<矢島弘一 コメント>
――このドラマが誕生したきっかけを教えてください。
「野球のドラマを作りたい」というお話をいただいて、その時点ではバントの犠牲心をテーマにしたいという、作品のイメージをうかがいました。
お仕事モノにしたいというお話もあったので、「エースで四番」を担っていたプロ野球選手が戦力外通告を受けて…みたいな流れができあがったんです。
バリバリの体育会系だから、逆に女性の多い下着会社みたいなところで働く設定もアリかなと思いましたが、野球選手のセカンドキャリアという部分にリアリティがある分、思いきって突拍子もないストーリーにしようという話になり、物語の展開が決まっていきました。
――柳澤大翔というキャラクターはどのように作られたのでしょうか?
鈴木伸之さんに演じていただくことが決まった時点で、熱くてちょっと抜けている主人公でいこうと。キャラクターとしては、子どものころから野球一筋で、ずっとエースで四番。周囲から、羨望の眼差しを浴びて育ってきたと思うんですね。
そういう意味では、「ちょっと調子に乗っている的な部分もあるだろうな」とか「これまでの成功体験から、なかなか変化を受け入れられないタイプだろう」とか、そんな感じで固めていきました。
――野球の戦術も、物語の展開にうまく絡んでいますね。
ストーリーに大きな流れはありつつも、一話完結なので、毎回登場するゲストの悩みと野球の設定や戦術をリンクさせているのですが、そこは苦労しました。
もちろん、ゲストの悩みは大翔の悩みにもリンクさせる必要があります。そうやって毎話構成していったのですが、後半になると徐々に野球ネタも尽きてきて…。かなり大変でしたね。
――矢島さんも、実際にプレーされていたんですよね。
はい。小学校の学童野球から始まって、中学でも野球部に入りました。足が速かったので、一番打者を任されたり。ただ、高校時代は野球部のきつい練習や坊主になることがイヤで、別の部活を選んだんです。
友人からも誘われていたのに、なぜ野球部に入らなかったんだろうと、今になって後悔しています。その後は、草野球チームなどでもプレーをしましたが、現在は子どもの学童野球のコーチとして野球にかかわっています。
――バントの思い出はありますか?
私の叔父が、早稲田実業の野球部に所属していたんです。同学年に、元ヤクルトスワローズの大矢明彦さんがいて、自宅に遊びに来たり、僕の試合を見に来たりされていました。僕が小学校5年生のときに、学童野球の試合でスクイズを成功させたことがあったのですが、それも見に来てくれて。試合後に褒められたことを覚えています。それからですね、僕が熱狂的なヤクルトファンになったのは。
――ヤクルトや中日ドラゴンズで、印象に残っている試合があれば教えてください。
いろいろありすぎて、全部は語れないのですが(笑)、古くは荒木大輔さんのプロ入り初勝利から、最近では村上宗隆選手の56号本塁打、そして今年は青木宣親さんの引退試合と、すべて神宮球場で見ましたね。
ちなみに、中日ドラゴンズに対しては、ヤクルト目線で言うと落合さんの時代にかなり痛い目に遭ったことが忘れられません。だからなのか、手堅い野球をするイメージがありますね。
――矢島さんにとっての、野球の魅力とは?
野球が好きすぎて、これも一言では語れないのですが(笑)。なんだろう…俗に言う「筋書きのないドラマ」という部分も大きな魅力ですよね。
野球って、ほかのスポーツと比較しても非常に複雑なスポーツだと思うんです。球種を変えながらボールを投げて、それを打って、出塁してホームベースを目指す。ただゴールを目指すわけではない、野球ならではの複雑性が、劇的なドラマを生む要因になっているのではないでしょうか。
だから、野球ファン一人ひとりに思い出深いシーンがたくさんあるし、それがその人の人生ともリンクしているんだと思います。
――このドラマを通して伝えたいことは?
今の時代、日本や世界にはさまざまな問題があって、そこで苦労している人がたくさんいるわけです。ドラマの世界には、そうした人たちに光を当て壁を乗り越えていく物語がとても多く、実際に自分もそんなストーリーを描いてきました。
ただ今回は、プロ野球選手のセカンドキャリアといったリアルな話を描きつつも、まずは楽しく見てもらいたいと思っています。物語の展開として突拍子もない部分もありますが、見終わったあとに、少しでも前向きになってもらえたらいいですね。
――今後の見どころや、視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
第5話では、倉科カナさん演じる根鈴華の背景が、明らかになるのですが、その後もバントマンたちそれぞれの物語が描かれ、なぜ彼らがSBOに集まったのかが見えてきます。
そして、大翔がプロ野球の世界に再チャレンジするのかどうかも今後の展開の軸になるので、期待してほしいですね。
また、これまでもプロ野球に関するさまざまなネタが挟み込まれてきましたが、今後も応援歌が題材になるなど、野球ネタが随所に出てくるので、そこも楽しんでもらえればと思います。
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