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2022年10月23日 |

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脚本家・渡辺あやが語る『エルピス』制作の舞台裏「長澤まさみさんの存在感が大事な要素に」

10月24日（月）放送スタート！毎週月曜22時～『エルピス—希望、あるいは災い—』（初回15分拡大）

めざましmedia編集部

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脚本家・渡辺あやさんが、脚本を書くうえで大事にしていることを語りました。

長澤まさみさん主演の月10ドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—』（10月24日スタート／カンテレ・フジテレビ系）は、実在の複数の事件から着想を得て制作された社会派エンターテインメント。

スキャンダルによって、エースの座から転落したアナウンサー・浅川恵那（長澤）と、彼女に共鳴した仲間たちが、10代女性を狙った連続殺人事件の犯人とされ、死刑が確定した男性の冤罪疑惑を追うなかで、一度は失った“自分の価値”を取り戻していく姿を描きます。

本作の脚本を担当するのは、連続テレビ小説『カーネーション』（NHK）や映画「ジョゼと虎と魚たち」をはじめ、数々の名作ドラマ・映画を世に送り出してきた渡辺あやさん。本作が民放連続ドラマの初執筆となります。

その渡辺さんにフジテレビュー!!がインタビュー。『エルピス』が生まれた経緯や本作へかける思い、そして脚本家として大事にしていることなどを聞きました。

始まりは2016年の春。当初はラブコメを作る予定だった！？

＜渡辺あやインタビュー＞

──まずは、『エルピス』というドラマがどのように立ち上がったのか、経緯を聞かせてください。

初めてプロデューサーの佐野（亜裕美）さんとお会いしたのは、2016年の春です。当時佐野さんは、関西テレビではなく、別の会社にいらしたのですが、そのときに私と連ドラの企画を考えたいとお話をいただいたのが始まりでした。

佐野さんは「企画が通りやすい」ということでラブコメを考えていて、私もラブコメはやってみたかったですし、考え始めたのですが…全然話が盛り上がらなくて（笑）。それよりも「今の政治はおかしいよね」というような話になると、私たちは盛り上がる感じでした。ですから、途中で「佐野さんとラブコメをやっても面白くはならない」と悟りました。

せっかくなら佐野さんと2人で、同じ熱量で作っていけるものがいいと思い、話を続けていくなかで、今回の企画が立ち上がりました。

──冤罪事件を扱うということは、どのように決めたのでしょうか？

佐野さんは、日本の裁判制度や事件がどのように裁かれているのかなどに興味を持たれていたんです。

それでいくつかの…主に冤罪事件のルポタージュを見せていただいたのですが、私は初めて知ることも多く「今の日本で、こんなことが起こっているのか」とショックを受けました。この国の国民として生きている以上、裁判制度は正しく行われていると信じたいですが、必ずしもそうではないんだ、と。

過去にもたくさん冤罪事件は起こっているし、もしかしたら今も起こっているかもしれない、という恐怖を感じましたね。そこから、『エルピス』の物語を作り始めました。

──脚本の執筆にあたって、取材などはしましたか？

本作は、落ち目のアナウンサーとバラエティ番組のスタッフの物語なので、実際に現場を見学させていただきました。あとは、佐野さんが過去に情報番組もドラマもやっていらして、報道関係の知り合いもいて、とてもお詳しいのでいろいろと話を聞かせていただきました。

リスクがある作品だけに「最後まで油断できません」

──2016年から約6年かけて形になってきた今の心境を聞かせてください。

まだ「信じられない」というのが正直なところです（笑）。お察しの通り、ここにたどり着くまでにたくさんのハードルがありました。

冤罪事件をテレビ局で報道しようとしたときに社内でどんな問題が起きるのか、それをどのようにクリアしていくのかという話なので、そういうドラマをテレビ局で放送すること自体にハードルがあると思います。そこが一番のネックになり、今日に至っていて…。

そのハードルを佐野さんが越えてくださり、関西テレビの懐の深さもあって『エルピス』は実現しました。いまだに信じられませんし、いつなんどき何が起こるか分からないので、まだヒヤヒヤしています。

──放送が始まってみないと、安心できませんか？

そうですね。放送されたとて、さまざまなリスクがあると思いますし、ご批判もあると思っているので、最後まで油断できません。引き続き、楽観せずにいようと思っています。

──そのハードルがありながらも、作品をつくることを諦めなかった理由は？

ひと言で言うと、佐野さんの熱意ですね。この企画が立ち上がったときに、佐野さんが前の職場に提案をしてくださっていましたが、却下されていたんです。

その時点で私は「じゃあ、ラブコメを書きますか」と思っていたんですけど、佐野さんは「今さら、あやさんとラブコメなんかやりたくない。必ずどこかで成立させますから、この作品を書いてください」とおっしゃって。佐野さんの熱意だけを信じていました。

──演出を大根仁さんに依頼した理由を聞かせてください。

大根さんは、人物を立体的に描くことにすごく長けた方。この物語の一番の見せどころは、それぞれのキャラクターの存在感や葛藤だと思うんです。そこを撮っていただくために、一番理想的な監督だなと思っていました。

