東京に暮らす東京人が語る、自分だけの東京ストーリー。第1回は、破竹の勢いで活躍する女優・松本まりか。「こんな話になるなんて…」と、本人も想定外となった、彼女の東京物語とは。

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<松本まりかの、東京物語

私は東京・中野の出身で、高校も杉並にある都立杉並高校に通っていましたので、杉並、阿佐ヶ谷、荻窪といったエリアが慣れ親しんだ場所ではあります。ですが、“思い出が詰まった東京”といえば…それは、都内にある松田美由紀さんのお宅です。

私は、19歳のころから美由紀さん宅に転がり込み、住まわせてもらっていました。美由紀さんが(松田)優作さんと暮らし、龍平、翔太、ゆう姫が育った大きなお宅です。本当に由緒正しいといいますか、いろんな歴史や思いが醸し出されてくるような、とっても素敵なお宅なんです。

一番多感な時期に、美由紀さんから圧倒的な刺激を受けながら、同居させてもらったことは、すごく大切で、ちょっとほろ苦い思い出。私の大きな財産になっています。

きっかけは、私が18か19のころに龍平くんの親友と共演をして、そこから家に招かれたこと。美由紀さんは、年齢も性別も関係ない方だから、私に対しても最初からフレンドリーで、波長が合いました。同じ役者の仕事をしているといっても、大先輩ですし、なんといってもあの“松田家”ですから、もう完全に住む世界が違うと思っていました。

実際、仕事となれば、格差やコンプレックスを感じることもありましたが、普段一緒にいるときは、そんなことはまったく感じさせず、対等に扱ってくださいました。

それどころか、美由紀さんは、私を娘のようにかわいがってくれたんです。美由紀さんは母親、事務所の社長、女優・アーティストでありながら、ホスピタリティの塊のような方。老若男女いろいろな方が来るお宅には、泊りに来た人用のパジャマがたくさん置かれていて、私もそれを着て、料理上手な美由紀さんが作ってくださるおいしいご飯を食べて、ふかふかのベッドで寝かせてもらうというホスピタリティ満載の暮らしでした。

あまりに心地がいいから甘えっぱなしでいると、「何でお皿洗わないの!?」と怒られたりして。ただ、かわいがってくれるだけではなく、間違ったことは「まあちゃん、それは違うよ」と注意もしてくださる。

そんなふうに、年齢や肩書きや出自など関係なく、あらゆる人と分け隔てなく接するということを学べたのは、私にとってはすごく大きかったです。

高校時代の私は、芸能活動と学業の両立で忙しかったのですが、卒業後は、仕事もほとんどなく、かといって特にやりたいこともない、無気力な時期でした。そんなとき美由紀さんは「まあちゃんはおもしろいんだから、バラエティ番組に出たほうがいい」と勧めてくださいました。

当時の私にとって、バラエティは、自分が立ち入ってはいけない芸人さんやタレントさんの聖域のようで、自分が出られる場ではないと思っていました。ですが、今こうして、バラエティに呼んでいただくことも多くなり、あのとき美由紀さんが言っていたことが現実になっていることに、驚いています。

役者の先輩でもある美由紀さんは、大人になってからの“育ての母”といった存在です。血縁ではないのに、なんだかDNAを受け継いでいるような気さえするくらい。私が長いことくすぶっていても、「自分が目指す一点の光だけ忘れなかったらいいんだよ。そこへ行く道は、まっすぐでも遠回りしてでもいい。目指す気持ちがあれば、絶対にたどり着くから」ということを言ってくださって、それが、なかなか芽が出なくても、女優を続けてこられた希望になっていたのは間違いありません。

今では私も自立して暮らしていますが、美由紀さんとは変わらず連絡を取っていて、今でもゆう姫を含めたグループメールでよくおしゃべりしています。最近、私がようやくドラマなどに出られるようになり、それを「本当によかったね」と、ご自身のことにように喜んでくださっています。

そんな圧倒的な存在だから、私にとっての東京…と思ったときに、場所ではなく、美由紀さんそのものが浮かんだんですよね。もちろん、ほかにも都内に好きな場所はたくさんあります。でも、一番思い出深い東京といえば、やっぱり、美由紀さんのお宅なんです。

<松本まりかオススメ/東京、グルメスポット>

◆トゥインズ(twins)
住所:東京都世田谷区池尻2-36-1

以前、三宿に住んでいたときに知った小さなパン屋さん。すべて天然酵母を使った無添加のモチモチのパンがすっごくおいしいんです。ほかであまり食べたことがないような、唯一無二なおいしさがあります。

◆鮨処 榎本
住所:東京都世田谷区池尻3-29-3 TIMESハイツ 1F

とてもハイクオリティなお寿司屋さんなのに、ランチの丼ものは1100円からあるんです。今の時期にぜひ食べていただきたいのが、さんま丼。肝ダレでいただくジューシーな皮も絶品!ほかも全部おいしいですよ。

◆カフェ・レッドブック
住所:東京都目黒区上目黒1-3-2

私はよくカレー屋さん巡りをするくらいカレーが大好き。こちらの手作りのインドカレーは、スパイスが豊富に使われていて本当にめっちゃくちゃおいしい。一度食べたら病みつきになっちゃいます。

Marika Matsumoto
東京都中野区出身。女優。2021年1月3日、4日に放送される『教場Ⅱ』(フジテレビ)に田澤愛子役で出演。また、待望の写真集「MM」が12月4日に発売。

撮影(東京風景):YURIE PEPE