するイチキ游子さんをはじめ、この作品ならではの個性的なキャスト陣や、唯一無二の独創的な諸橋さんの脚本、脳内に染みついて離れない蓜島さんの中毒性の高いメロディ、透明感溢れる斉藤さんの美しい歌声などなど、数多くの見どころがある作品となっております。ぜひご覧になってください!