さまざまな世界で活躍しているダンディなおじさまに、自分の人生を語ってもらう「オヤジンセイ~ちょっと真面目に語らせてもらうぜ~」。

年を重ね、酸いも甘いもかみ分けたオトナだからこそ出せる味がある…そんな人生の機微に触れるひと時をお届けします。

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今回は、3月12日公開の映画「ウェディング・ハイ」に出演している俳優・高橋克実さんが登場。故郷である新潟を離れようと決めた理由、そして上京後の暮らしについて振り返ってもらいました。

中学時代の夢は「CMディレクター」

高校を卒業する18歳まで新潟県三条市で暮らしてましたが、やっぱり頭にすぐ思い浮かぶのは冬の光景ですね。消雪パイプ(※道路に積もった雪を溶かすための水が出る設備)とか、屋根から下ろした雪を流すための側溝とか。

先日、年齢の離れた同郷のスタッフさんと「年末はやっぱ『のっぺ』(※新潟の郷土料理)を作るんでしょ?」という話で盛り上がりました。でも、同じ新潟といっても広いから、必ずしも具材が共通ではないんです。うちはホタテと、乾燥したどんこ椎茸を戻したもの、サトイモ、ニンジン、かまぼこ、たまにイクラを湯がいて乗せたりしていました。そこにクワイや鶏肉を入れるところもあるんですけど、そこは地域や家によっても、いろいろと違うんですよね。

どうして新潟を離れたのかというと、とにかく「東京」に行きたかったからなんです。僕の中では、小さい頃から「東京は空が青い」というイメージで、テレビで見る東京の空が憧れでした。新潟は11月から4月くらいまで日照時間も短く、空がほぼグレーですから。

中学校くらいの時には、「コマーシャルを作る人」になりたいと思っていました。今でいうCMディレクターですね。当時、杉山登志さんという素晴らしい才能のディレクターさんがいらっしゃって、印象的なCMがすべてその方の作品で、その影響だったと思います。

でも、今と違ってまったく情報がない時代でしたから、CMディレクターになるためには広告代理店に入らないといけないということも知らず、ただ漠然と「なりたい」と考えていただけでした。

1年だけの約束で東京へ!しかし予備校に行かずロケ地巡り!?

本来ならば、地元で金物屋を営んでいた実家を継ぐ予定だったのですが、そのための修行を避けたくて、高校3年の時、いきなり「東京の大学を受けさせて下さい」と、親に申し出たんです。それまで開いたこともなかった赤本を机の上に並べたりして。結局、半ば狙い通り浪人して、1年だけの約束で東京の予備校に通うことになりました。

当時、僕の通っていた予備校は井の頭線の富士見ヶ丘、寮は東松原にありましたが、まずしたことといえば『俺たちの旅』(日本テレビ系※中村雅俊主演の青春群像劇)のロケ地を巡ること(笑)。

他にも、当時のエンタメ好きな若者たちのバイブル的な存在だった情報誌「ぴあ」を片手に、新宿昭和館や飯田橋のギンレイホールといった二番館、三番館(※封切られて1年以内の映画を2本立てなどで上映していた映画館の呼称)を、映画好きの予備校の友だちと片っ端から回っていました。

「とてつもなく大きかった」上京1年目の日々

毎日そういうことばっかりしていたから、しまいには「予備校に来ないなら寮から出てくれ」と言われたのですが(笑)、振り返ると上京1年目の1979年、昭和54年は僕のその後の人生にとって、とてつもなく大きかったです。

まだ一般家庭にビデオが普及していない時代だから、映画は映画館で見るしかなかったんです。一緒にたくさんの映画を観歩いた当時の友人が一昨年亡くなられたのですが、彼がいなかったらここまでこの世界にのめり込まなかったかもしれない…と、思い出したりしています。

1980年代に入ると本多劇場ができて(1982年)、下北沢で演劇が盛んになっていきました。石橋蓮司さんが立ち上げた劇団「第七病棟」に知り合いがいた関係で、稽古場を見学に行ったこともありましたね。

そこで、映画で拝見していた石橋さんを生で見て「うわ!石橋蓮司だ!」「うわ!緑魔子だ!」ってひたすら興奮していました。思えば僕はずっとそういう感じで、今日まで来たような気がします。

生まれ育った故郷を離れ、映画と共に東京生活を謳歌していた高橋さん。後編では下積み時代の思い出、そして大事な娘さんが将来、結婚式を迎えた時、父親としてどうするのかに迫ります。

【思い出の品】浅丘ルリ子さん自作のアクセサリー

浅丘ルリ子さんとは、ドラマ『すいか』(日本テレビ系/2003年)で仕事をさせていただきました。小林聡美さんをはじめ女性がメインの作品でしたが、僕もみんなと一緒にご自宅にお招きいただいて。カラオケをしたり、昔の日活の話をお聞きしたりして、至福の時間を過ごさせていただきました。

しばらくご無沙汰していたのですが、去年、偶然レストランでお会いした時に、娘にルリ子さんから手作りのアクセサリーをいただきました。これはそのついで、ということでルリ子さんからいただいたものです(笑)。ありがたいのでいつもカバンに入れて大事にしています。

撮影:河井彩美
取材・文:中村裕一

<映画「ウェディング・ハイ」ストーリー>

結婚式、それは新郎新婦にとって⼈⽣最⼤のイベント。

ウェディングプランナーの中越(篠原涼⼦)に⽀えられ、新郎・彰⼈(中村倫也)と新婦・遥(関⽔渚)のカップルも幸せな式を迎える、はずだった…。

しかし、スピーチに⼈⽣を懸ける上司・財津(⾼橋克実)をはじめ、クセ者参列者たちの熱すぎる思いが⼤暴⾛。式はとんでもない⽅向へ…!?

中越は披露宴スタッフと共に数々の問題を解決しようと奔⾛するが、さらに新婦の元カレ・裕也(岩⽥剛典)や、謎の男・澤⽥(向井理)も現れて…。

果たして絶対に「NO」と⾔わない敏腕プランナーは、全ての難題をクリアし、最⾼の結婚式を2⼈に贈ることが出来るのか──︖

映画「ウェディング・ハイ」は、3月12日(土)ロードショー。

最新情報は、映画「ウェディング・ハイ」公式サイトまで。