仕事もプライベートもバイタリティー溢れる女性を特集する『パワフル女子名鑑』。今回は、ファッション業界の最前線で活躍し続けるデザイナーの津森千里さんにインタビュー! パワフルに活躍し続ける秘訣、仕事に対する姿勢や、成功を掴むために必要なマインドについて迫る。
32歳で立ち上げた世界的ブランド「TSUMORI CHISATO」
「TSUMORI CHISATO(ツモリ チサト)」のデザイナーである津森さんは、世界にその名を轟かせる、日本有数のトップデザイナーの1人。
1983年、「IS.Chisato Tsumori Design」のブランドをスタート。1990年には、自身の名前をブランド名として掲げた「TSUMORI CHISATO」を立ち上げた。その当時、まだ32歳であったというから驚きだ。
パステルカラーをベースにした心躍る色使いや、見る者を魅了するファンタジックなデザインは、国内はもちろん世界中から注目を集めた。
ブランド創設30年「子供の頃からずっと“お人形さん遊び”をやり続けているんだと思う」
デザイナー自身の「好きなもの」や「興味のあること」を表現したというTSUMORI CHISATO。一体どういう思いで立ち上げたのか?デザイナーを目指すまでの過程や想いを尋ねると、少女のような笑顔でこう答えた。
「私は子供の頃からお人形さん遊びが大好きで、よく服を作ってあげては“着せ替えごっこ”をしていました。生地に穴を開けてチクチク縫って、出来上がったワンピースをかわいく着せて…それがすごい楽しくてね。私にとってデザイナーの仕事は、その延長戦上にあるようなもの。服を着せる対象がお人形から人間になっただけで、基本的には今も昔もずっと『お人形さんごっこを続けている』。そんな感覚なんです。
ただシンプルに『かわいい服をずっと作っていたいな』と思いながらやって来たので、実はブランドを立ち上げる時も『独立するぞ』なんて野望みたいなものは持ってなかったんですよ。好きなことをやり続けて来たその先に、デザイナーとしての”今”があるという感じです」
服のコンセプトは「ミューズ・バイ・マイセルフ」ヒントは何気ない日常に
ブランド「TSUMORI CHISATO」は、津森さん本人が本当に欲しいと思うもの・着たいと思うものを軸にデザインが生み出されている。そのため、自身が“かわいい”と思う直感を大切にしているというが、そのインスピレーションはどこから沸いてくるのだろう。
「映画を見たり、読書をしたり、景色を眺めたり。そういう何気ない日常の中からインスピレーションを受けることが多いです。街ゆく人の服の色がパッと目に飛び込んできて、これだ!って閃くこともありますよ。空や木々、自然の色も大好き。そういう “ かわいい”ものを感じとることに、もしかしたら人一倍敏感なのかもしれません。アンテナは常に張り巡らせています」
思い浮かんだ素敵な色やデザインは「忘れないように描き残しておきたい」という津森さん。ペン、クレヨン、絵具を使って、頭の中をそのまま真っ白な紙の上に描き出すその作業は、「頭の中を投影したようで楽しい」と話す。
「昔はカラーペンをどっさり持ち込んで、飛行機の中でイメージを描くなんてこともありましたね。移動中って集中できるんですよ。でもここ最近は、出先ならiPadを使うことの方が多くなったかな。ふと降ってきたデザインを描きおろすのに便利なんです。でも、iPadの色味調整にどうしても限界があるので。“好きな色”を自由に表現するとなると、私はやっぱり断然カラーペンで描く方が好き。
思い描く服のコンセプトは “ミューズ・バイ・マイセルフ(自分をミューズに)”。自分が着たいと思うものを、自分が一番似合うと思って作っているから」
津森千里の人生は「かわいいモノ探し」の連続
平成から令和へと時代を超え、素敵な服を作り続けている津森さん。そのパワーの源は一体何だろう。彼女は「子供心を忘れないこと」と言って微笑んだ。
「私ね、昔から本当にかわいいものが大好きなの。大人になってからは海外の旅先で見つけた雑貨をアレコレ集めてみたり。まるで宝探しを楽しむかのように、“かわいい”を探し集めて生きています。
『あ、これかわいい!』って思う気持ちは、いくつになってもなくしたくないですね。私がデザイナーとして大切にしているのはそういうこと。女性は皆さんかわいいものが好きなものだと思うけれど、私はきっとそれが人一倍強いのかもしれない。
だから、かわいいと思ったら描くし、描いたものは必ず作る。そういう気持ちが、私のデザイナーとしての原動力になっているんじゃないのかな。
サンプルの服が上がっていても、もっとこうした方がかわいいって思うポイントが見つかったら、何度だって変えますよ。だって(アイディアが)降ってきちゃったんだもの。自分の中でピン!とくる直感、それはもう絶対に大事にしないと」
