京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は性別や国籍、障がいの有無に関係なく、誰もが能力や適性を発揮できる環境づくりに取り組んでいます。

新卒採用・障がい者採用を担当する田中は、生まれつき耳がほとんど聞こえないというハンディキャップを持っていますが、学生時代に学んだ「視覚伝達デザイン」の知識を活用し、採用活動で使用するPRツールの制作などで力を発揮しています。他部署からのデザイン制作の依頼にも対応するなど、組織の垣根を越えて活躍する田中に、仕事への思いや働き方について聞きました。


■目で見て人を惹きつけるものを作り出したい

-デザインを学ぼうと思ったきっかけは?

幼い頃から絵を描くことが好きで、高校では美術部に在籍し、芸術系大学への進学を視野に入れていました。高校時代のある日、散歩中に遠くにあるポスターの凝ったデザインに惹きつけられ、思わず近づいたことがありました。


人間の五感による情報収集能力が最も高いのは視覚で、次いで聴覚です。私は生まれつき耳がほとんど聞こえないため、聴覚から情報を収集することは難しいのですが、この経験をきっかけに「視覚を通じて情報を分かりやすく伝えるスキルを身につけたい、目で見て人を惹きつけるものを作り出したい!」と思うようになりました。


大学はデザイン関係の学部に進学し、映像・イラスト・写真・文字などで視覚的に情報を伝達するデザインを勉強しました。


-普段の業務ではデザインスキルをどのように活かしていますか?

会社説明会資料やイベントチラシの制作、採用サイトの更新業務などにデザインスキルを活かしています。伝えたい情報やメッセージは何か、文字だけでは伝わりにくい内容をどう効果的に伝えるかを考えてデザインしています。


最近では、他部署から社内ポータルサイトのデザインや外部発信用の図版制作、KCCSが実証実験を行っている自動配送ロボットの車体デザインの制作依頼が入るなど、年々任せていただける業務が増えており、幅広く対応しています。

大学で学んだ知識やスキルが今の仕事に活かされていることがうれしく、無駄ではなかったと実感しています。

田中が制作したKCCSのDE&Iの考え方を紹介する図版


■できることから行動してみると、ハンディキャップの影響は想像していたより大きくなかった


-仕事でどのような工夫をしていますか?また使用している支援ツールは何ですか?

私は補聴器で音は聞こえますが、音の方向や会話内容、清音・濁音の聞き分けが著しく困難で、自分の声が分からないため発音も苦手です。業務では、簡単な指示や雑談は「筆談ボード」でやりとりし、長文や重要な指示はメールやチャットをメインにするなど、状況によって手段を使い分けています。


筆談ボード、マイクスピーカー、音声認識・文字起こしアプリ


口の形を見て単語を読み取ることも可能ですが、口の形が同じ単語は区別が難しく、長い話を読み取ることが苦手です。そこで、朝礼や終礼、打ち合わせや雑談時には、拾った音声を文字に変換し画面に映し出してくれる「音声認識・文字起こしアプリ」を使って、相手の話す内容を把握しています。オンライン会議ではマイクスピーカーを使って音を大きくすることで、アプリの音声認識の精度を向上させています。必要な備品は会社で用意してもらえるので、それらのツールを活用しながら業務を進めています。



-ハンディキャップについて、入社前に不安な気持ちがあったと伺いました。どのように乗り越えましたか?

初対面の方とのコミュニケーションや、周囲の会話を聞き取れないことで次の行動についていけず、迷惑をかけるのではないかと心配でした。また、筆談ではどちらかが書いている間は相手に待ち時間が生じるため、相手の貴重な時間を奪ってしまうのではないかと不安を感じていました。


働き始めてからは、コミュニケーションは工夫でカバーできることが分かってきました。ツールを使って会話を把握することはもちろんですが、筆談やチャットでの打ち合わせも、事前に情報を資料にまとめ、相手とそれを見ながらコミュニケーションを取ることで、スムーズに共有できます。


私は普段、視覚を中心に情報収集をしていますので、その視点が資料の見やすさの改善に役立つこともあります。コミュニケーションを取りやすくする工夫は、障がいの有無に関係なく相手の負担軽減に役立つことに気づき、今ではハンディキャップの影響は入社当初想定していたほど大きくないと感じています。



-障がい者採用を担当する中で意識していることはありますか?

障がいは性格のように、一人ひとり異なります。「この人にはこういったサポートがあればよい」と思い込みで決めつけず、相手と直接向き合い、どのような配慮が必要なのかを考えるようにしています。


また、社会で働くことは新しい環境に飛び込むことでもあり、働き始めは特に不安を抱える方も少なくありません。相談を受けたときには「小さなことでも良いので、一つひとつ自分ができることを積み重ねていきましょう」とお伝えしています。

目標や夢を持つと途中で壁にぶつかることもあります。そのときは、これまで自分がやってきたことを振り返ることをおすすめしています。自信につながり、前へ進むための新たな選択肢が出てくると思います。


■地域住民や地元企業から愛されるデザインを目指して、自動配送ロボットの車体デザインを手掛ける


-ロボットの車体デザインにチャレンジした経緯は何ですか?

KCCSでは車道を走行する中速・中型自動配送ロボットの実証実験が2021年に開始され、ロボットの車体デザインの募集がありました。私は入社後すぐの京セラグループ運動会でKCCS東京チームの応援旗のデザインを担当したのですが、そのデザインを覚えてくれていた同期からの推薦を受け、思い切ってチャレンジすることにしました。そこで私の案が採用され、以降もデザインを担当しています。


田中がデザインした自動配送ロボット


-どのような思いを込めてデザインをしましたか?

地域住民や地元企業から愛されるデザインを目指して、地域を象徴する要素を多く盛り込んでいます。

車道を走る対向車からも「あ、ロボットだ」と一目で認識できるように目立たせることも意識しました。自動配送ロボットが地域の方々から「かわいい」と好評だったとお聞きし、とてもうれしかったです。


-積極的にチャレンジできるのはなぜでしょうか?

普段から上司が「従来のやり方にこだわらず、より良い方法があれば積極的に試してみてほしい。やりたいことが実現可能かどうかはいったん置いておいて、まずは何でも言ってみて」と後押ししてくれており、チャレンジしやすい環境が整っています。チームで協力し合い、新しいアイデアを気軽に言い合える雰囲気なので、私もやりたいことがあれば「やってみたい」と自分の考えを伝えています。


働き方について不安があれば、ワークライフサポート部という社内の相談窓口があるので、そういった会社のサポートも活用しながら、今後も積極的にチャレンジを続けていきたいと思います。


公開時期:2025年3月

掲載されている内容は発表日現在の情報です




行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