ドラマの企画が動かせるとなってから、私と佐野さんで、大根さんのところに行ったのですが、大根さんにも直接そのようなお話をさせていただき、お願いしました。

──脚本家の方が、そこまで主体的に動くことはよくあるのでしょうか？

他の方のケースを存じ上げませんが…演出の方は現場に立って、役者さんたちとの信頼関係を築くなど、そういうところも大切ですし、私たちが「この方」と信頼できる方にお願いをしたかったので、佐野さんと考えて決めました。

長澤まさみは「人間的で、かわいらしい方」

──撮影現場には、見学へ行きましたか？　

この前うかがったのですが、すごくいい現場でしたね。どのポジションにいる方も、すごく本質をつかんでお仕事をされていて。静かに熱中していらっしゃる感じがしました。

──主人公の恵那を演じる長澤まさみさんの印象はいかがですか？

長澤さんは、この作品の物語を考えていたときに、最初に思い浮かんだキャスト。私は当時、まだ長澤さんとお会いしたことがなかったのですが、いろいろなメディアでお見かけしたときの印象として、表情に弾力性を感じていたんです。

表情がすごく豊かで、落ち込んだときと、元気なときの幅がすごく大きな方なんじゃないかなと思っていて。いつも自分のベストを保っていられる人より、ご本人の中に揺れ幅がある人のほうが、私は役者さんとして魅力を感じるんです。

恵那は、まさにそういう人。本来能力があって、エネルギーがあるけど、女性アナウンサーという仕事をしていくなかで、エネルギーを殺さないと生きていけないような状況にあるというところから物語がスタートし、その彼女自身が復活していくという物語でもあって。

長澤さんは、序盤のエネルギーが低い位置にあるところから、復活していくときの伸び幅を表現できる方じゃないかなと思っていました。

──実際にお会いしていかがですか？

すごくそこのバランスを持っていらっしゃる方ですね。意外と明るいだけではない、ひねくれたところもありそうな、人間的な方ですごくかわいらしい方だなと感じました。

──その長澤さんの存在が、脚本に影響したことはありますか？

あります。最初に長澤さんを主演にしようという話が佐野さんとの間に出たときに、「長澤さんがエースの座から転落した女性アナウンサーだったらどうか」と、まずキャラクターの実在感のイメージができましたし、「こういうふうに悩むんじゃないか」という想像もすることができました。

長澤さんという人の存在感が、このドラマにとってすごく大事な要素になりましたね。

──このドラマで、視聴者に伝えたいことは？

まずは、作品をつくり始めた当時の私のように「冤罪事件は本当に起こっているんだ」ということをご存じない方もたくさんいらっしゃると思うので、そういう方に現実をお伝えしたいです。

そして、登場人物たちは「正しいことをやりたい」「正しくないことを正したい」と思い、いろいろ格闘しますが、「何が本当に正しいのか」ということは言えないな、と脚本を書きながらずっと自分の中で揺らいでいました。

一見、正しいと思われていることも、実はそれによって歪められることもある。何が正しくて、正しくない、ということはひと言では言えない。そのことも共有していきたいな、と思います。

「人」を書くことが一番楽しい

──脚本を書くときに共通して大事にしていることはありますか？

一番書きたいと思っていることは、どの作品においても「人」。キャラクターの魅力や関係性が書きたいというのが共通していると思います。

出てくる人たちが決して優秀でなくても、「こういう人、いいよね」と思われる人でなくてもよくて。むしろそうじゃない、「こういう人、実際にいたら困る」という人でも、ある関係の中ですごく輝くことがある、ということを描きたいと思っていますね。

「人」を書くことが、一番楽しいです。

──仕事や作品を選ぶ基準はありますか？

企画を持ってきてくださった方と自分との間に、何が見つけられるかということが一番大事かなと思っています。

私とその人だからこそつくれるものが見つかったときはやれるし、見つからなければやれない。単純にそれだけです。今回は、本当に佐野さんとの出会いが大きかったですね。

──今後、書きたいと思っているテーマはありますか？

常にぼんやりと興味のあるテーマは浮かびますが、それを自分だけで形にすることはなくて。シュッと焦点を結ぶ瞬間というのは、誰かと出会ったとき。それまでは全部保留にしています。

──渡辺さんにとっては、誰かとの出会いが作品を動かす力になるということですね。

映像作品を立ち上げることは難しいことですし、長尺のものになってくると「最後まで面白いもの」を作ることはかなりハードルの高いこと。私1人が盛り上がったところで、それを同じ熱量で共有してくれるプロデューサーや監督がいないと、なかなかうまくいかないです。

あとは、実際に物事を進めてくれる人と「作品の誕生の場」を共有したいという思いもあります。その瞬間をきちんと共有しないと、プロデューサーや監督にとってただ「渡辺あやが書いたもの」になってしまい、受け取ったほうは多少なりとも人ごとになってしまう気がするので。

「確かに生まれてきた瞬間を共有しましたね」という体験は、そのあとの完成に至るまでの過程ですごく大事になる気がするんですよね。ですから、出会いは大切にしたいと思っています。

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