ゲームエンジン、仮想現実(VR)、さらに人間の創造性を超え得る生成Alなどのテクノロジーを採用した作品を展示する『マシン・ラブ:ビデオゲーム、AIと現代アート』。
6月8日まで森美術館で開催中で、ゲームなどが苦手な人にも、“今、デジタルでどんなアートが可能なのか”がわかる興味深い展覧会です。
デジタル度合いの低い筆者は、タイトルにAIが入っていた時点で、正直、自分には理解できない展覧会なのでは、と不安だったものの、入り口にわかりやすい用語解説があって、不安が払しょくされました。

かつて75億円の値をつけたアーティストの作品も!
しかも、最初の作品は、わかりやすく、とっつきやすい、アメリカ人アーティストのビープルによる「ヒューマン・ワン」から。
メタバース=3次元のデジタル仮想空間の中で作られた人間がデジタル世界を旅する、というテーマで表現された直方体のアートで、旅が続くように映像もアップデートを続けています。
そう、写真や絵では叶わないアップデートが、デジタル作品ではできるのです。

ビープルは、2007年から毎日1枚のデジタルアートを作ってオンライン投稿するプロジェクト「エブリデイズ」をはじめ、2021年に「エブリデイズ:最初の5000日」がクリスティーズのオークションで約75億円という記録的な高値で落札され、一躍有名になったといいます。

次の部屋は、ガラッと変わって壁一面が、ゲームの素材として使われる少女や動物などの無形のキャラクターデータである「アセット」で埋め尽くされています。
作者の佐藤瞭太郎さんは、以前はリサイクル商品などで作品を作っていたそうですが、コロナ禍でアトリエが使えなくなり、大量のキャラクターや小道具のアセットを拾うことができるCGの仮想空間での創作をはじめたといいます。

コロナ禍だからこそ生まれた作品をもう一つご紹介。
ニーズの高まった自宅などへの配達サービスのため、最短距離、最短時間に挑む女性配達員が主人公の「デリバリー・ダンサーズ・スフィア」。

ビデオ、VR、ゲームなどを制作する韓国のキム・アヨンさんの作品で、ソウルの街中で撮られた実写とCGとソウルの街のスキャンという3つの映像から成り立っていて、リアルに走行しているかと思えば、時間や空間が変化したりするので、その展開にハラハラドキドキさせられます。会場内には実際にプレイできるゲーム版もあります。
