3月3日(水)、映画「騙し絵の牙」の騙し合いバトル開幕式が行われ、大泉洋、松岡茉優、宮沢氷魚、池田エライザ、木村佳乃、斎藤工、國村隼、佐藤浩市、吉田大八監督が出席した。
本作は、ミステリー小説「罪の声」の著者・塩田武士が、俳優・大泉洋を主人公にあて書きした同名小説が原作。崖っぷち出版社を舞台に巻き起こる騙し合いバトルが描かれる。
そうそうたるキャストの中で主演を務めた大泉は、「本当に主役(級)の人たちばっかりだから、(自分が)主演だということは考えていなかったですね」と、作品に臨んだ心境を回顧。また、「役柄的に、皆さんと絡めるので、毎日(撮影が)楽しかった」と、笑顔で語った。
イベントでは、劇中の舞台が崖っぷち出版社ということにちなみ、「崖っぷちを乗り越えたエピソード」を語る場面も。そのトーク部分をほぼ全文でお届けする。
──まずは大泉さんのエピソードをお聞かせください。
大泉:「騙し絵の牙」の撮影は常に崖っぷちでしたね。皆さん、監督の(演出を)「ち密な設計図」とおっしゃっていますが、要は、全然OKが出ないんですよ。だいたい1発でOKが出ないんです。最低でも3回ですかね。
松岡:ありますね。
(キャストがうなずく)
大泉:3回は少ないほうですね。5回、全然10回くらいいくんですよ。それが長ゼリフ(のシーン)なんかでやられると、どんどん焦ってくるんですよ。1回、2回、3回と言えていたセリフが、なぜか全然言えなくなってくるんです。そこにまた、浩市さんなんかという妖怪レベルの人がいると、どんどんパニくるんです。だから常に崖っぷちでしたね。
すごいんですよ。5行くらいの長ゼリフで、途中から好きにバーッと言っていたら、「ここでブレスしてたけど、こっちまで一気に言っちゃって」とか言われてね。「そんなとこまで言います?」みたいな。
──それが、ち密な設計図ということですね。
大泉:そうですね。でも、「細かい」と言うと怒りますからね。「ち密だと言ってくれ」と。浩市さんとのシーンでも、結構長回しするから、「OK」って言われた瞬間に、「うぉぉぉお」みたいな。(ホッとして)「ふぅう」みたいな感じがありましたね。
本当にこれだけの俳優さんたちを集めても、あれだけ「もう1回」っていうのって、どんな神経してるんだろうって思いましたよ…。「OK」が出たときは、みんなで「やった!」って、どんどん団結力が強まっていました。
松岡:大泉さんは、「ちょっと今のは大泉さんっぽいからNG」っていうこともよくありましたので、そういうときはどうしたらいいかわかりませんでした。
大泉:私にあて書きしてるんですよ、この(原作)小説。私をあて書きした小説で、私が演じた芝居を「今のはちょっと大泉さんっぽいからもう1回」って言われて。何がいけないんだって。監督は絶対に許さなかったですから。「大泉さんじゃない、(役の)速水だ」と。監督がイメージする速水に合わないと、OKは出なかったです。
だから、ある意味、私が見た映画の中で、一番私っぽくなかったかな。この間、劉備玄徳を演じましたが、丸ごと大泉洋でしたからね(笑)。あれだけの偉人を演じても私だったから、結局は監督に感謝しましたね。うれしい。
──松岡さんの崖っぷちを乗り越えたエピソードは?
松岡:高校2年生のときに、「このまま芽が出なかったら、就職なのか、進学なのか。食べていけなかったらどうしよう」っていうときに、(吉田)監督から「霧島、部活やめるってよ」で、大事な役をいただいて。そこからお仕事に恵まれるようになって、まさに崖っぷちから救い上げていただいたのが、8年前になります。本当にありがとうございました。
大泉:君、ずいぶん監督におべっか使うな(笑)。俺、二度と仕事来ねーぞ!さっき、あれだけ言って。
松岡:何度もテイク重ねるとか、何がいけないのか全然わからなくて…。
大泉:ははははは(笑)。
松岡:監督ですから。
大泉:怖いな、お前!そうやってこの芸能界をここまで上り詰めたのね(笑)。監督!僕、全部冗談ですからね?大好き!監督、本当…。
松岡:テイク数とか、全然…。
大泉:気にならない!逆に短いと物足りなかったくらいで。なぁ、みんな!
(周囲を見渡す)
宮沢・池田:はい!
大泉:浩市さんもね!
佐藤:たしかにね。2回でOKになると、不安になっちゃう(笑)。
(会場爆笑)
佐藤:全然見てくれてないんじゃないかって。
大泉:すごく大好きです。
──宮沢さんのエピソードはいかがですか?
宮沢:この作品をやり遂げたことが一つの、僕の中では崖っぷちを乗り越えたというか。これだけのそうそうたるキャストの皆さんがそろって、こんな大作に参加させてもらって、僕とか、茉優ちゃんとか、エライザとか(年齢が)下のほうで、震えていたので。本当に先輩方に助けてもらって、僕はこの作品ができたと思っているので、皆さんのおかげだと思っています。
松岡:震えていたんですか?
宮沢:僕は震えていました。
大泉:震えてねーじゃん。のびのびやってたでしょうよ。
宮沢:そうでした?