「ネバーギブアップ」の精神で、終了間際のアパレル事業を再スタート
婦人服のアパレル契約満了により、2019年のコレクションを最後に国内販売を一旦終了することを発表したTSUMORI CHISATO。青山の路面店をはじめ全店舗が閉店。そのような危機的状況に直面した時、世界的デザイナーは何を思っていたのだろうか。その心の内を聞いてみた。
「あまり落ち込まないタイプでなのですが、それでもショックといえばショックでした。でも『作りたいものを作り続けたい』という気持ちは変わらずあったし、だったら自分でやればいいかなって。それで、私の事務所であるT.C.(ティー・シィー)で続けることにしたんです。ありがたいことにロシアや香港からも、店舗継続を望む声をいただいていたので、そういう背景も後押しになりました」
「T.C.で事業を引き継いで一番良かったなと思うのは、受注生産方式にしたこと。受注を受けた分だけ作るから、売れ残って捨てられることがなくなったんです。店舗をもっているとこうもいかないでしょ。今のファッション業界は国内だけでも年間何十億点も服を作って、その約半分が消費されていないという課題を抱えているの。こうして環境に優しい服作りができるようになったのは、すごく嬉しいことですね。
そういう経緯から、2020年秋冬コレクションは素材選びにもこだわりました。たとえばポリエステルをシルクに、綿をシルク綿に変更して。化学繊維よりも自然の素材を使うようにしたんです。その分お値段は少し上がっちゃうけれど、良い素材を使ったものの方が愛着を持って長く着てもらえるから。長い目でみたら、人にも地球にも優しいですよ。
また、信頼のおけるチームで仕事ができるというのもありがたいなと思っています。今のスタッフは、元々一緒に服を作り続けてきた仲間なんですよ。それと、家族にも経営を支えもらっていて夫と息子も手伝ってくれています。8人という少数精鋭ではありますが、信頼のおけるチームでやっていけることは、私にとってはやっぱり大きいですね」
アイディアを詰め込むのに必要なのは、旅先での「放電」
ポジティブでバイタリティー溢れる津森さんも、時には疲れてしまうこともあるという。そんな時は一体、どのようにしてパワーを充電しているのだろうか。
「頭の中でいろんな想いをグルグル巡らせていると、やっぱりどこかで疲れてしまう時もあります。そういう時はね、“放電”しに行くの。都会を離れて自然に触れる。全部出し切って空っぽにして、自分をリセットするんです。
そのためにはやっぱり旅行。国内もいいけれど海外に行くことの方が多いかな。最近はマレーシアのコタキナバルに行きました。青い空と海に囲まれて、心身ともに浄化された気分。頭の中がいっぱいだと、いくらアンテナを張っても情報をキャッチすることができないでしょ?インプットするために、アウトプットが必要。だから、“充電”ではなく“放電”なんです」
自身の経験を経て、頑張る女性たちにメッセージ
何十年もの間、鮮やかに輝き続ける津森さん。その人生にはきっと、我々が学ぶべき教訓が詰まっていることだろう。そこで、読者の皆さんに向けてメッセージをもらった。
「好奇心を忘れずに、常に色々なものに興味を持つことですね。机やパソコンに向かっているだけの狭い世界にいちゃダメ。世の中には楽しい!と思えることがたくさん溢れているのに、1人鎖国状態になっちゃうなんてもったいない。小さな幸せで充分だって思っているのかもしれないけど、世界は大きいよ。色々なところに旅行に行って、きれいなモノを見たり新しいことを経験したり…自分の世界をぜひ広げてみてください。
そして、『これでいいや』じゃなくて『これがいい』って思うものを見つけて欲しい。もっともっと!って、自分の“好き”を追求するハングリー精神を持ちましょう」
「TSUMORI CHISATO」は受注会にてコレクションを発表しているが、ECサイトにてコレクションの一部が購入可能。
▶ https://tsumorichisato.shop-pro.jp/
また、このインタビューで撮影した 「20AW コレクションルックブック」もダウンロード可能。ワクワクする「TSUMORI CHISATO」の世界を閲覧できる。
▶https://we.tl/t-bHeow2k1Yy
最新情報はブランドサイト、デザイナー自ら発信するInstagramにてチェック!
ブランドサイト: http://tsumorichisato.co.jp/
デザイナーInstagram: https://www.instagram.com/tsumori_chisato_designer/