両親を交通事故で亡くしてから、女手一つで弟3人を養う“肝っ玉姉ちゃん”の安達桃子(有村架純)と、彼女を囲む個性豊かな人物たちが繰り広げるラブ&ホームコメディ『姉ちゃんの恋人』。

人間ドラマの名手・岡田惠和が脚本を手がけるオリジナル作品で、桃子が恋に落ちるお相手・吉岡真人を林遣都が演じる。

真人は、桃子と同じホームセンターの配送部で働く31歳。店舗内の各部署から選出されるクリスマスプロジェクトのメンバーになったことがきっかけで、桃子と出会う。普段は、ほほえみを絶やさない好青年だが、彼には“ある秘密”があり…。

「岡田さんに当て書きしていただいて、覚悟を持って演じないといけないと」と語る林。一つ一つの質問に、真摯な態度で答える姿は、繊細でピュアな心の持ち主の真人にも通じるかのよう。そんな林に、岡田作品の魅力、本作への意気込みなどを聞いた。

<林遣都インタビュー>

──岡田さんが脚本を手がける作品へ出演されるお気持ちを教えてください。

岡田さんの作品は、11年前に出演(『小公女セイラ』<09年/TBS>)させていただきましたが、またいつか年を重ねて、出演したいという思いがありました。その後、ラジオでご一緒させていただく機会があって、「また一緒にやりたいね」と言っていただいて、それで今回実現しました。

しかも、まさか当て書きしていただけるなんて思っていなかったですし、愛情を持って真人という役柄を作り出してくださっているので、覚悟を持って演じないといけないなと思っています。

すごく難しい役柄ですが、とてもやりがいを感じています。自分にとって大切な作品なので、最後まで演じきりたいと思います。

──脚本を読んで、真人に共感したところはありますか?

演じていても、ちょっとしたところに共感することがたくさんあります。僕は、今29歳で、もうすぐ30歳になりますが、そのタイミングで自分が経験してきたことや、日々感じていること、考え方など自分自身を投影できる役柄だと感じています。

それだけ岡田さんが僕の本質を考えながら書いてくださっているのかなと思います。オリジナルストーリーの当て書きというのは、演じる人によって変わると思います。演じる方も役者の人間性や人柄がにじみ出てしまうのではないかと思っています。だからこそ、この役を演じることに特別な思いがあります。

──脚本から岡田さんのどんなメッセージを感じ取っていますか?

すごく愛情を感じています。この脚本は、たださわやかに演じるのでなく、まずはしっかりと真人として輝かなくてはいけないものだととらえています。

周りの登場人物もみんないろいろなことを抱えていますが、一生懸命生きる姿や、人を思う心などをしっかりと演じなければ、岡田さんが描く世界観を伝えることができないと思います。

岡田さんは、僕という俳優がこれまで過ごしてきた時間を包み込んで、真人を生み出してくださっているのではないかと思っています。そして、真人を通して、俳優としての存在を示してくれという僕へのメッセージではないかと受け取っています。

──どこでそう感じたのですか?

たとえば、野球のシーンが出てくるのですが、ト書きを読んでそう思いました。僕のデビュー作映画「バッテリー」は野球が題材だったので、僕のことを応援してくださっている方が当時のいろんなことを思い出してくれるのではないかなって…。

僕が勝手にそう思っていて(笑)。でも、それだけ自分にとって、台本をいただくたびにうれしい気持ちになる作品です。

──そういう役柄を演じるにあたり、心がけていることはありますか?

とにかく一人一人が色濃く描かれているので、演じる側はしっかりと深く掘り下げて演じないと説得力がない作品になってしまうと思っています。そのために、岡田さんが細かく散りばめた微妙なバランスの間だとか、心の揺れ具合など、しっかりと自分の心の深いところに落とし込んだ状態で現場に立つということを心がけています。

あとは、共演者の方々、監督、スタッフの方を頼りに作っていくだけです。みんながこの脚本の世界を共有して、岡田さんが描きたいものができるようにという思いで立っている現場なので、とてもいい空気が流れています。

──この作品を通じて、視聴者にどんなことを伝えたいと思っていますか?

この作品の登場人物は、心がキレイでピュアな人たちばかりなので、その人たちの一生懸命に生きている姿が、見てくださった方の気持ちを温かくできたらいいなと思っています。

空を見上げたり、星を眺めたり、そういうシーンが結構あるんですけど、そういうときは悩んでもがいている気持ちを、グッとこらえていることが多いんです。この作品は、そういう人々の物語です。そして、自分中心の人は一人もいなくて、周りの人を大切に思っている人たちの物語でもあります。僕自身も引き込まれますし、見てくださる方にもそういうことのすばらしさ、大切さを感じていただけたらと思いながら演じています。

──真人は、ある秘密があり、心に傷を負っています。真人はどう成長していくと思いますか?

桃子は、真人以上に深い傷を負っていて、そういう桃子との出会いによって、真人は救われていくと思います。「深いところでつながっている人だからこそ、わかりあえる。そういう関係だったら、手を差し伸べ合える」というような桃子のセリフがありますが、苦しい思いをしている人たちの心に寄り添い、気持ちを分かち合うことが、再生や成長につながっていくのかなと思います。

桃子も真人もそうだと思いますが、人を頼ったり、人に支えられたり、救われたりして生きています。自分を許せなくなったり、必要以上に自分を責めたりすることはだれにでもあると思いますが、この作品は、自分を許すこと、そして、相手を許してあげることが必要なんだということを感じさせてくれます。

──林さんから見た桃子は、どんな女性ですか?

両親を早くに亡くすという計り知れない苦しみを味わった中で、自分のためではなく、残された3人の弟のためにいろいろなものを犠牲にして、一生懸命生きている。しかも、明るく強く生きているという姿は、本当にグッときます。

──最後に、視聴者へのメッセージをお願いします。

登場人物たちが、本当に気持ちいいくらい輝いています。演じている役者さんたちもステキな人ばかりです。ラブ&コメディで、難しい話は一つもありません。

週1回、このドラマの1時間があってよかったなと思えるような作品なので、気楽に見て、楽しんでいただけるとうれしいです。