「もしも売れない漫画家が殺人犯の顔を見てしまったら?しかも、その顔を“キャラクター”化して漫画を描いて売れてしまったら」。そんなアイデアを基軸に漫画家と殺人鬼の交錯する運命が描かれる映画「キャラクター」。
本作で、山城(菅田将暉)が描く漫画の殺人現場をリアルに再現するなど、常軌を逸した殺人鬼・両角を演じているのが、SEKAI NO OWARIのFukaseだ。
初めての映画出演でありながら、菅田や小栗旬、高畑充希、中村獅童と堂々対峙し、その存在感を発揮している。しかし、実は「ギリギリまで出演は迷っていた」という。その理由は…?
フジテレビュー!!は、Fukaseのインタビューを前後編でお届け。前編の今回は、映画の出演を決めたときの心境や役作りについて聞いた。
<Fukase インタビュー>
──まずは、本作に出演することになった経緯をお聞かせください。
ざっくりとしたキャストや概要が書かれた紙資料をマネージャーから渡されたのが最初でした。それがレコーディング中だったので、「タイミング悪いな…」と思いながら(笑)、それでもその日は「殺人鬼役かー!」という感じで、すごく気持ち的に楽しかったんですよね。
でも、次の日の朝起きたら、「無理じゃない?」と冷静に思って。だって、相手が菅田将暉ですよ(笑)。それに僕、映画というものが好きだから、芝居もしたことがない自分が出演することで、その作品が完成度の低いものになっちゃうことがどうしても許せないなと思って。お断りをしようと思っていたんです。
お断りをするにも、プロデューサーさんに直接お話したいと言って、お時間をもらったのですが…プロデューサーさんは“猿もおだてりゃ木に登る”という考えだったのでしょう。「できる、できるよ!」と、閉じていた心のドアをねじ開けられて(笑)。その時点で、撮影まで1年半くらいあると言われたので、それなら一旦、演技の先生のお話を聞きたいとお願いして、レッスンに通い、役者さんが1からやるようなレッスンを始めました。
──最終的にこの作品の何に魅かれて出演を決めたのでしょうか?
僕っていうよりは、うち(SEKAI NO OWARI)のメンバーから「お芝居をさせていただくっていうことは、きっとライブのステージ上でのパフォーマンスに生かされるだろうから、絶対やったほうがいい」と言われたことが大きかったです。
それで「よし!」と…正直思ったわけじゃないですし(笑)、撮影の直前まで出演するかは迷っていました。
レッスンは続いているけど、新しい台本が来なくて役を作ることができないという日々が続いて、すごく悩んだことがありました。それで、マネージャーに電話して、「これ、本当に僕で大丈夫なのかな?」と話したら…マネージャーは「いや、今、断ったら事故ります!無理です!」って。もう完全に罠にはめられて(笑)、気がついたら両角になるしかなかった感じです。
そのやりとりが、撮影が始まる1、2ヵ月前でしたが、もうそこからは腹をくくりました。もうこれだけ監督とも、プロデューサーとも、マネージャーとも話したし、「出る」って決めたのはあなたたちだ、と。それは冗談ですけど(笑)。
ちゃんとワークショップにも通って、そこで出された宿題もこなしてきたし、真摯に向き合えたと自信を持って言えるぐらいの準備はできたので、撮影までに集中して両角の役作りをしました。
──具体的には、どんな役作りをされましたか?
この作品はオリジナルストーリーなので、両角のことを完全に把握してる人はいない状態でした。僕を含めて、監督やスタッフそれぞれに両角像があったので、みんなで一緒に作り上げたという感じです。縛りがないから、どんな両角にもできる…立ち振る舞いや仕草は台本に書いてあったわけではないですし、もう非常に困りました(笑)。
そこからの役作りは…僕が役者をやるということを神木隆之介が背中を押してくれて、話をしたときに、すごくいろんなことを考えてくれていたんです。彼との話で印象的だったのは、「Fukaseくんは優しい殺人鬼が似合うよ」という言葉。最初は、「優しい殺人鬼ってなんだよ!」「優しいやつ、殺人しないだろう」と思いましたが、でも、なんとなく言いたいことは分かるなと思いました。
悩んだ挙句、その時点で手元にあった台本のセリフを優しい声で言って、録音したものを聞いて過ごす日々が続き、最終的にはその声のイメージから両角を作り上げた感じです。
──劇中、首の動きなど不気味さが際立つ仕草や、たまに見せる少年のような瞳などが印象的ですが、その細かい部分はどう作っていったのですか?
表情や挙動は自分で意識したものでも、監督から「こうしてほしい」と言われたことでもなくて、菅田くんと初めて対峙するシーンの撮影で自然にやっていて。監督から「今の何!?よかったよ!」と言われるまで自分でも気づいていなかったくらいです。
あれは、自分の発している言葉や声、菅田くんの存在に引っ張られて出てきた挙動とか表情なのかなと思っています。
──「自分でも気づかないうちに芝居をしていた」というのは、お芝居の才能が開花しているのでは!?
(頭を抱えながら)そんなうれしいこと言わないでくださいよ!たくさん取材をやらせてもらって、皆さん本当にすごく良く言ってくださって、うれしいんですけど…ダメです。僕は映画が公開されたら、レビューサイトでチェックします!すごく甘い、甘い、星5の評価があるといいな(笑)。
撮影:河井彩美
映画「キャラクター」は、6月11日(金)よりロードショー。
©2021 映画「キャラクター」製作委員会
配給:東宝
最新情報は、映画「キャラクター」公式サイトまで。