「オモニ本店」女将・高姫順が自身に課す“セブンルール”「しょうばいは たべるぶんだけ よくばらない」
11月3日(火・祝)放送『セブンルール』
視聴者が“今最も見たい女性”に密着し、自身が課す“7つのルール=こだわり”を手がかりに、その女性の強さ、弱さ、美しさ、人生観を映し出すドキュメントバラエティ『7RULES(セブンルール)』。
11月3日(火・祝)放送回では、お好み焼き「オモニ本店」の女将、高姫順(こう・きじゅん)に密着。2021年度版のミシュランガイドに掲載された、お好み焼き店5軒のうちの1軒、創業54年の「オモニ」は、価格以上の満足感が得られる店として5年連続「ビブグルマン」を獲得している。
「いくらでも食べられる」と人気のお好み焼きだけでなく、彼女自身もこの店の名物だ。韓国から日本に渡り、21歳で結婚後、店と家庭を支えてきた。人生をお好み焼きに捧げ、大阪を代表する人気店へ上りつめた「オモニ」高姫順のセブンルールとは。
ルール①:キャベツは長めに太く
朝鮮半島から多くの人が移り住み発展してきた、大阪市生野区のコリアタウンに、彼女の店「オモニ本店」はある。「オモニ」は韓国語で「お母さん」の意味だ。
お好み焼きを食べたお客さんは、口を揃えて「ジューシーというかふわふわ。ふわふわとろとろやな」「この食感は(他のお店には)ないんです」と語る。
他の店にはない、ふわふわ食感を生み出す秘訣は、キャベツの切り方にあった。
通常のみじん切りしたキャベツと比べると、同じ量でも、彼女が切ったキャベツは山盛りになる。キャベツを長めに太く、機械を使わずにあえて不均一に切ることで生まれた隙間に空気が入り、「ふわふわ食感」が生まれるのだ。
ルール②:生地の量はスプーン1杯
彼女の1日は、「モーニング」から。ホットコーヒーと朝食を楽しみ、店員とは「あたしが一番若い」「え?どの人?どの人?」と冗談を言い合って笑う。こうしてゆっくりできるのは、次男・ソンホさんが彼女の味を継承しているから。
「粉もさほど入れないで。それでも粉にはしっかり味付けして。この味は守らないけないなと思っています」と、伝統の味を受け継いだソンホさん。
生地はほとんど入れずに焼くのがオモニのスタイルだ。「キャベツからも水分が出てくるし、粉が多かったら胸焼けしてあまり食べられないから」という理由から、生地の量はスプーンで一杯。 カップの底からタネを持ち上げ、空気を含ませながらキャベツに生地を絡めていく。
ひっくり返すタイミングは、研究のたまものだという。そんな彼女の手の指は変形し、何十年もお好み焼きを焼いてきたことを物語る。その手が、今日も誰かを虜にしている。
ルール③:2週間に1度 キムチを漬ける
彼女が韓国・済州(チェジュ)島から日本へやってきたのは14歳のとき、母親の病院代を稼ぐためだった。その後、21歳で結婚すると、ボランティアで学校運営に携わる夫に代わって、彼女が家庭を支えてきた。
そんなとき、長女のあるひと言が人生を変える。
「子どもらが『お好み食べたい』って。お金はないから食べには行かれないし。小さいメリケン粉を1個買ってきて、溶いてやって。ほんだら『オモニイケるわ。イケるわ』って。おいしいおいしいって言うから、『お好み屋でもしようかって冗談みたいに言うたら、『自分らも手伝うからしよう』って」。
そうして始めたお好み焼き作りは、試行錯誤の連続だった。お好み焼きだけでは生計が立てられず、内職をしながら、朝の4時まで注文を受け付ける日々。寝る時間を削って4人の子どもたちを育てあげた。
「ものすごく苦しかったからね。胸が詰まって言葉が出ない。子どもらと一緒に遊びにも行かれんかったし。食べるものもないで。そういう時代が長いこと続いて。いろいろなことがありすぎて、しんどかったです」と、涙ながらに当時を振り返る。
人生を捧げた彼女のお好み焼きは、徐々に口コミで評判が広まり、今では行列が出来る人気店へと登り詰めた。
彼女には、2週間に1度の恒例行事がある。それは、祖国を思い出す、キムチ作り。白菜の葉1枚1枚をめくりながら、赤いペーストを丁寧に塗りこんでいく。
