さまざまな作品で輝き続ける宝塚歌劇団の元スターに、その秘訣やこだわりを語ってもらうインタビュー連載「宝塚OG劇場」。第2回は、星組男役スターとして活躍し、2019年に退団した七海ひろきが登場。

在団中は「風と共に去りぬ」「燃ゆる風-軍師・竹中半兵衛-」「霧深きエルベのほとり/ESTRELLAS〜星たち〜」などで、コミカルな役からクールな男役まで務める“演技派”として注目される一方、親しみやすいキャラクターで多くのファンの心を掴んできた。

退団後は俳優、歌手、声優など多彩な活躍を見せ、10月9日(土)からは、コロッケとともに舞台「令和千本桜〜義経と弁慶/コロッケものまねオンステージ2021」に出演する。

そんな七海へのインタビューを前後編でお届け。後編では、声優の仕事などを通して気づいたことや、宝塚時代から自身の中で一貫していること、逆に変化したことについて聞いた。

<前編「七海ひろき 新しい“義経”に挑戦!舞台では『飛びます!』」はこちら>
<七海ひろき フォトギャラリー(全8枚)はこちら>

声優さんのトーク術に脱帽!「私はちょっとずつ…」

――七海さんは自身のYouTubeチャンネルに、カッコいいライブ映像からクスッと笑える動画まで、面白いコンテンツをたくさんアップしていますが、そのアイデアはどのように浮かぶのですか?

例えば、動画の中で手洗いや体操をする「スタイリッシュシリーズ」は、昨年春〜夏にかけての外出自粛期間中に、ファンの皆さんが“おうち時間”の間も体を動かせるような動画を作ったらいいのではないか、という話が出たのが始まりです。

そこから、「何をしたら皆さんが元気に、笑顔になってくれるか」を、スタッフさんや作成に携わってくれた各方面の方たちにも相談しながら、動画を作っていきました。「こういうのをやってみたいね」と、私がポロっと言った言葉から、どんどんアイデアが膨らんでいった感じです。

――フルアルバム「KINGDOM」収録の全11曲を擬人化した「擬人化総選挙」企画も面白かったですが、やはり何気ない一言から生まれたのでしょうか。

これも「KINGDOM」のジャケット撮影が発端でした。初回限定盤と通常盤で、ちょっと雰囲気が違う写真を撮ったときに、「双子の兄弟みたいだな」と思ったのがきっかけでした。その後、何か面白いことが出来ないかと考えたときに「全部の曲が擬人化したらどうなるんだろう?」と思い、みんなで「どういうキャラクターになっていくんだろう」と、想像がどんどん広がって実現しました。

――どれも楽しくて斬新な内容ですが、七海さんは普段どうやってインプットしているのですか?

今は本当にいろいろな方がYouTubeやLINE LIVEをやっていらっしゃるので、時間がある時に、どういう方がどんなものを配信しているか見ています。すごく楽しいです。

お仕事でご一緒した方の配信コンテンツを「どんな感じなんだろう…」と見てみると、皆さんとても面白くて。特に声優さんは声の引き出しが多いので、ラジオのような声だけのコンテンツもあれば、ご本人が映像出演するものもあって、内容が全然違うので、すごく面白いなと思います。とても勉強になります。

――七海さんは声優としても大活躍ですが、いろいろな声優さんと仕事をして驚いたことはありますか?

イベントなどで特に感じたのですが、皆さんトーク術がすごい!その場を面白くする話術や、人を惹きつける魅力がすごくあります。トークそのものが面白いし、返しも上手い。私は上手に話せないので、いつも「すごい!」と思いながら聞いています(苦笑)。

――トーク力を上げるために、何かトライしていますか?

スキルを上げようと思っていた時期もあったのですが…トーク力は、一朝一夕に上達するものではないことを思い知りました。だから、いろいろな経験をして、ちょっとずつ面白く話せるようになったらいいなと思っています。

――最近共演して、印象に残っている声優さんはいますか?

