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「怪物」がトロント国際映画祭でプレミア上映!是枝裕和監督は、観客と質疑応答を実施_site_large

「怪物」がトロント国際映画祭でプレミア上映!是枝裕和監督は、観客と質疑応答を実施

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6月2日より公開された映画「怪物」が、第48回トロント国際映画祭のスペシャルプレゼンテーション部門に参加、9月10日(日)(※現地時間)には北米プレミア上映がされました。

上映前には、現地入りした是枝裕和監督が登壇し「『幻の光』以来の、自分で脚本を書いていない映画になります。坂元裕二という、僕が一番尊敬する人気脚本家と、初めてタッグを組んで作った映画です。いつもとはちょっと違うアプローチの仕方で作った映画なんですけれども、脚本家との共同作業というのはとても新鮮で、普段自分では書けないセリフ、作れない構造をもった映画になったのではないかなと思っております」とあいさつ。

さらに上映後には、会場を埋めた523人の観客との質疑応答を実施し、大いに盛り上がりました。

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42の映画祭での上映が決定&190以上の国と地域での配給も

同作は、今年5月、カンヌ国際映画祭での【脚本賞】【クィア・パルム賞】受賞から始まり、その後もシドニー映画祭、ミュンヘン国際映画祭、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭(チェコ)、ニュージーランド国際映画祭、ニューホライズン国際映画祭(ポーランド)、メルボルン映画祭、シネフェスト・ミシュコルツ国際映画祭(ハンガリー)、アトランティック国際映画祭(カナダ)、サン・セバスティアン国際映画祭(スペイン)、カルガリー国際映画祭(カナダ)、モンテレイ国際映画祭(メキシコ)、バンクーバー国際映画祭(カナダ)、釜山国際映画祭、ロンドン映画祭、ミルバレー映画祭(アメリカ)ほか、計42の映画祭での上映が決定(9月11日現在)。

さらに、現在190以上の国と地域での配給が決まっており、すでに公開を迎えた香港やシンガポールでは「万引き家族」と同等もしくはそれ以上の成績をたたき出すなど、世界的にも大きな反響があります。

是枝監督作品のトロント国際映画祭への出品は、2019年の「真実」、22年の「ベイビー・ブローカー」での同部門出品に続くものとなり、最高賞にあたる観客賞の選考対象となります。

<是枝裕和&坂元裕二の初タッグ作がカンヌ映画祭で脚本賞受賞!次回作の期待に「チャンスがあれば」>

<トロント国際映画祭 質疑応答(抜粋)>

モデレーター:本作は「幻の光」以来初の、脚本家と共作された作品となります。坂元裕二さんとのコラボレーションについて教えてください。また本作は、坂本龍一さんが作曲した最後の映画スコアになると思いますので、彼との共同作業についても教えてください。

是枝:そうですね。とても刺激的でしたし、お二人との共同作業というのは、今も自分の中にとても大きな実りとして、財産として、残っております。

2018年の暮れなので…「Shoplifters(万引き家族)」が出来上がった直後に、プロデューサーを通して坂元さんから「監督をしてほしい」という依頼があって、そこで参加をして、プロットから脚本にしていく3年間を一緒に定期的に意見交換しながら作り上げていきました。

そういう意味で言うと十分咀嚼(そしゃく)をしたうえで、撮影現場に臨めたのが良かったのかな。

それが幸いにも、という言い方は出来ないんだけれども、コロナの時期がありまして、そのために映画制作が一旦ストップしたものですから、その分、じっくりとこの企画と向き合う時間を作れたのが良かったのかなと思います。

最初にプロットに書かれていた設定が東京の西のはずれで、街の中に1本の大きな川が流れているという設定だったのですけれども、東京という街がとても撮影に不親切なので撮影許可が出なくて、東京以外の街でどこがふさわしいのかというのを探しはじめる中で、川を湖に代えてみようというアイデアが出まして。

坂元裕二さんにも一緒に見に行っていただいて、映画の冒頭に使わせてもらいましたけど、真っ黒な湖の消防車が走る夜のシーン、あの風景を見た時に「ここで出来るな」と思ったと同時に、ここにピアノの曲が入るな、坂本龍一さんのピアノの曲が良いなと直観的に思いまして、僕の中でその段階で、この映画の音楽は坂本龍一さんに頼みたいなと決まりました。

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登場人物が英語が書かれている服を着ているのはなぜ?