赤いペーストには何が入っているのか、と聞くスタッフに「それは秘密」と言いながらも、「…鰹節とダシじゃこを入れて炊くんです。それに唐辛子やらみりん、いろんなの入れて…」と、あっさりと明かしてくれた。
他では味わえない、彼女のこだわりのキムチ。手作りが、オンリーワンの味を生んでいる。
ルール④:洋服は商店街で買う
鶴橋の駅前商店街にある、行きつけの洋服店にやってきた彼女。
店員にカーディガンを勧められ、「あんまり着いひんねん」と言いつつも、試着すると、「これがええわ」と気に入った様子。赤やピンクなど、好きな色の洋服を選びながら、顔なじみの店員と会話を楽しむ。
「自分の好みをわかってくれているし、地元を大事にするということで」と、洋服は商店街で買うのが、彼女のルールの一つだ。
ルール⑤:まかないは必ず自分で作る
店のすぐ近くにある彼女の自宅では、お好み焼き用のスジ肉が、前日から丸一日煮込んであった。それを使って作るのは、まかない用のカレー。
店で働くスタッフ全員分のまかないを、彼女1人で用意している。かなり手間のかかったカレーだが、「一生懸命やってもらおう思ったら、食べさせたほうがええなと思うから。働いてもらおう思ったら、大事にしておかな」と、その手間も惜しまない。
「オモニ本店」には、外国からやってきたスタッフも多く、彼らの日本の生活を、彼女が家庭の味で支えている。
「本当に親みたいな人です。私にとって」とスタッフの1人が口にすると、彼女も、「私も息子みたいに、何でも言って相談する」とうなずいた。
ルール⑥:毎日 かかと上げを10回する
ある日のオープン前、彼女の姿は公園にあった。
54年間店に立ち続ける彼女。86歳になった今、少しずつヒザに痛みが出てきているという。これからも店に立ち続けるために、今年から筋力アップの体操を始めた。
毎日、かかと上げを10回。その成果か、徐々にヒザの痛みは減ってきているという。「店でもお客さんが(自分を)見て、体弱ってるなって、そんなの見せたくないし」と笑う。
看板娘でもある彼女と会うために店を訪れる人も多い。「お客さんが、あたしに力をくれている。心からほんまに、ありがたいと思うてます」と、感謝の思いをあらわにした。
ルール⑦:よくばらない
道頓堀近くのお好み焼き店「オモニ宗右衛門町店」を訪ねた彼女。孫の仁蓮(じんれん)さんは、この店で店長を務めている。彼女の技は、娘へ、そして、孫へと、3世代に渡って受け継がれている。
夜7時、自宅で勉強を始めた。幼い頃、学校へ通えなかった彼女は、こうして毎晩、字の読み書きを勉強しているのだそう。「小学校の子がやるやつ違います?こんなんやけどね、私らにしたらむつかしい」と、真剣な目で文字を追い、同じ言葉をノートに記していく。
自宅での学習以外にも、週に1度学校へ通っている。86歳になった今でも、勉強を続けるのには、理由があった。それは、これまでの人生で得た経験や教訓を、子どもや孫に文字で残したいという思い。
そんな彼女のノートに記された「みんなへ しょうばいは たべるぶんだけ よくばらない」 。
「目の前のお客さんを大切に」という願いが込められている。「自分がちょっと食べていける範囲で働いて。お客さんを大事にして、そうやってたら、自分も大事にしてもらえるしね」。と、その意図を語る。
お金がない時代、家族のお腹を満たした母の味は、いつしか、大阪だけでなく世界が認める味になった。それでも彼女は多くを求めない。商売は、自分が食べられるぶんだけ稼げばいい。
※記事内、敬称略。
次回、11月10日(火)の『7RULES(セブンルール)』は、企業にとって最適な人材を探し出すヘッドハンター・中田莉沙(なかだりさ)に密着。25歳で「ヘッドハンター・オブ・ザ・イヤー」2020年部門別MVPに輝いた、彼女の7つのルールとは。
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