2019年10月期に、フジテレビ系「オトナの土ドラ」枠で放送され、高岡早紀演じる主人公・雨宮リカの常軌を逸した言動が、時に「怖すぎて笑える」などと好評を博した連続ドラマ『リカ』。

そのエピソード0にあたる続編『リカ~リバース~』(2021年3月27日より全3話放送)に続き、映画「リカ~自称28歳の純愛モンスター~」が6月18日に全国公開される。

<「リカ」シリーズに関する記事はこちら>

主人公・リカを、ドラマに続き高岡が演じる。幼い頃から愛に恵まれなかったリカは、理想の結婚や家庭像に少女のような憧れを持つ“自称28歳”の女性。理想の男性に出会ったとき、彼女のピュアな愛情は炸裂し、愛する人を手に入れるためなら手段を選ばない“最恐”の“純愛モンスター”へと変貌する。

今回のリカの新たな“運命の相手”は、市原隼人演じる警視庁捜査一課の奥山次郎。奥山は、リカをおびき寄せるため、マッチングアプリでコンタクトをとるが、その怪しげな魅力に次第に惹かれてしまう。

奥山の婚約者で、同じくリカを追う警察官・青木孝子を内田理央が、青木のよき相談相手でもある先輩刑事・梅本尚美を佐々木希が演じる。

よりパワーアップしたリカを渾身の演技で表現する高岡に、映画の見どころや作品への思い、際立つ美しさの秘訣から幸せの定義までを聞いた。

<高岡早紀 インタビュー>

――『リカ』が映画化されると聞いたときのお気持ちはいかがでしたか?

本当にびっくりしました。リカみたいに常軌を逸した人物が、まさか映画化されるほど、みなさんに支持していただいているとは思わなかったので。

『リカ~リバース~』という続編がつくられたことに関しては、原作小説はシリーズ化されて6冊出ていますし、エピソードもふんだんにあるので、「(あるかもしれないな、)怪しいなぁ」と思っていましたが、映画化は予想していませんでした。

――見る人を震え上がらせる役どころでは、過去にも映画「忠臣蔵外伝 四谷怪談」(1994年)でお岩役を、映画「モンスター」(2013年)で顔も年齢も変えて初恋の相手を想う主人公などを演じていらっしゃいますね。

そういう役に呼ばれているのか、私が呼んでいるのかわからないけど、私はこういう役をどれだけやれば気がすむのかしら!?と思ったりしました(笑)。でもそれが毎回、新しい自分を表現するひとつのチャンスにもなっているのかなと思います。

――今回、リカの役作りでこだわったことは?

私は髪型はいつも、台本を読んで「こんな雰囲気にしようかな」と思ったものを自分でつくって提案するんです。映画のリカの場合は、見るからに“やばいヤツ”にはしたくないし、美容院でいろいろ悩んじゃって。

ひらめいたのが、「カツラみたいなやつがいいな」というアイデアだったんです。カツラって違和感があって、ちょっとヘンでしょ?それで、カッコいいのかヘンなのかよくわからない微妙なラインにしてもらって。

さらに、今回はアジトに潜んでいる設定なので、お風呂に入ってないかもしれないなと思って、軽~く艶っぽくしました。言われないと気づかないような細工ですけど、そんな細かい要素を足して遊んでいるんです。

――リカの怖さには、ただ怖いだけでなく、どこかクスッと笑えるところがあります。ご自身ではどうとらえていますか?

最初にドラマの台本を読んだとき、リカはもっと嫌われる人物になると思っていました。でも撮影に入ったら、だんだん「そうじゃないんだな」と思い始めたんです。もちろん、テイストは怖い感じなんだけど、私が「雨宮リカ、28歳です」と言っても、スタッフやキャストのみなさんのリアクションが冷ややかじゃなく、「ん!?今なんて言ったかな?空耳かな?」というとぼけたノリなので(笑)。

そんな現場の雰囲気も含め、今に至る要素としてのちょっとしたコメディ感は最初からあったように思います。映画はその集大成というか。

「あれほどまでに自分を信じて表現できるリカを、ある意味うらやましいと思う」

――ドラマの放送時、SNSでは、残忍なリカなのに、なぜか応援したくなってしまう人も多かったのですが、それはなぜだと思いますか?

リカは本来、すごくサイコで何人も殺したりするんですけど、演じている私もそれを忘れてしまうほど、リカなりの正義やピュアさが勝ってしまうんです。自分が信じているものを疑わず、意外と正論をはいたりする部分もあるし。よく聞くとちょっとおかしいんだけど、そこまで真剣に誠実に言われると、人を殺したことすらも正義に見えてしまう瞬間もあるのかもしれない。

リカはまっすぐに愛を信じる気持ちから、すべてを自分のいいように解釈しているけれど、自分の手に入れたいもの、リカの場合は「愛」ですが、そこまではっきりしているのも彼女の強さですよね。愛を信じて表現できるのがリカのピュアさだと思うんです。

普通はみんな、そこまで自分自身の気持ちを信じられなかったりしますよね。だからこそ、あれほどまでに自分を信じて表現できるリカを、ある意味うらやましいと思う気持ちがあるのかもしれないですね。

――高岡さん自身は、そんなリカに共感できる部分はありますか?

リカの身勝手さや残忍さは全然共感できないんですけれども、自分にも昔はあって、今はもう持ち合わせていない、あまりにもピュアでまっすぐな気持ちは、ホントに清々しいくらい神々しいなって思います。

――では、ご自身がリカに似ているところはありますか?