女性の観客:素晴らしい作品をありがとうございます。とてもとても好きな作品でした。質問は台風のシーンについてです。「海よりもまだ深く」にも台風の描写があったのを思い出しましたが、監督にとって台風には何か意味があるのですか?台風のシーンを使う意図などがありましたら、教えてください。

是枝:これは最初、坂元さんの書かれたプロットの中にも、台風の描写というのは書かれていまして。偶然というかですね、僕も坂元裕二さんも世代的に言ってもタイプ的に言っても、相米慎二という映画監督がとても好きで、相米さんという名前を皆さんどのくらいご存じかわかりませんけれども、相米さんの映画の中に「台風クラブ」という傑作がありまして、これが台風をめぐる話なんですよね。多分、プロットを読んだ時に僕が思い浮かんだのも、その作品でした。

男性の観客:素晴らしい作品をありがとうございました。登場人物がこんなにたくさんの英語の文字が書かれている服を着ているのを、他の外国作品であまり見たことがないのですが、何か意図があるのですか?

是枝:あまり意味もなく、日本の子供たちは…大人もそうかもしれないけれど、英語が入ったTシャツを着ているので、それほどその文字に意味を込めてはいないんですけど。

衣裳の黒沢和子さんが選んでくれたものです。何か気になった言葉がありましたか?

男性の観客:お母さん役の方(安藤サクラさん)が「A LIGHT THAT NEVER GOES OUT」という、美しい言葉が描かれたTシャツを着ていたのが、彼女のキャラクターにとても合っていると思ったのと、サクラさんが依里(柊木陽太さん)の家を訪ねるシーンで、依里が「WORKING CLASS」と書かれているパーカを着てるのが気になりました。

子役の演技について「今回は、今までとはちょっとアプローチを変えている」

男性の観客:二つ質問させてください。一つ目は、子役の素晴らしい演技を拝見するのはこれが初めてではありませんが、どうやって子役からあの演技を引き出すのですか?二つ目は、監督の今までの作品群と比較すると、本作は他のものより若干ダークな物語になっているかと思うのですが、この素晴らしい脚本ができた経緯を教えてください。

是枝:自分で書くと、どんなキャラクターの中にもちょっとした笑えるような要素みたいなものをどうしても書こうとするのですが、今回は自分で書いていないから、人間の持っている可能性みたいなものが良い面も悪い面も、自分が書くよりも少し輪郭がくっきりはっきりしているし、やや幅が大きく、広いんだよね。それが僕は新鮮だったんですよね。

そこは修正せずに、むしろ脚本に沿う形で人物造形というのはやったつもりです。それが多分、少し自分で書いてきた人物像とは違うニュアンスで受け取られているのかもしれません。

子役については、今回は今までとはちょっとアプローチを変えていて、いつもは子どもには台本を渡さずに、現場でその選んだ子どものパーソナリティとボキャブラリーに沿う形で、僕が“口伝え”でセリフを与え、感情を説明していくというやり方を取ることが多いのですが、今回は選んだ子どもたちがある程度の年齢で、キャリアもあって、役が抱えている感情的な葛藤みたいなものが、その場その場で僕が説明して表現できるものではないなと思ったものですから、事前に台本を読んでもらって、勉強会もして、本読みもして、リハーサルを重ねて、そういう時間を積み重ねて、自分の人格の外側に湊と依里という人間を作っていきましょう、という話をして取り組んでいます。

本当に素晴らしい表現をしてくれたなと思っています。

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男性の観客:本作が、カンヌでクィア・パルムを獲ったのと同時期に、日本でも同性婚が認められたと聞いたのですが、それについての考えを聞きたいです。

是枝:正確には認められてないんです。地方自治体によってパートナー制度みたいな形で特例として認めているケースは出てきているのだけれども、まだ国がそれを許容するところまでは行っていない。

非常に遅れているんですね。日本の社会における性的な多様性というのを、国も社会もまだまだ認めていないという状況が続いているんです。この国(カナダ)とは(違い)、20年、30年、時間が止まっている状況だと思います。

<是枝監督の最後のあいさつ>

ありがとうございます。遅くまでお付き合いいただいて本当にありがとうございました。映画をつくるたびにこの映画祭に呼んでいただいて、本当に感謝しております。

こんな遅くまでたくさんの方に残っていただいて嬉しいです。次の作品がいつになるか分かりませんけれども、また呼んでいただいて、皆さんの元に届けられることを願っております。今日は本当にありがとうございました。

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<映画「怪物」作品概要>

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6月2日公開初日舞台あいさつより 左から)中村獅童、角田晃広、安藤サクラ、黒川想矢、柊木陽太、永山瑛太、坂元裕二、是枝裕和監督

監督:是枝裕和

脚本:坂元裕二

音楽:坂本龍一

出演者:安藤サクラ 永山瑛太 黒川想矢 柊木陽太 / 高畑充希 角田晃広、中村獅童、田中裕子

ストーリー
大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子供たち。それは、よくある子供同士のケンカに見えた。しかし、彼らの食い違う主張は次第に社会やメディアを巻き込み、大事になっていく。そしてある嵐の朝、子供たちは忽然と姿を消した――。

映画「怪物」は、公開中。
©︎2023「怪物」製作委員会
配給:東宝 ギャガ

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