神尾楓珠が主演を務める映画「彼女が好きなものは」の先行上映会が、11月26日(金)に行われ、神尾、共演の山田杏奈、今井翼、草野翔吾監督が登壇した。

この作品は、浅原ナオトによる小説「彼女が好きなものはホモであって僕ではない」が原作。ゲイであることを隠しながら生活する男子高校生(神尾)と、BL好きの女子高校生(山田)との恋愛を通じ、世間にはびこる“ふつう”という価値観とのギャップに向き合う男女の姿を描く。

ゲイを隠している高校生・安藤純を演じた神尾は、「僕自身には経験がないことだったので、演じるにあたって、純の中にはどういう悩みがあるのだろうと、掴みづらかったし難しかったです」と振り返った。

また、「今回はゲイというものがテーマになっていますが、多数派、少数派と言うのは、いくらでもあることです。僕が少数派の部分もたくさんあるので、世間の考えと僕の考えをすり合わせながら、悩みとか葛藤に向き合っていきました」と明かした。

BL好きを周りに隠している女子高校生・三浦紗枝役の山田は「人に言えない好きなことがあるということは、純とも共通していて、好きなものを人に言えないのは苦しい部分がある。自分をさらけ出していくのは誰にとっても難しいことだと思います。その中で人と一緒に過ごしていくには『どうやっていけばいいのだろう?』と考えました」

続けて、「紗枝はすごく真っすぐで、自分自身も悩みを抱えているからこそ、純と対峙したときにも、しっかりと向き合っていたので、紗枝の姿が純の支えになればと思いながら、演じていました」とコメント。

純の恋人であり、家庭を持ちながらゲイであることを隠している佐々木誠を演じた今井は「僕自身にとって、このような役柄は初めの芝居でした。閉鎖的に過ごさなければいけないという固定観念は、今は時代錯誤だと思っています。人を受け入れる、自分自身を肯定してあげるというのは、さまざまなことが社会の中で認識されているように、『同性を愛することが特別ではない』と。周りにいる人が、そういう方を特別視しないということを、純を思う包容力の中で、大事に演じさせていただきました」と語った。

一番印象に残っているシーンを神尾は、「日常的なシーンが難しかったです。『(ゲイであることを)隠しながら、見ている人には引っ掛かりを作らなければいけない』というのに苦労しました。個人的には病室で、お母さんに感情をぶつけるシーンが印象に残っています。そこに合わせて感情を出すため、それまでのシーンで感情を抑えて演技をしていました。僕が演じたのは台本の中でしかないですが、純にとっては、それまで生きてきた分の思いがあるので」と振り返った。

山田は、「体育館のシーンで、みんなの前に立って思いを語る場面は、その撮影の何日も前からプレッシャーがありました。純の思いや、紗枝の思いを、私を通して全部出したいと思ったので、印象に残っています」と回想。

今井は「純とデートをしているときに、紗枝さんに見つかってしまって、(紗枝の投げた)水風船が当たるシーンです。1発勝負の撮影だったので、水がかかるのが中途半端になってしまったら、また衣装を乾かしてと手間がかかるので。もちろん、水風船が投げつけられるのですが、それを感じてはいけないので、ビンタされるシーンのように平然を装いながら、やっていました」とコメント。

そして、純と愛し合うシーンもあったそうで「女性とのラブシーンもそうですが、純が美しく見えるように心がけてやらせていただきました。僕よりも全然若くて素敵な楓珠くんが、僕なんかよりもしっかりしているので、いろいろと安心してやらせていただきました」と微笑んだ。

神尾は、「別れのシーンで、誠さんにラムネを開けてもらうシーンがあるのですが、開けたラムネがこぼれたんです。実際はこぼれる予定ではなくて、それを今井さん『あぁ、こぼれちゃったな…』と咄嗟にアドリブでカバーしてくれて…。それを見て、誠さんの優しさを感じて、泣きそうになってしまいました。でも、『ここで泣くのは違う』と必死に堪えました。今でも思い出して泣きそうになる」としみじみと語った。

草野監督も「あのシーンが、ものすごく好きで。ラムネがこぼれたときに、今井さんが出したハンカチ…。あれは、衣装じゃなかったと思うんですけど?」と質問すると、今井は「撮影の合間の汗拭き用にポケットに入れていたものを、瞬時に使ったんです」と回答。

草野監督は「誠さんと純との関係性が見えていいんですよ」と太鼓判を押し、今井は「2人の最後の切ない芝居だったので、きっと僕も自然に動いたんだと思います。撮影を重ねる中でのコミュニケーションが、ふと出たのかなと思いました」と明かした。

<あらすじ>

⾼校⽣の安藤純(神尾楓珠)は⾃分がゲイであることを隠している。ある日、書店でクラスメイトの三浦紗枝(山田杏奈)が、男性同⼠の恋愛をテーマとした、いわゆるBLマンガを購入しているところに遭遇。

BL好きを隠している紗枝から「誰にも⾔わないで」と口止めされ、そこから2人は急接近。しばらしくて、純は紗枝から告白される。

「⾃分も“ふつう”に⼥性と付き合い、“ふつう”の人生を歩めるのではないか?」。

一縷(いちる)の望みをかけ、純は紗枝の告⽩を受け⼊れ、付き合うことになったのだが…。

映画「彼女が好きなものは」は、12月3日(金)より、全国公開。
©2021「彼女が好きなものは」製作委員会
配給:バンダイナムコアーツ、アニモプロデュース

最新情報は、映画「彼女が好きなものは」の公式サイトまで。