――初演時の稽古で、特に印象に残っている思い出を教えてください。
「初演作品を作るって、こんな大変で楽しいんだ」と感激したのを覚えています。日本語訳から何から、スタッフ、キャストみんなで脳みそを寄せ合って作ったので。
前回のドーンは宮澤エマさんが演じていましたが、エマちゃんはバイリンガルなので、たとえば「このジョークは台本で読むとこう感じるけど、アメリカ的にはこういう感覚で話している」とか意見を出してくれて。セリフの読み取り方を全員ですり合わせできたので、とても助けられました。
また、私自身も、英語の先生と一緒に歌の訳詞を考えました。
日本語は英語と比べて、同じメロディのなかに3分の1ぐらいしか意味が入らないので、それを踏まえつつ、スタッフのみなさんと相談しながら、「ここはロングトーンで伸ばすから、最後は『あ』とか『い』の音だと歌いやすいよね」というように、言葉を考えたりしました。
再演作品だと、すでにある歌詞や演出にはめていく作り方をしますが、初演作品はまるっきり違うので、そこがすごく面白かったです。もちろん、時間もなくて大変でしたが、みんなの「日本初演版を成功させよう!」という作品愛がすごく強かったのが印象的でした。

――逆に、再演ならではの面白さというのはありますか?
私が今まで再演でやらせていただいた作品は、『ピーター・パン』や『奇跡の人』など、“今まで続いてきたものをつないでいく”という感じが強くて。それまでの長い歴史があって、自分が演じて、その先につなげていく…作品のピースの1つになれるような、うれしがありました。
『ウェイトレス』も、いずれ自分が離れたとしても、ずっと続いてほしいので、今回はその基盤を作るような気持ちで取り組んでいきたいです。
舞台がない時期が続くと「なんとなく息ができない感じ」
――『宝飾時計』(2023年)以来、約2年ぶりの舞台出演ですが、高畑さんにとってミュージカルや舞台は、どんな存在ですか?
お稽古が始まると「なんで出来ないんだろう…」とか、すごく悩むんです。でも、舞台に出ていない時期が続くと自分を見失うというか、失って気づく大切さを感じます。
まわりの俳優さんのなかには「舞台は映像より緊張する」「苦手」という方もいらっしゃいますが、逆に私は舞台をやっていないと、なんとなく息ができない感じがして。私は本当に舞台が好きなんだと思います。

――ジェナはダイナーでパイを作っていますが、高畑さん自身もパイを焼くことはありますか?
パイ生地を買ってきて、アップルパイは作ったりしますね。
――ジェナは母親からパイの作り方を教えてもらいます。高畑さんが家族から教わったレシピはありますか?
実家の母が作る餃子が好きで、私もよく作っています。特別な何かが入っている、というわけではないですが、野菜がとても多くて、食べるといつも「実家の味だな」と感じます。
撮影:今井裕治