KAAT神奈川芸術的劇場で、7月20日(火)に舞台「近松心中物語」の制作発表が行われた。出演の田中哲司、松田龍平、笹本玲奈、石橋静河、そして演出家の長塚圭史が登壇し、舞台にかける思いを語った。
神奈川出身の劇作家・秋元松代の代表作であり、故・蜷川幸雄氏の劇的な演出により、圧倒的な支持を得た演劇界の金字塔とも称される「近松心中物語」。今年4月からKAAT神奈川芸術劇場芸術監督となった長塚圭史が演出を担当し、9月4日(土)〜20(月・祝)まで KAAT神奈川芸術劇場、その後は地方公演を開催。
境遇の違う男女二組の恋模様、そして心中に追い詰められる生と貧富の普遍性を描いた同作品で、真面目な飛脚宿亀屋の養子・忠兵衛を田中哲司、忠兵衛とお互いに一目惚れで恋に落ちる遊女(梅川)を笹本玲奈、そして古物商傘屋若旦那・与兵衛を松田龍平、与兵衛を一途に思う妻(お亀)を石橋静河が演じる。
忠兵衛を演じる田中は、冒頭から「僕にとってはハードルの高い役で、忠兵衛の年齢が20代ということで、僕は今55才なんですけど、これはちょっとやばいぞと(笑)」と役柄との年齢差を口にした後、明後日から始まるという稽古前の本読みについて「共演者とは今日始めて会いましたが、心強いと感じました。僕は、一番最初の本読みが大好きで、みんながどんな世界観や価値観を持ち込んでくるのか、とても楽しみです」と話した。
司会者から、演出の長塚と最も多く共演している田中と、3度目の共演だという松田に、初めて稽古や演出を受ける共演者に対してのアドバイスを求められると、田中は「(長塚は)優しいので、やりたいことを自由に」と表現したが、その後に続いた松田が「めちゃめちゃ厳しいです!」とあえて真反対の回答をし、わざと共演を困惑させる一幕も。
すぐに松田は「(長塚は)僕に対して、課題を突きつけてピリッとさせてくれるので、いつもありがとうございます」と真意と感謝を述べたが、続けて「いつも声が小さいと言われているので(笑)」と茶目っ気たっぷりに口にし、長塚が「龍平くんはめちゃくちゃ良い声をしているから、それを聞かせたくて」と返すなど、絶妙なトークを展開した。
また、忠兵衛と遊女がお互いに一目惚れをするストーリーから“一目惚れエピソード”を求められると、田中は「身を焦がすような一目惚れはない」と断言。「でも軽い一目惚れなら本当にしょっちゅう。男性や女性、物や景色でもいいし、料理でも。2日に1回くらい一目惚れしています」と明かした。
一方、松田も少し悩んだあと、「僕も年々一目惚れの頻度は増えています」と、田中の回答に意見を重ね、「若い時は女性にしか一目惚れしなかったけど、今は美味しそうなご飯とか、道端に咲いている可愛い花とか見ちゃいますね(笑)」と話した。
会見後半で、記者陣から“役柄と似ている点”について質問されると、田中は「忠兵衛は、本当に勤勉で真面目なサラリーマンというイメージなんですけど、共通点は…ないですね(笑)」と共演者を笑わせ、「ないんですけど、僕が演じるので(自分自身が)たぶん滲み出ちゃうと思うので、頑張って演じなきゃなと思っています」と語り、「だけど、一番(不安が)デカイのは年齢なんです。もし稽古場でジジくさかったら注意してねって、(長塚)圭史くんにも言っています(笑)」と冒頭でも口にした年齢差を強調した。
松田は、与兵衛に関して「筋を通す人。ただ、自分がどうやって生きていきたいのかが分からないんだなという印象かな」と話し、「たとえば心中にしても“あなたが言うなら”という感じある。そうやって自分の周りにいる人に筋を通して、大切にしている人だと思います。これからセリフを入れて、芝居をしながら噛み締めていきたいと思います」と台本を読んだ印象や舞台にかける思いを語った。
詳しい公演情報はKAAT神奈川芸術的劇場公式サイトまで
取材・文:原千夏