小西遼生が主演を務めるミュージカル「魍魎の匣(もうりょうのはこ)」の公開稽古と取材会が、11月10日(水)に行われ、共演の吉田雄、北村諒、神澤直也、上演台本・作詞・演出の板垣恭一、原作の京極夏彦と共に登壇した。
この作品は、京極による百鬼夜行シリーズ第2弾として刊行された同名の長編推理・伝奇小説をミュージカル化したもの。小西は、古本屋「京極堂」を営み、宮司にして陰陽師の「拝み屋」中禅寺秋彦を演じる。
<北村諒のアドリブに原作の京極夏彦が驚き「まだ小説に書いていないんです!」>
(今回の公演を主催する)イッツフォーリーズの劇団へ客演として参加した小西は、「日本でオリジナルミュージカルを作り続けている劇団は少ないと思うんです。最初、僕はビビっていたんです。稽古場に行ったときに、劇団員同士はお互いを知っていて、そこに放り込まれる気がしていたので。でも、そんなことはなくて、僕が普段商業でミュージカルをするときは、いろいろなところから人が集まってきて作品を作るんですが、『魍魎の匣』を作るとなったときに、劇団の中で役にぴったりな人を見つけてくることが出来る、劇団の幅広さや、本当にミュージカルが好きなんだと毎日のように感じました。すごく刺激を受けました」と振り返った。
また、「原作をミュージカルに落とし込む難しさ」を聞かれた際に板垣は、「(本作は)よく人が死んでしまう。バラバラになってしまう、というのが面白かったです。歌にもしてあるんですけど、(殺人の)動機というのは解釈に過ぎない。あと、シリーズ通してのセリフにもなっている『不思議な事など何もない』というのが印象的でした」
続けて、「京極先生は妖怪というものは、いないということを、妖怪シリーズで書いているんです。一見仕掛けはオドロオドロしいんですけど、ものすごく普通の人間の営みの部分を物語の中心にしていらっしゃると、僕は思ったのでやりたいと思ったんです。でも、すぐに後悔して…台本が書き上がらない(笑)。まとめられない。時間はかかりましたが、人間というものには不思議な事情はなかったりする。物語というものは解釈であって、『僕たちは物語の中に生きているだけにすぎないんだよ』と。そのことが一番感銘を受けました」と語った。
京極は「今おっしゃられた通り、私は字を書いただけで、あとは受け取る人の解釈なんです。今回の舞台は板垣さんの解釈。受け取った、見てくださった方々の解釈なので、私の出番はないんです。小説を書き上げた段階で、私の手を離れているので、どのように表現されてもなんとも思わない。そこからできた作品が面白いかどうかなので、今回は全然OKです」と微笑んだ。
最後にあいさつを求められた小西は「この作品に入る前に原作を読み、台本を読んで、この作品がうまくいったら、皆さんにとても複雑なエンタテインメントをお届け出来ると感じました。この作品の中にあまり答えがないので、脳を思いっきり揺さぶっていきたいと思います。お客さまも、受け取り方は自由だと思いますし、そこに答えを求めずに(混乱して)グワングワンの頭で帰っていただければと思います。今劇場を100%の状態で開けられることを、本当に幸せに思っていますので、皆さまの貴重な時間を僕たちに預けていただいて、『損しなかった』と思ってもらえるように頑張ります」と呼びかけた。
取材会は終わりかと思われたが、サプライズがあると告げられると、京極は「今、コロナ禍で大変ですから、もしこの舞台が始まったときに、お客さんが来てくれるだろうかと不安だったんです。ふたを開けてみたら、満員で追加公演も決まったと…。こんなことをする必要はないんですど、『千客萬来(せんきゃくばんらい)』と書いた色紙を持ってきたんです。もう萬来しているのでいらないですよね?」と言いつつ直筆の色紙をプレゼント。
色紙を受け取った小西は「これは、お客さまも見れるようにしたいですね。ありがとうございます!」とニッコリ笑顔で受け取った。
最新情報は、ミュージカル「魍魎の匣」の公式サイトまで。