9月2日(水)放送の『林修のニッポンドリル 開かずの金庫VS天才鍵開け師!前代未聞のダブル解錠SP』には、新潟県三条市の古民家カフェにある2つの金庫が登場した。
金庫がある古民家カフェ&レストラン「TREE」に向かったのは、横山だいすけと“無敗の天才鍵開け師”の異名を持つ奥間和弘だ。このカフェは、元はお米屋さんで、2004年以降空き家になっていた物件を、社長の中川裕稀さんが買い取ったという。
建物の持ち主などについて聞いたことはあるものの、建物自体がいつ建てられたのかなど、正確なことはわからないという中川さんは、建物を譲り受けたときからそのままにしてある金庫から、建物や町の歴史についての資料が出てくるのではないかと期待を寄せていた。
中川さんに案内された1つ目の金庫は、横幅60cm×奥行き70cm×高さ90cmの中型サイズ。ダイヤル錠に「イロハ」の文字があることから、明治〜大正時代のものだと思われ、ダイヤル錠の下には鍵穴が付いている。
次に案内されたのは、横幅90cm×奥行き80cm×高さ140cmの巨大な金庫だ。こちらにもダイヤル錠と鍵穴があり、合計4つの鍵の解錠に挑むことになった奥間は、時間がかかりそうな大型金庫から取り掛かることを決めた。
大型金庫のダイヤル錠は、1〜100までの目盛りがついたもの。鍵穴は以前も番組に登場した“ひょっとこ錠”だ。
“ひょっとこ錠”は、鍵穴に鍵を差し込むと内部の丸板が押し込まれて6枚のディスクが外れ、鍵が回る状態になる。そして、鍵の回転と共に奥にあるかんぬきが落ちて鍵が開くという仕組みなのだが、鍵と鍵穴の構造が複雑で一般的なピッキングでは解錠できない厄介な鍵だ。
江戸時代に考案され明治時代によく使われたひょっとこ錠と、昭和に入ってから作られた数字のダイヤル錠が使われているこの金庫は、奥間も初めて見たそうで、おそらく防犯機能を高めるために特注されたものだという。
まず奥間は、数字のダイヤル錠に取り掛かった。ダイヤルを回して、内部の3枚の羽根を合わせると鍵が開く基本的な仕組みのものだが、目盛りが100まであるので、開けるための数字の組み合わせは100万通り!しかし、神の耳を持つ奥間は、解錠開始10分で1つ目の数字が「95」、2つ目が「70」であることを突き止めた。
このまますんなりと開くかと思いきや、3つ目の羽根が奇妙な空回りを繰り返し、大苦戦。2時間経過したところで、奥間は一旦、ひょっとこ錠にターゲットをチェンジすることに。ひょっとこ錠が開けば、ダイヤル錠に変化が出るかもしれないからだ。
ひょっとこ錠は、サビもなくキレイな状態だが、その分バネが強く、一筋縄ではいかない状態だ。しかし、複数の道具を駆使して、2時間半かけて解錠に成功した。
その後、再び数字のダイヤル錠に取り掛かった奥間は、3枚目の羽根の空回りの原因に気付いた。通常、ダイヤル錠の中の羽根には突起が付いており、その突起を隣の羽根の突起と噛み合わせることで、奥の羽根を動かしていく仕組みになっている。
しかし、この金庫では3枚目の突起が摩耗して、引っかかりづらくなってしまっていた。このまま無闇にダイヤルを回し続けると、完全に突起が摩耗して解錠が不可能になってしまう。いつ突起が摩耗しきってしまうかわからない“時限爆弾”付きの金庫を前に、奥間は解錠のヒントを求めて、もう1つの金庫を先に開けることを決意した。
中型金庫の「イロハ」のダイヤル錠も、内部に3枚羽根があるタイプだ。解錠するための組み合わせは約11万通りもあるが、「そんなに難しくない」と言いきった奥間は、わずか3分で1枚目の羽根の鍵が「カ」、2枚目の羽根が「リ」だと突き止めた。
しかし、3枚目の羽根に通常の金庫では聞こえない“異音”が聞こえることに気付き、またもやダイヤル錠を中断して、鍵穴に取り掛かることに。
こちらの鍵穴は「棒鍵」と呼ばれるタイプで、鍵を差し込むと内部の3枚のディスクが動いて、かんぬきが外れるシンプルな仕組みだ。しかし、サビによる腐食で3枚のディスクがくっついて動かなくなってしまっているという。
奥間は、ピッキングでそれぞれのディスクを正しい位置に動かそうとするが、あまりにサビが固く、愛用のピッキングの道具が欠けてしまった。
そこで、世界最高レベルの金物の町・燕三条でもトップクラスの技術を誇る「武田金型製作所」に協力を依頼。奥間の手書きの設計図をもとに、細い鉄製の棒に、厚さ1ミリの鉄板を取り付けるという難易度の高い作業だが、社長は「問題ない」と請け負ってくれた。
「武田金型製作所」でピッキングの道具を作る間も、奥間はダイヤル錠の解錠作業を進めたが、4つのうち1つしか鍵を解錠できないまま、その日の作業はタイムアップとなった。
そして翌朝、「武田金型製作所」からピッキング道具が届いた。道具の先に付ける厚さ1mmの鉄板部分は溶接するのではなく、強度を高めるために、道具の形をまるごと合金からくり抜いて作ってくれたという。
しかも、奥間のオーダーに合わせてその場で職人がヤスリをかけて道具を最適化してくれたお陰で、錆びついた鍵穴を無事に解錠することができた!
残る鍵は2つ。再び「イロハ」のダイヤル錠に取り掛かった奥間は、3枚目の羽根が「ワ」であることを突き止めていた。しかし、最初の文字を右に3回転→2つ目の文字を左に2回転→最後の文字を右に1回転という、通常のダイヤル錠の回転数では、開くことができない。
ということは、このダイヤル錠は右3回→左1回→右1回という、変則的なダイヤルの回し方をする“鍵開け師殺し”の金庫かもしれない。
以前、“鍵開け師殺し”の金庫を攻略した経験を踏まえて、奥間が変則的な回転数での解錠にトライすると、遂に金庫がオープン!
中には、扉が1つ、引き出しが2つ付いた木製の棚が入っていたが、残念ながら中身は空っぽ。奥間が棚ごとすっぽり引き抜いてみたが、その陰にも何も入っていなかった。
遂に、巨大金庫の“時限爆弾付き”のダイヤル錠を残すのみとなった奥間は、最大の武器である“神の耳”が使えなくなる背水の陣を選択。それは、ダイヤルをゆっくり回してすべての数字を試すという地道なもの(=音が聞こえなくなる)だったのだが、全パターン試しても鍵は開かず。
ここで奥間は、ダイヤルを「左3回→右2回→左1回」と回転させて突起を噛み合わせる“逆回転作戦”での解錠を目指して、1枚目の羽根から再び数字の組み合わせを探し始めた。
結局、“逆回転作戦”も失敗に終わったが、作業の中で奥間は3枚目の羽根の正解が「10」前後だとあたりを付けていた。その仮定をもとに慎重に作業を進めると、“事件爆弾付き”のダイヤル錠もオープン!解錠開始から27時間半後の快挙だった。
金庫の中の棚から出てきたのは、お米屋さんの顧客リストや、番組調べで約2万円ほどの価値のある昭和初期の懐中時計、保険の契約時の冊子などだ。
その中には、古いアルバムと“家屋調査資料”も。詳しいことがわかっていなかった建物の歴史が書かれた資料の登場に、中川さんは笑顔を見せた。