10月放送開始のTVアニメ『ヴィジュアルプリズン』(TOKYO MXほか)に出演させていただくのですが、この作品では、アニメの中で同じグループの千葉翔也さん、古川慎さん、堀江瞬さんとご一緒する機会が多くて。皆さん、第一線で活躍されている素晴らしい声優さんです。

でも、4人ともどこかほんわかしている、“癒し系の集まり”みたいな雰囲気があります(笑)。一緒にインタビューを受けたりしているうちに、だんだんと4人のトークの流れというか空気感がわかってきて、そういう感覚もすごく楽しいなと思っています。

独りではなく“みんなと一緒に作る”七海ひろき

――舞台に立つ日のルーティンを教えてください。

昔から、舞台に立つときは「左足から靴を履く」と決めています(笑)。これは今も続けています。なんとなく左から履いたほうが、気合が入る感じがして。昔からやっていることなので、もう変えないほうがいいかな、これは守っておこうと思って続けています。

あとは、舞台に立つ日というか最近続けているのが、コロッケさんから教わった「顔の筋トレ」です!コロッケさんは表情筋の動きが本当に豊かなんです。表情筋がよく動くことによって、表現の幅が広がるとおっしゃっていたので、私も「やってみよう!」と思って実践しています。表情豊かになるだけでなく、滑舌も良くなると思うので、毎日動かしています。

――宝塚を退団してから約2年半が経ちますが、宝塚時代から、作品に出演する上で心がけていることはありますか?

どの作品に出演するにしても、自分は誰に向けて発信しているかというと、やっぱり見てくださる方だということ。そのことを、何をするときも常に忘れてはいけないと思っています。

声優のお仕事では、ある一行のセリフを1人に向けて言っているのか、もっと多くの人たちに対して言っているのか。それによって、セリフの発し方が変わってきます。今までやってきた舞台のお芝居とは違う部分だと実感しています。まだまだ勉強中です。

役を通じて届けたい思いや言葉は何かを考えることは、演じる上でとても大切にしています。そこは譲れない部分だと思います。

――逆に退団後、ご自身の中で変わったなと感じる部分はありますか?

1つひとつの作品や役に対してきちんと向き合いたいという思いは、もちろん退団してからも今も変わりません。宝塚はとても確立された世界で、その中でいかに自分自身や役を表現していくことができるかを考えていました。退団してからは本当にいろいろな活動をさせてもらっており、大きく広がった世界で自分に何ができるかを考え、表現するかが大事だなと感じています。

――新たな広い世界で表現者として活躍するために、どんなことを意識しているのでしょうか?

宝塚にいたときは、役をどう演じるかなどを自分自身で考え深めていき、それを皆さんにお披露目するという意識が大きかったです。

今は、色々なことにチャレンジさせていただいているので、自分だけではなく周りの皆さんと一緒に成長しながら、目標に向かっていく感覚になりました。“1人で作り上げる七海ひろき”ではなく、“みんなと一緒に作っていく七海ひろき”です。

「みんな」というのは、応援してくださるファンの方々や、スタッフの皆さん、新たに七海ひろきを知ってくださる方、そこからファンになってくださる方、全員です。今後もたくさんの方々から刺激をもらい、新しい自分と出会いながら、一緒に成長していきたいです。

撮影:河井彩美

<「令和千本桜〜義経と弁慶/コロッケものまねオンステージ2021」公演情報>


ものまね界の帝王コロッケと、元宝塚歌劇団男役スター七海ひろきの、異色のコラボが実現した究極のエンターテインメント。

出演:コロッケ、七海ひろき 、高橋健介、蒼木陣、日向野祥、矢島舞美
   上田堪大/川原一馬(ダブルキャスト)

10月9日(土)~10月21日(木)/ 明治座

最新情報は、「令和千本桜〜義経と弁慶/コロッケものまねオンステージ2021」公式サイトまで。