大泉:なんか、彼が来たとき、あまりにもかっこいいから会社中が「わぁぁぁあ」って色めき立つっていうシーンがあって。(いぶかしげに)そんなになりますかねって。ま、またこれ、監督批判になりますけど(笑)。
宮沢:恥ずかしかったです…(照れ)。
大泉:ただ、まぁかっこよかったですよ、氷魚くんね。憎たらしいなと思ってね。
宮沢:ありがとうございます。
──続いて、池田さんお願いします。
池田:本当に、大泉さんがおっしゃる通り、大泉さんすごくセリフが長かったじゃないですか。私、ちょこちょこ間に入ってくる…ひと言、ふた言とかだったので…テイクが重なると、大泉さんって「俺のバカタレ!」ってなるじゃないですか(笑)。
大泉:はははは(笑)。
池田:「なんで、こんなことも言えないんだ!(バンと当たる)」って。あれ、めちゃめちゃ怖かったんですよ。もうしゃべらんとこうと思って(笑)。私、絶対次のテイクで噛んだら終わるなって…。
大泉:ははははは(笑)。俺がね、うまくいったときに(池田が)噛んだりしたら大変だからね。
池田:はい。だから、しゃべらないっていうことで、乗り越えました。
大泉:ご迷惑をたくさん…。
松岡:すごい圧力をかけてたんですね。
大泉:圧力をかけてたわけじゃないですよ。崖っぷちだったんです。私がね(笑)。
松岡:結果的に池田さんの崖っぷちも作ってしまったっていう。
大泉:そうですね。…なんだよ、今日!いいこと1個もねー!ごめんね、エライザちゃんね。
池田:いえ。
──斎藤さんお願いします。
斎藤:僕以前、長編の映像を作らせてもらって。松岡さんも出ていただいたんですけれど。
松岡:ありがとうございました。
斎藤:その節はありがとうございました。撮影の10日くらい前に、主要キャストの方が1人、スケジュールがハマらなくなってしまって(笑)。衣装合わせもしていたんですけど。どうしようという困難がありまして。スタッフの方たちが、「現場にいる、俳優っぽい人…すなわちお前が出ればいいんじゃないか」っていうことになって。
松岡:え~そうだったんですか?
斎藤:はい。僕は自分のセリフをごっそり削って、すごくほどよい出方をしました。
松岡:主人公のお兄ちゃん役でしたよね。
斎藤:そうです。結構大事な役だったんですけど。
松岡:ご自身で書いて、ご自身で出られたいのかなと思ってました。
斎藤:違う、違う。そういうタイプじゃない(笑)。そう思われたくないタイプです。でも、ギリギリセーフというか、なんとかなったという経験がありました。
──吉田監督、1週間前にキャストが変わりますというのは、崖っぷちに立たされるものなんですか?
吉田監督:いや、想像つかないですね。僕も以前、僕に似た体型の人が朝、到着しないかもっていうときがあって、セリフを覚えましたよ。
(キャスト爆笑)
吉田監督:少なくとも衣装が着れるから。アップはあとは撮らせてもらえばいいかな…っていうことはありました。
──木村さんのエピソードはいかがですか?
木村:そんなに崖っぷちに立たされることがないんですけど。たぶん、忘れちゃってるだけだと思うんですけど。忘れっぽいので。
ただ先ほど、監督のことが好きだ、タイプだと申し上げたんですが、いろいろおすすめの映画とか小説をたくさん聞きだして。全部買って。映画は全部見たんですけど、小説が…監督が勧めてくださる小説が難しすぎて、途中で全部止まっちゃったっていう…これ、乗り越えてない話ですよね。監督すみません。今度はもう少し簡単なの教えてください!
──続いて、國村さんにうかがいたいと思います。
國村:崖っぷちって、あまり思うことがないんですよ。逆に言うと、ずっと崖っぷちなのかもしれない(笑)。なんでしょうね…。崖っぷちってあまりイメージできなくて。
大泉:ピンチに追い込まれたっていうこと、ないんですか?
國村:一生、ずっとピンチみたいなもんやから。ね。
松岡:(現場で)足の爪はがれた…。
國村:あれ、崖っぷちか?あれ、ただのけがや。
松岡:けがだけど、私はヒヤヒヤしましたよ。
國村:そうか…爪はがれました!
大泉:ははははははは(笑)。あんまり聞きたい話じゃないな。
國村:あ!私、初めてくらい…映画で歌うんですけど。歌って言っていいんかな?
木村:もちろんいいですよ。愛の歌です。
國村:あそこはもう本当に、OKがでるんだろうかって…。そういう意味では崖っぷちでした(笑)。
大泉:私、シーンには出てなかったけど、見に行きました。
國村:来てたね、そういえば。
大泉:國村さんのシャンソンを見たいと思って。素晴らしかった!いや、もう…申し訳ないけど、見て爆笑しました(笑)。
國村:おい(笑)。でも、それでもOKをいただいて、そういう意味では乗り越えましたね。
──佐藤さんはいかがでしょうか?
佐藤:いや、本当に…昭和の役者ですからね。何が崖っぷちって…崖っぷちの話をしたらオンエアできないんじゃないかっていう、そんなのいっぱいありますよね(國村を見る)。結構、大きな貨物船の甲板から、海に飛び込んでくれとか、自走した車で霞ケ浦に突っ込んでくれとか。
大泉:はははは(笑)。
松岡:え…。
佐藤:全部、そんなの、やってきましたから。我々はね。
撮影中の“崖っぷち”エピソード、印象的だったことについて語った動画はこちら!
映画「騙し絵の牙」は、3月26日(金)全国公開。
©2021「騙し絵の牙」製作委員会
配給:松竹
最新情報は、映画「騙し絵の牙」公式サイトまで。