いったんのめり込んだら、寝食を忘れて集中してしまうところは似ていると思う。リカも、ドラマではハーバリウムを、映画では理想の家とお人形を3Dプリンターで一生懸命つくっているので。

映画でリカがつくる家の壁は、よく見ると、昔、彼女が(少女時代に)住んでいた家の壁紙とほぼ同じなんです。大好きな人とこんな家に住んで、子供の声が聞こえ、庭には犬がいて…そんな幸せな未来を夢見ながら模型をつくって並べるあのシーンは悲しすぎますよね…思い出すと涙が出そうになる…。

あのシーンはじっくり見ていただきたいですし、女性の夢や願望をあんなふうに表現するリカのせつない心情は私も共感できます。

――映画では、リカがスパイダーマンのごとく壁を這い、空を飛ぶシーンもありますが、そこはどう受け止めて演じましたか?

正直言って、最初にその話を聞いたときは、受け入れるのに少し時間を要しました。ドラマで演じたときは、私、リカは生身の人間だと思っていたので。ときどき発揮する超高速走りも、愛する人を心底求めるがゆえの“火事場の馬鹿力“的能力だと思っていたんです。

でも映画の台本を読んでみると、すでに生身の人間であるとかないとかを飛び越えて、それは「リカなんです」という感じだったんです(笑)。普通に考えたらおかしいに決まってるけど、今回は完全なエンターテインメント作品だと理解して、私も「普通に考えてはいけないんだ、リカはリカなんだ」というふうに、そこに徹する気持ちで取り組みました。

――もっともワクワクしたシーンは?

結局、そのアクションシーンなんです。アクションシーンはあまり経験もないですし、不安だったんです。でも、現場で試しにワイヤーで吊り上げてもらったら、ワイヤー自体も体への負担が少ないものに進化していましたし、何より技術チームとの息がピッタリで、とてもうまくいったの。もう、「ピーターパンの気持ちがわかった!」と思いましたね(笑)。

本番もノリノリな気分で飛ばしてもらって、もっと飛びたかったな、と思いました。

「理想的なお母さんもこんなサイコな役もやらせていただけて、ホントに光栄です」

――映画「雪の華」(2019年)での理想的な母親役から、狂気のリカまで。高岡さんが演じる役の振り幅の広さは、意識的にチャレンジを重ねてきた結果でしょうか。

私はいつも、私にできることがあるのであればやらせていただきたい、というスタンスなんです。それがどんな役でも、「こんな私にこういう役をくださるんだ!」というふうに、自分自身を面白がれているというか。理想的なお母さんもあればこんなサイコな役もやらせていただけて、ホントに光栄です、としか言いようがありません。

リカに関しても、今までにないキャラクターを演じさせていただき、みなさんにこんなにも喜んでいただけて、そういうこともあるんだな、というか。自分が思ってもみなかった展開が待っていたりするのは、やっぱり人生は楽しいなぁって思える瞬間だったりしますね。

――リカは理想の家庭や幸せの定義を明確に思い描いていますが、高岡さんが思い浮かべる幸せの定義とは?

リカが夢見る、広い庭のある大きな家に住み、庭には花を植えて、犬を飼い、夫婦は仲良く、子供の声がして…というのも幸せの象徴だけれど、私の場合はもっとシンプルで、家族が幸せであることが私のいちばんの幸せですね。そのためなら、あんなこともこんなこともできるなと思うので。ろくに眠らず仕事をするのは体力的にはしんどくても、そんなにつらいと思わずにすみますね。

子供の笑顔が私にとっての幸せですし、その笑顔がどれだけでも増えればいいなと思います。それによって私も笑顔になれますし。

――映画でも圧倒的な美しさを放たれていますが、美容のためにしていることがあれば教えてください。

外食はあまりしません。撮影現場ではお弁当をいただくことが多いですけど、それ以外は基本、家で自分が食べたいものをつくって食べています。外食はどうしても、塩分・糖分含めいろんなものを摂り過ぎてしまうけど、自炊なら自分で調整できるので。それは健康維持につながりますし、なにより自分が食べたいものをつくって食べるのは、楽しいしおいしいんです。

それと、可能なときは早寝早起きをして睡眠をたっぷりとるとか、一日の終わりに、今日はどれだけ楽しいことがあったかな?というのを数えて楽しむとか、ですね。

あと、うちにダルメシアンの姉妹がいるので、二頭を連れて一日2時間ぐらい散歩をします。(取材日の)今日も、朝1時間散歩をしてきました。30kg+30kgで60kgなので、ぐっとリードを引っ張られるといい運動になるというか。犬のためと言いつつ、自分ために散歩していますね。

――最後に、改めて映画の見どころをお聞かせください。

この映画は、笑ってもらっても怖がってもらってもいい、完全なエンターテインメント作品です。でもそのベースには、連ドラの頃から私たちがつくってきた、リカの孤独や悲しさがさらに色濃く息づいています。今回もリカの悲しみがいっぱい表現されているので、切ない気持ちになったり、リカに幸せになってもらいたいと思ってしまう瞬間があったりするのではないかと思います。

コロナ禍の今、エンターテインメントというのは絶対に絶やしてはいけないものだと思うし、この作品もその中のひとつとして楽しんでいただければ。「リカ」を見て映画館を出た後、「面白かったね!」と思ってもらえたらうれしいです。

取材・文/浜野雪江 撮影/河井彩美

<高岡早紀に「リカ」にまつわる究極の質問!>